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「学年が違うと別棟になるんだ!急がなきゃ」

私は高速早歩きで、フレントを探した。
ランデルの弟だ。タイプは違えどイケメンには変わりなく、キラキラしているからすぐに見つかるだろう。

…って、マジでいた!!

ニコニコと、一人の女の子の横について渡り廊下を歩いているキラキラ王子!

そしてあれが噂の美少女転入生??!!

小柄で華奢なスタイルに、銀髪のふわふわした長い髪。小さな顔には子猫のようにまあるくきゅっと目尻の上がった愛らしい瞳。ツンとした小さな鼻先に、赤い唇。

正に美少女!!!

私は目をこする。ん?…ん???



「シャッ、シャル!!??」

私の声に二人がこちらを向く。


「あ、見つけた」

そう言って、すたすたと歩いて私にひしりと抱きついてきた美少女。ぐえっ。


「レオノールお姉さま…ようやく会えましたね。シャルはずーっとお姉さまを探していたのですよ」

「く、苦しい…どうしてあなたがここに…あっ…お久しぶりにございます。フレント殿下」

こんな格好で申し訳ないけど挨拶は大事だ。
なんとか、シャルをべりりと剥がしてフレントにお辞儀をする。


「あぁっ、うん久しぶりだね、レオノール孃。と言っても幼い頃の記憶も曖昧なのだけど。…えっと、レオノール嬢とシャルティって知り合いなの?」

そりゃそうだ。昔会っていたとしてもパーティーとかで挨拶する位の仲でしかないし、フレントが物心つく頃には私は王都にはいなかった。

それにゲームの中じゃ、マリローズを虐めるレオノールの事をめちゃくちゃ嫌悪していたしね。

「私の静養先で知り合った、大切な友人でごさいます」

そう、シャルは私の大切な妹のようでもあり親友だ。

南の領地では貴族らしい貴族もいなかった為、平民とか貴族とかあまり関係なくみんな暮らしていた。
私はそれがとても楽で、居心地の良いあの田舎町が大好きだった。

そしてシャルティ・ホプソンはその貴族らしくない貴族の一人娘だ。

南の屋敷に着いてすぐ、挨拶に来てくれたのがホプソン家だった。

一緒に連れられて来ていた2つ下のシャルは、ヒロインを越えてくる超絶美少女で(ごめんマリローズ)とても衝撃を覚えた。

けれどあまり表情が顔に出ないため、何を考えているのか分からない。
でもそれが何だかランデルを見ているようで、私はシャルをとても可愛く思った。

だがシャルはランデルと似ても似つかなかった。とにかく真顔でよく喋るし、よく遊ぶ。

フリフリのドレスを着ていながら沢山の子分(町の子供達)を持ち、私やその子分を引き連れて外遊びに励む。

海でドボンと飛び込み大会をしたり、川で魚を釣って食べたり、山では虫取りや木登りと、とにかく淑女らしくない遊びが大好きな子だった。

そして私もそんな自由なシャルに染まっていった。
あれ、もしかすると私ってシャルの子分だったのかな?

いや、そんな事より、

「もう一度聞くけど、どうしてあなたがここにいるの?」

「レオノールお姉さま、シャルはレオノールお姉さまのいない町など退屈でつまらなくて耐えれませんでした。なのでお姉さまを追って王都まで来てしまいました」

「来てしまいましたってシャル、おじさまとおばさまは?この事をちゃんと知っているのでしょうね?
それに、今はどこからこの学園に通っているのよ」


まさか家出なんてしてないよね?温厚で優しいホプソン夫婦が心配だよ!



「もちろん両親は説得して、無事王都に住む母方の祖父母の家から通う事になりました。

私は爵位のない貴族の出ですからこのような名門アカデミーになど入れないと思っておりましたが、レオノールお姉さまのお父様ことご領主様にご相談したら、私の事を推薦なさってくださったのですよ。この度は本当に助かりました、いずれご挨拶に向かいますね。とご領主様にお伝え下さい。

そして何より私は、わりと何でも出来る天才なので転入試験の結果はオールAを頂けました。よってこれは裏口入学とは異なりますよね」

な、長い。

「…今のでだいたい事情が飲み込めたわ。というか、父から何も聞いていないのだけど」

「サプッライズッ」

やけに発音良く、ドヤ顔で答えたシャルに気力が奪われる。

「…はーい、分かりましたぁ…」

まあ、とりあえずいいや…。私の可愛いシャルにもう一度会えたんだもん。

小さな頭をふわふわ撫でると、子猫のように気持ち良さげに目を瞑るシャル。



「ぷっ…何、二人とも…ふふっめちゃくちゃ可愛いな。それにシャルティ、レオノール孃の前だとそんなに楽しそうに話すんだね。
我が未来の姉上も、噂の人物とは別人のようだ」


あ、フレントの存在を少しだけ忘れていた。





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