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第二王子
しおりを挟む目の前にあったはずの小屋がなくなり、2人の人間がこちらを見ていた。1人はメイドであろうオレを見つけた女と、もう1人は今、小屋を真っ二つに割ったであろう男だ。
オレは驚きのあまり目をひんむき、だらしなくもピンク色の舌がペロッと出ていた。ついでに鼻水も垂れている助けてくれ。
あっかーん!!こいつ、あれだ!噂の第二王子だ!冷酷非道な冷たい第二王子に間違いない!
オレは収まらない舌と鼻水を出したまま、ガクガクと震えていた。
男がゆっくりと近づいてくる。背の高い、がっしりとした美丈夫だ。少し長めの金髪の髪を靡かせてやってくる。
「これは…ホワイトタヌキか」
「ホワイト…タヌキ?」
「ああ、珍しい魔獣だ」
「魔獣!!?気持ち悪い!早くどうにかしてくださいませ!アティカス様!」
「だがなぁ……。こいつ結構かわいいぞ?」
「どこがです?!こんな間抜けな顔をして!魔獣なんて…おぞましいっ」
何だかめちゃくちゃ嫌われてるな、少し悲しい。
あっ見極めの能力に変化があった。第二王子の方だ!…あれ?危険度が下がってきた。あれ?あれ?これはもしかしてイケるのでは??
オレは第二王子に向かって、か弱く泣いた。
「みゃ~ん…」
これでもかとうるうるとした目で見つめる。
「うっ…!」
第二王子が呻いた。よしっ!胸きゅん悶えトラップにひっかかった!
オレは自ら第二王子に近づいた。ふわりふわりとシッポを揺らし、円を描くようにくるくると第二王子の周りを歩いた。その時に、相手の目を見つめながらというのがポイントだ。
第二王子は少し顔を赤らめて、戸惑っている。
触りたいだんだろう?素直になれよ!オレのこと、もふりなよ!
第二王子がゆっくりと膝を曲げた。そして腕をこちらに伸ばしてくる。
よーし良い子だ。
もう、抑えきれない感情を宿した青い目が、オレを見つめる。
チェックメイト。
オレはフッと心の中で笑い、コロリと腹を見せつけて転がった。ほら第二王子、もふもふしてもいいんだゼ☆
とウィンクをした。
一瞬キマイラ先輩がよぎった。最近よく遊んでもらっているからかな。なんて。
ザンッ!
横になった俺の顔の前に、先程の剣が地面に突き刺さっていた。
へ?である。
「アティカス様がやらぬのなら私が殺ります!」
オレは転がったまま、またあの顔になった。
舌ペロ×鼻水だ。
失念していた。もう1つの見極めの能力が、危険値を大幅に越えていたことを。
メイドのオレに対する危険値は常に上昇中らしい!
「死ねぇ~!!!この豚がぁっ!!!!」
「おいっ!!やめろっ!!」
メイドが再び凄い形相で、両手で剣を持ち突き刺してくる!
第二王子がそれを止めようとするが間に合わない。
オレはぎゅっと目を瞑った。
ザンッと風が吹く。
「何、してる?」
あれ??何??痛く…ない?
おれはゆっくり目をあけた。まだ横になったままの体制でメイドを見上げた。
メイドは、オレを突き刺す寸前のままのポーズで固まっている。
何故ならメイドの首筋に、キラリと光る剣の刃が当てられているからだ。
な…に?
オレはその剣の持ち主を見た。
それは見たこともないような美しい男だった。透き通る白い肌に、菫色の瞳。細身だが均等のとれたスタイル。何とも色気を感じさせた。
メイドに剣を突き付けたまま、ゆるりとこちらを見下ろす。
ザザァッ…と強い風が吹いた。
色素の薄い金の髪がふわっと泳ぐ。髪の隙間から覗く瞳から目が離せない。
「殿下」
第二王子が片膝をつき頭を下げる。
…ってえっ??!はっ?!?
殿下って、殿下って!
もしかしてこっちが冷酷非道の第二王子ぃ??!!!
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