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人化いきまーす
しおりを挟むぐぅうぅう~。
お腹、減った…。
あれから王子こと、ルイと寝転がっておしゃべりをしていた。
クスリと笑い、すぐに食事を用意しようと言ってルイが部屋を出た。
何だか催促したみたいで恥ずかしい。オレの腹の虫は空気を読まない。
あれ、でもお城でご飯って普通に食べてもいいのかな?
お皿に顔を突っ込んで食べるとかどうなの?
…。魔力も多少は回復したし、人化しておこうかな。
別にもう隠す必要もないし、話す時も楽だ。
目を閉じて念じる。(人化!)
ポンッ
「…ふぅ。やっぱりちょっとふらつくぅー」
ちらりと鏡に映る自分を見た。
真っ白な髪に、真っ白な肌。くりっとした赤い目にツンとした小さな鼻と赤い唇。
女の子みたいだ。
せめて美青年になりたかった…。
今日の服のイメージは、良いとこのお坊ちゃんだ。
白いシャツにベージュのニットベスト。光沢のある黒色のスラックスだ。
まあ良いとこの学校の制服ってとこだな…。
…。ルイ、戻ってこないな。
その時だった。
コンコンッ
「殿下、おられますでしょうか」
アティカス!
オレはドアの前までダッシュしてドアを開けようとした。
あ…。でも勝手な事しちゃダメだよな。ここはルイの部屋だし…。
「あっあの…!!」
「…え?…失礼ですがあなたは?」
「えと…アティカスですか?」
「…はい、アティカスですが、あなたは?殿下はそちらに?」
「あの、オレ…ホワイトタヌキです!ルイ…じゃないや王子は今ここにはいません!」
「…ホワイトタヌキ…?なぜ…?話せるようになったのか?それとも…まさか人化できるのか?」
「う…うん。ねえ、ここ開けていい?」
「待て、私から開ける」
カチャリとドアが開く。アティカスの青い目と、オレの赤い目がぱちりと合う。
「アティカス!!」
スッと部屋に入ってきたアティカスの首にぎゅうっとしがみついた。
アティカスはオレの背中を支えながらも戸惑った声をあげる。
「おっおい…お前本当にあのホワイトタヌキなのか?」
「そうだよ!アティカス!アティカスだあっ」
アティカスと普通に話せている事が嬉しくてテンションMAXのオレ。
ああ、誰かオレの甘えモードを止めてくれ。
「お前…ケガは大丈夫だったのか?心配したんだぞ」
「全然大丈夫!王子が治してくれたから」
ごめんね心配かけて、と首をクンクン匂う。習性なんです許して。
「何をしてる?」
「あっ王子!」
「でっ殿下!」
「おかえり、王子。ごめんね、ドアの外からアティカスの声がしたから、嬉しくて勝手に開けちゃった」
少し声の低い王子に謝る。勝手な事してごめんね。
「ニナ、こっちへおいで」
手を広げる王子。
オレはまた遊んでねとアティカスの頬にペロッとした。
しがみついていたアティカスの首から離れ、王子に抱きつく。
あっ人間の姿でペロはないよな。ごめん、アティカス。
「人化か」
「うん。これでちゃんと王子やアティカスと話せるね」
王子がオレの頬に手をそえる。じっと見られて恥ずかしい。
「へん…??」
「いや、凄く可愛くて驚いた」
本当??!嬉しい!ねえっアティカスは?アティカスはどう思う?オレ的にはもうちょっと大人の姿に憧れるんだよ…ね。あれ?アティカスの顔色が悪いというか、もはや青い。
「アティカス?顔色悪いけど、どうしたの?大丈夫?」
アティカスの方に行こうとするが王子が離してくれない。
「王子、アティカスどうしたの?」
「さあ?」
涼しげな笑いをアティカスに向ける王子。
アティカスは更に顔色を悪くする。
風邪かな?今度は風邪薬でも作ってみようかな?
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