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キミとふたり、ときはの恋。【第四話】
いざよう月に、ただ想うこと【8−7】
しおりを挟む自分の内にある光と影。その落差。輝きなんて見えなくなるくらいの、どろりとうねる黒い波の醜さを思う。
「うん、苦しい。苦しいの、とても。真っ黒で、どろどろしたものに蝕まれてて。それがすごく嫌なのに、消せないの」
ぽろりと、また弱音が口をつく。
今なら、言ってもいい。そんな気になってる。私が零した弱音に、「いいんだ、それで」って、少しの笑みが向けられたから。
「人を本気で愛するってことは、自分の汚い部分を知ることと同義なんだと、俺は思う」
それから、煌先輩は、今度は目線を空にやった。物思うように、その言葉は続く。
「剥き出しの嫉妬と独占欲は、本気の証だろ? カッコつけて体裁良くしてるうちは、子どもの『ままごと遊び』と同じだ。中身は空っぽ。形だけ。ってことは、それが出来ないお前は、正真正銘、アイツの『彼女』ってことじゃね?」
話しながらゆっくりと私に戻ってきた視線と、私のそれが、かちりと合った。
「だから、どろどろした感情を恥ずかしがる必要なんてない。むしろ、誇るべきだ」
「いいの? ほんとに? それでいい?」
じっと目を見て告げてくれた言葉に、即座に問いを返す。
もう既に『それでいい』と言葉をもらっているのに、欲張りな私は、さらに先輩の『それでいい』を求めてしまった。『今の私のままでいい』という言葉を、もっともらいたいと思ってしまったの。
汚くて醜い私のことを、それが当たり前だって言ってくれた煌先輩だから。
「あぁ。堂々と胸張って、嫉妬してる顔をアイツに見せてやれ。その時のお前、きっと眩しいくらいに綺麗だぞ」
「……っ……ありがと、ございます……うん……そう、するっ」
頷きながら御礼を言って、また少しにじんでしまった涙をすぐに指で拭った。
ほんとに出来るかどうかはわからないけど、『そうする』って誓いも口にした。
私がそうした時の奏人の反応が楽しみだと思ってしまったし。
その提案をくれた煌先輩の少し悪い笑みこそが、とても眩しかったから。
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