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星界の温床
西暦2085年
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【宇宙】
入学式を終えた学生は自由時間を与えられ、
フロアーで思い思いに固まっていた。
そんな中全身をフードで覆った
インド代表のアイラ・ラウは、
居心地の悪さを覚えていた。
学生たちは大体は同じ出身国の代表同士で、
かたまっているのだが、
インド代表は彼女一人だった。
そうでなくても、
まったく違った文化をもつ国の学生たち。
インドでは考えられない露出で屯している姿は、
アイラの目にはストリップさながらに映り、
彼女には、そういったお店に迷い混んだ様な
違和感が拭えなかった。
いやむしろ自分一人が、
全身を隠すような姿に、
まるで世界の異物になったような、
いたたまれなさと落ち着きなさを感じてもいた。
そんな私を見かねたのかコーディネーターの、
イーサンという女性の方が、
先ほどからフロアーを案内してくれていた。
イーサンいわく、
彼女は学生のコロニー内での生活を
サポートするのが仕事らしい。
『顔色がすぐれませんが大丈夫ですか。
アイラさん』
彼女の親切はありがたいが、
今は一人になりたい気分だった。
『親切にしていただいてすみません。
あとは一人で回れますのでお気遣いなく』
そう言って彼女はイーサンと別れ、
一人フロアーを歩いていた。
目的もなく。
いや、目的ならあった。
身寄りのない自分に残された最後の家族、
お爺さんお祖母さん、従兄を殺すこと。
全身をベールで包んだ女性アイラ・ラウは、
ここに至るまでの仮定を思い出していた。
彼女の生まれた国は恵まれてはいなかった。
今だ古い因習の残る国インド。
カースト政の影響が残る呪いの国。
そんな国で彼女は生まれた。
インド北部の農村で生まれた彼女の人生は、
その出生から波乱にみちていた。
彼女は決して、
全ての人から祝福され生まれた子ではなかった。
いやむしろ呪い憎まれ生まれた子供だった。
ただ彼女の両親だけが彼女を愛し、
生まれたのは事実だったが。
それでもその愛すべき家族は、
同じ家族に殺された。
彼女の両親の両親、
つまりはお爺さん、お祖母さん、兄弟、
従兄に殺されたのである。
最近になり漸く交通網が整ってきたとはいえ、
彼女が生を受けたのは、
まだまだ閉鎖的な階級差別《かいきゅうさべつ》の因習が、
色濃く残る場所だった。
インドでは未だに階級差別の意識が残り、
それは名字だけでその階級が解る程だった。
特に閉鎖的な地方では、
どこの誰がどの階級なのかはそこで住む
全ての住民が知る既成事実だった。
彼女の両親はそんな中、
身分の違いを越え愛し合った。
身分制度事態はとうの昔に法律により
廃止されてはいるのだが、
だからと言って差別《さべつ》が無くなったわけではない。
特に田舎のそれは厳しく、
両親は駆け落ち同然で彼女を生んだ。
そして彼女が生後まもなく、その事件はおこる。
身分の低い女性と所帯をもった父の家族が、
家に押し寄せ両親を殺したのだ。
つまりは父と母は、
その父と母に殺されたのである。
これ事態はこの国では珍しい事ではなかった。
良くある話の1つだ。
もちろん法律では禁じられた犯罪なのだが。
それでも殺さなければいけないほど、
その差別は根をはっていた。
自分の家族や親戚が、
身分の低いものと結ばれると言うことは、
その親戚一同が身分が落ち、
差別を受けることとなる。
今まで身分の低いものを虐げてきた者は尚更、
身分が落ちたときにあう仕返しは、
常軌を逸しているだろう。
そして自分がやって来たことである以上、
文句も言えない。
生き地獄から家族を守るため、
例え犯罪者となって裁かれようと、
他の家族を守るという歪んだ愛の連鎖が、
続いていたのである。
自業自得と言う考えすらない、
