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アティカスと手を繋いで
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「ここがナシュカーダ市場だ」
目の前に広がるカラフルな店の軒並みと、賑やかな人々に心が踊る。
それと同時に、行き交う人の多さに戸惑ってしまう。
自然とアティカスの手を握った。
こんな所で迷子になってしまえば、もう戻れないかも…。
あっ、王子の魔石があるから大丈夫か。
オレの居場所を王子に教えてくれるらしいから…でもやっぱ怖い!
「どうした?怖いか?」
「ちょっと…。アティカス、このまま手、握ってていい?」
「あっ…ああ…いいぞ」
急にキョロキョロと辺りを見回すアティカス。
アティカスも久しぶりの買い物でテンション上がってるのかな?
今日は王子も街へ行く筈だったんだけど、急な政務で来れなくなった。
一緒に行けなくてごめんね、と少しだけ眉が下がっていたけど、そんな事よりも王子は王子でお疲れじゃないのかって心配になった。
だって結界魔法をかけながら、他の仕事もこなすなんて凄く大変だ。
「ニナ、何か欲しいものがあったら遠慮なく言うんだぞ。王子からちゃんと金を預かって来ているからな」
「お金?お金ならあるよ、大丈夫!」
むむんと唸ってマジックボックスから袋を取り出す。
「ほらっ」
「…そうか、ニナは薬草を売ってるんだもんな。…こんなに貯めて偉いぞ、ちゃんと貯金してるんだな」
「貯金ってゆうか、パンを買ったり薬作りに必要な素材をたまに買う位しか、使い道がないんだ」
今じゃ少しだけラインナップが増えつつある薬も、薬草だけじゃ作れない事もある。
特に蜂蜜なんかは蜂がこわすぎるから村で買ったりもするからな。
「そうか欲がないんだなニナは」
「そんな事ないよ…だって、だって見てアティカス!あれ!あれ食べたい!!あっ!あれも!」
そう、これは立派な食の欲だ!!!
沢山の出店が、競うように美味しそうな匂いをぷんぷんと漂わせるている。
もうトキメキが止まらない。アティカスと一緒に美味しい物を食べるんだ!
アティカスの手を引き、早歩きで出店へと向かう。
美味しそうな物をいくつか買い、噴水のある公園で食べる事になった。
じゅるり。美味しそうだ。
昔、森で迷った冒険者を森の入り口まで案内した事があった。
そのお礼にと、ラザニアを作って会いに来てくれたんだけど、久しぶりの人間の料理の味の濃さに驚いて、舌がしびれてしまった。
でも徐々に慣れてくると調味料万歳となる。
塩分の中毒性ってこわいな…。
まあシンプルな食材その物の味も、やっぱり好きだ。
そしてその冒険者は帰り際、悲しそうな顔をして言ったんだよな。
「実はまた迷っちゃった」って。だからまた森の入り口まで送っていったんだ。
はっ!思い出にふけっている場合ではない!!目の前の甘辛肉の串焼きを頬張らねばっ!!!
「いっただっきまあ~す!」
がぶり
「うっ、うんまあっ!」
目をキラキラさせて興奮している俺にアティカスは笑う。
「はははっ!良かったなあ!沢山食べるといい」
アティカスもお腹空いただろ?
「ほらっ!これめっちゃくちゃ美味しいよ!あーん!」
「いや…ニナ…」
「はい、あーん!」
アティカスこそ筋肉の成長の為に、肉を食べなきゃな!と更に口元へと持っていく。
「…あーん…んむ…スパイスが効いて旨いな」
「ねっ」
と、笑い合う。とても素敵な時間だ。
はっとしたアティカスが、また周りをキョロキョロしだし落ち着かない。アティカスはよっぽどここが好きなんだな。分かるぞ!
「ふふっ」
子供みたいで可愛いなあと、微笑ましくなったのだった。
目の前に広がるカラフルな店の軒並みと、賑やかな人々に心が踊る。
それと同時に、行き交う人の多さに戸惑ってしまう。
自然とアティカスの手を握った。
こんな所で迷子になってしまえば、もう戻れないかも…。
あっ、王子の魔石があるから大丈夫か。
オレの居場所を王子に教えてくれるらしいから…でもやっぱ怖い!
「どうした?怖いか?」
「ちょっと…。アティカス、このまま手、握ってていい?」
「あっ…ああ…いいぞ」
急にキョロキョロと辺りを見回すアティカス。
アティカスも久しぶりの買い物でテンション上がってるのかな?
今日は王子も街へ行く筈だったんだけど、急な政務で来れなくなった。
一緒に行けなくてごめんね、と少しだけ眉が下がっていたけど、そんな事よりも王子は王子でお疲れじゃないのかって心配になった。
だって結界魔法をかけながら、他の仕事もこなすなんて凄く大変だ。
「ニナ、何か欲しいものがあったら遠慮なく言うんだぞ。王子からちゃんと金を預かって来ているからな」
「お金?お金ならあるよ、大丈夫!」
むむんと唸ってマジックボックスから袋を取り出す。
「ほらっ」
「…そうか、ニナは薬草を売ってるんだもんな。…こんなに貯めて偉いぞ、ちゃんと貯金してるんだな」
「貯金ってゆうか、パンを買ったり薬作りに必要な素材をたまに買う位しか、使い道がないんだ」
今じゃ少しだけラインナップが増えつつある薬も、薬草だけじゃ作れない事もある。
特に蜂蜜なんかは蜂がこわすぎるから村で買ったりもするからな。
「そうか欲がないんだなニナは」
「そんな事ないよ…だって、だって見てアティカス!あれ!あれ食べたい!!あっ!あれも!」
そう、これは立派な食の欲だ!!!
沢山の出店が、競うように美味しそうな匂いをぷんぷんと漂わせるている。
もうトキメキが止まらない。アティカスと一緒に美味しい物を食べるんだ!
アティカスの手を引き、早歩きで出店へと向かう。
美味しそうな物をいくつか買い、噴水のある公園で食べる事になった。
じゅるり。美味しそうだ。
昔、森で迷った冒険者を森の入り口まで案内した事があった。
そのお礼にと、ラザニアを作って会いに来てくれたんだけど、久しぶりの人間の料理の味の濃さに驚いて、舌がしびれてしまった。
でも徐々に慣れてくると調味料万歳となる。
塩分の中毒性ってこわいな…。
まあシンプルな食材その物の味も、やっぱり好きだ。
そしてその冒険者は帰り際、悲しそうな顔をして言ったんだよな。
「実はまた迷っちゃった」って。だからまた森の入り口まで送っていったんだ。
はっ!思い出にふけっている場合ではない!!目の前の甘辛肉の串焼きを頬張らねばっ!!!
「いっただっきまあ~す!」
がぶり
「うっ、うんまあっ!」
目をキラキラさせて興奮している俺にアティカスは笑う。
「はははっ!良かったなあ!沢山食べるといい」
アティカスもお腹空いただろ?
「ほらっ!これめっちゃくちゃ美味しいよ!あーん!」
「いや…ニナ…」
「はい、あーん!」
アティカスこそ筋肉の成長の為に、肉を食べなきゃな!と更に口元へと持っていく。
「…あーん…んむ…スパイスが効いて旨いな」
「ねっ」
と、笑い合う。とても素敵な時間だ。
はっとしたアティカスが、また周りをキョロキョロしだし落ち着かない。アティカスはよっぽどここが好きなんだな。分かるぞ!
「ふふっ」
子供みたいで可愛いなあと、微笑ましくなったのだった。
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