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しおりを挟む「おかえり、アデリナ」
「お父…様」
屋敷に戻るなり私を待ち構えていた父。
まさかもう知られてしまったの??
銀縁眼鏡をキラリと光らせて、眼光鋭く私を見下ろしている。
お父様を優しくてクールなイケメンと称すお母様の感性が、私には少し分からない。
ただただこわいだけだ。
「スタンリー公爵の屋敷に行っていたようだな」
「は…い」
引きこもりが久しぶりに外に出たんだもの。すぐに耳に入るわよね…。
「ワタシが引きずり出さねば行こうとしなかった場所へなぜ?」
「それは…」
「結婚の日取りが早まった事についてか?」
「…!お父様はこの件について、スタンリー様になんとお返ししたのです?」
「婚姻についてはあちらに一任している」
「お父様!可愛い娘がこんなにも早くお嫁に行っても良いのですか!!私は嫌です!この家にまだいたいっ!!」
そして楽にのんびり引きこもりたい!!
「…………ない」
「え?」
「…確かにお前は私にとって最愛の娘…だが甘やかし過ぎた…甘やかし過ぎて自由に引きこもりを許した故、正直今のお前を妻にと迎えてくれるのは、スタンリー公爵しかいないと言っているんだ!」
「なっ!!!」
何て事を…!
ふぅ…と頭を抱える素振りをするお父様。
そうですか…どうせ私はアナタを悩ませる目の上のたんこぶですよ!!
「…それでも…いくらなんでも言い過ぎですわ」
「淑女になる為の習い事も続かず、茶会にも社交界にも参加しない…それでもそれを許してきたのは何故だと思う?」
「…」
…えっと…、何でだろう??確かに普通ならありえないわよね。
「…どのようなアデリナでも大切にする、だが公爵家に来たら窮屈な思いもするかもしれない。だからそれまではアデリナがやりたいように自由にさせてやって欲しい…とそうスタンリー公爵に頼まれていたからだ」
「えっ…」
「お前が臆病になってしまったのは、スタンリー公爵の婚約者になった時からだったな」
「…」
…そう、私が人を怖いと思い出したのはその頃からだ。
スタンリー様の婚約者に決まってすぐ、仲の良かった貴族の令嬢達からはいじめられ、大人達からはどうやってその座を得たのかと嫌悪の眼差しで見られた。
怖くて辛くて…私は何も変わっていないのに、周囲の私を見る目がどんどん変わっていく。
弱い私は自分を隠す事で精一杯だった。
「それだってスタンリー公爵は責任を感じている。あの方はあの方なりにお前の事をちゃんと理解し、お前の知らない所でお前を守ってきた」
「お父様…」
「彼を心底嫌いでないのなら、ちゃんと向き合ってみなさい。誰かを知ろうとする事は大切な事だよ…アデリナ」
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