傲慢無知な差別意識。
それが彼女の生まれた国インドの実状だった。
入学式を終えた学生は自由時間を与えられ、
フロアーで思い思いに固まっていた。
そんな中全身をフードで覆った
インド代表のアイラ・ラウは、
居心地の悪さを覚えていた。
学生たちは大体は同じ出身国の代表同士で、
かたまっているのだが、
インド代表は彼女一人だった。
そうでなくても、
まったく違った文化をもつ国の学生たち。
インドでは考えられない露出で屯している姿は、
アイラの目にはストリップさながらに映り、
彼女には、そういったお店に迷い混んだ様な
違和感が拭えなかった。
いやむしろ自分一人が、
全身を隠すような姿に、
まるで世界の異物になったような、
いたたまれなさと落ち着きなさを感じてもいた。
そんな私を見かねたのかコーディネーターの、
イーサンという女性の方が、
先ほどからフロアーを案内してくれていた。
イーサンいわく、
彼女は学生のコロニー内での生活を
サポートするのが仕事らしい。
『顔色がすぐれませんが大丈夫ですか。
アイラさん』
彼女の親切はありがたいが、
今は一人になりたい気分だった。
『親切にしていただいてすみません。
あとは一人で回れますのでお気遣いなく』
そう言って彼女はイーサンと別れ、
一人フロアーを歩いていた。
目的もなく。
いや、目的ならあった。
身寄りのない自分に残された最後の家族、
お爺さんお祖母さん、従兄を殺すこと。
全身をベールで包んだ女性アイラ・ラウは、
ここに至るまでの仮定を思い出していた。
彼女の生まれた国は恵まれてはいなかった。
今だ古い因習の残る国インド。
カースト政の影響が残る呪いの国。
そんな国で彼女は生まれた。
インド北部の農村で生まれた彼女の人生は、
その出生から波乱にみちていた。
彼女は決して、
全ての人から祝福され生まれた子ではなかった。
いやむしろ呪い憎まれ生まれた子供だった。
ただ彼女の両親だけが彼女を愛し、
生まれたのは事実だったが。
それでもその愛すべき家族は、
同じ家族に殺された。
彼女の両親の両親、
つまりはお爺さん、お祖母さん、兄弟、
従兄に殺されたのである。
最近になり漸く交通網が整ってきたとはいえ、
彼女が生を受けたのは、
まだまだ閉鎖的な階級差別《かいきゅうさべつ》の因習が、
色濃く残る場所だった。
インドでは未だに階級差別の意識が残り、
それは名字だけでその階級が解る程だった。
特に閉鎖的な地方では、
どこの誰がどの階級なのかはそこで住む
全ての住民が知る既成事実だった。
彼女の両親はそんな中、
身分の違いを越え愛し合った。
身分制度事態はとうの昔に法律により
廃止されてはいるのだが、
だからと言って差別《さべつ》が無くなったわけではない。
特に田舎のそれは厳しく、
両親は駆け落ち同然で彼女を生んだ。
そして彼女が生後まもなく、その事件はおこる。
身分の低い女性と所帯をもった父の家族が、
家に押し寄せ両親を殺したのだ。
つまりは父と母は、
その父と母に殺されたのである。
これ事態はこの国では珍しい事ではなかった。
良くある話の1つだ。
もちろん法律では禁じられた犯罪なのだが。
それでも殺さなければいけないほど、
その差別は根をはっていた。
自分の家族や親戚が、
身分の低いものと結ばれると言うことは、
その親戚一同が身分が落ち、
差別を受けることとなる。
今まで身分の低いものを虐げてきた者は尚更、
身分が落ちたときにあう仕返しは、
常軌を逸しているだろう。
そして自分がやって来たことである以上、
文句も言えない。
生き地獄から家族を守るため、
例え犯罪者となって裁かれようと、
他の家族を守るという歪んだ愛の連鎖が、
続いていたのである。
自業自得と言う考えすらない、
傲慢無知な差別意識。
それが彼女の生まれた国インドの実状だった。
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