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それから数日後、私とお父様は城へ呼ばれた。
ランデルとの婚約についての話しだ。

ランデルとレオノールの婚約が発表されるのはひと月後のランデルの誕生日。パーティーで盛大に発表される。


ランデルがこの婚約を拒否してくれる事が一番良いのだけど、そうはならない。

なぜならランデルもレオノールもまだ子供で、王族や貴族なんかの結婚は親同士が決めるのが当たり前たからだ。


だがしかし、私はちゃっかり根回ししていた。



数日前。



「ねえ、お父様。私に婚約のお話しなんか来てないわよね?」

「…え?なぜそんな事を聞くんだい?」

「まさか来てるの?」

白々しいにも程があるけど、やっぱりもう話は出てるんだ。お父様はぽりぽりと頭の後ろを掻く。


「いや…その、軽く話が出ているだけさ」

「お父様は私がお嫁に行っても良いの?その婚約のお相手は一体どなたなの?」

「どうしたんだい急に。そりゃあ私だっていつまでもレオノールにはこの家にいてもらいたいが、女の子はいつかお嫁に行かなきゃだろう?
…お相手もきっとレオノールが喜ぶと思っていたし…」

いや、喜べないから!更なる尻拭いの地獄の日々が待っているだけなんだよ!

「私、この公爵家を継ぎたいの。この家の当主になる!だから婚約はしません」

「何だって?本気で言っているのかレオノール」

「別に珍しい事じゃないわ」

「いや、珍しい事だろう?女性が当主なんて…」

「私、大好きなお父様のお力になりたいの。立派な公爵家の女当主となり、いつか婿を入れ、オブライト家の血を絶さない事を誓うわ」

「レオノール…いつからそんな事を考えていたのか?」

少しばかり、驚きと感動が入り交じった表情のお父様。

ふふん、悪い話じゃないはずよ。うちには跡取りがいないからね。

「ずっと考えていたわ。私はまだ幼いけれど、この思いは本物よ。沢山お勉強もして跡取りが務まるよう頑張るから。お願いお父様…私の願いを叶えて」

頼むから!!

私は真っ直ぐにお父様を見つめた。


「…婚約のお相手はランデル殿下だ。お前はランデル殿下を好いてみえたが」

「ランデル?そう…。もちろんランデルの事は好きよ?でも友人としてだわ」

ここ大事!!

「本当に?」

「ええ」

「…はあ~。そうかー」

「ごめんなさい。お父様」

しゅんとする私にお父様が優しさしく肩を抱いてくれる。

「いや、謝る事はないさ。嬉しくもあるよ。レオノールがこんなにも家の事を考えてくれていたとはね」

「お父様…陛下はお許しになるかしら?」

「陛下は無理強いする方ではないよ。レオノールの考えを、誠意を持ってお話しすれば理解してくださるさ」


「お父様…」


と言った感じだ。




さて、どうかるか…。






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