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「話がある」

「…はい、なんでございましょう?」



佇まいを正し、真っ直ぐとその美しく整った顔を見つめる。

わざわざこちらに出向いてくるなんて、嫌われたものね私も。

でも安心して?私だって公爵家当主の妻だなんて1ミリも望んでないから。


早く婚約破棄でも何でもいいから、私を自由にして欲しい。


「結婚式の事だけど」

「ええ」

悲しい顔のひとつでも、用意しておかないといけないしら?それともちょっとした非難でもした方が良いの?

「前倒ししたいと思っている」

「はぁ…仕方ありませんね…分かりました」


面倒だから、物分かりの良いそのままの私でいきましょ………ん?



「…スタンリー様、今、なんと?」

「結婚式を前倒ししたい」



…一旦落ち着きましょうか。


お気に入りの色彩豊かで細やかな絵柄のティーカップにクスリと微笑む。
(あなたは今日も愛らしいのね)

すっと持ち手をつまむように持ち、注がれた紅茶を優雅に一口飲む。


コクリ………コク…ゴク、ゴク、ゴクッ、


『カシャンッ!!!』

「…そんな置き方をすると割れて危険だ」

「なぜですっ!!!」

「なぜとは?」

「結婚式を前倒しとは?!」

「先程分かりましたと了承してくれたのでは?」

「それは…!!」

それは違うでしょう?!だっててっきり私はスタンリー様から婚約破棄されるのだと思っていたんだもん!!!!


「もう一度言う。結婚式は前倒しして一月後に行う。そしてそのまま君は公爵邸に入ってもらいたい」

「なっ」



私の名前はアデリナ。アデリナ・デイヴィス。



今日、婚約破棄されるはずだった侯爵家の娘。

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