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マリローズがストーカー??そんな訳ない。だって二人は…。



「それに、だいたい今も昔も兄上の心を占めるのは、唯一1人だけだと思うけどね」

「…」


「僕が物心ついた頃にはレオノール嬢、貴女はすでに王都を離れていたから貴女の事はよく知らない。けれど貴女からの手紙を宝物のように大切にし、貴女の帰りを一途に待ち望んでいた兄上の事はよく知っている」


私だって…推しからの大切な手紙だからと何度も何度も読み直して大切に保管した。
たわいのないやり取りだけど、ランデルらしい手紙の内容に胸が暖かくなったのを覚えている。


「以前、冗談で言った事があってね。もしも兄上がマリローズ嬢と結婚したいのなら、レオノール嬢は僕が貰い受けるよと。貴女は自分を犠牲にしてまで兄上を守った英雄だから興味があったしね」

英雄?そんな大層なモノじゃない。

ただあの日、私だけが知っていただけだ。ランデルの身に迫る危険に。


「でもそしたら「いくらお前でも言って良い事と悪い事があるよ」って殺気を放ちながら言うんだもん。1週間位僕に冷たくて…あれは怖かったなぁ。

あっ、シャルティ。もちろんシャルティと出逢う前の話しだからねっ」


フレント殿下のウインクを受け、露骨に嫌そうな顔をするシャル。

「やめてください、私に貴方の存在は重たすぎます」

「どうして?僕が嫌い?」

「正直、嫌いではないです…。この学園に来て、名ばかりの貴族の私に優しく親切にしてくださったのはフレント殿下だけですし…それはとても有難いとは思っています。

ですが我が家は派手な事が嫌いですし、のんびり穏やかに暮らしたいがモットーの一族ですので、王族の方との交際なんて考えられません。両親も驚くというよりドン引いてしまうと思います。
ですのでごめんなさい」


「え~…」と不満そうな顔でフレント殿下が嘆く。

でも私は知っている。フレント殿下はやはりランデルの弟。
爽やかでチャラい雰囲気を醸し出してはいるが、一度ロックオンしてしまえば、なかなかにしつこい男なのだと。

そう簡単には、あなたの事を諦めないと思う。シャル…可哀想に…相手が悪かったかもしれない。


「それより、あの、お姉さま、大丈夫ですか?顔色が…」

気遣しげに、シャルが私の肩に触れる。

「えっ…ええ、大丈夫よ、シャル」



私は最低だ。

何て自分勝手なのか…。

フレント殿下の言っていた事が本当なのかどうかは分からない。

けれど私は少しだけ嬉しかったし、ほんの少しだけ…喜んでしまった。

そうであってはいけないのにと、自分の事が更に嫌いになりそうで仕方なかった。






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