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キミとふたり、ときはの恋。【第四話】
いざよう月に、ただ想うこと【4−2】
しおりを挟む「え? もう風紀委員会、終わったの?」
びっくり。奏人の委員会がある日はいつもここで終わるのを待ってるけど、こんなに早く終わるのは初めて。
奏人が委員を務めてる風紀委員会は、常に議題が多い委員会らしくて、いつも長くかかる。
だから、今日もいつも通りの時間になるだろうと思って、ホームルームのことを思い出しながら時間をつぶしてたのよねぇ。
はっ! というか――。
「ひっ、『独り言が可愛い』って……奏人。また、声掛けしないで私のこと観察してたの?」
「んー? 『観察』はひどいな。俺も、すぐ声掛けしようと思ってたんだよ? けど、涼香がそのタイミングを与えてくれないくらい、ずっと佐伯先生と花宮先輩の名を出してブツブツ呟いて唸ってるから、つい聞き耳を立ててしまっただけなんだよ。悪気はなかったんだけどな。全然」
「あ……」
少しだけ奏人を責めるニュアンスを込めた私に、即座に返ってきた言葉。それに、ぴきんと顔が強張ってしまった。
奏人の口調に、ひやりと冷たいものが混じっていたから。
ごく僅か、注意をしていなければ気づけないほどの微小な違いだけれど。私は、それに気づいてしまったの。
けれど、それはほんの一瞬で。「行こうか」と昇降口へと促してきた声と表情は、いつもの奏人に戻っていた。
「それで、いつ声を掛けようかと思ってたら、相変わらず楽しいネーミングセンスに思わず吹き出してしまったわけなんだけど。涼香? どうして、佐伯先生が『花宮先輩ばりのヤンチャ族』って結論に至ったの?」
「え、えーと……」
涼しげな表情での問いかけは、私の言葉をただ待ってくれてると感じさせるもので。それに安心した私は、ホームルームで起きたことの説明をゆっくりと始めた。
学園祭の実行委員が決まったこと。武田くんと萌々ちゃんとのやり取り。それから、佐伯先生のこと。
私の説明に「ふーん」と頷いた奏人が、「秋田と笹原も、武田たちのそのテンションに合わせるのは大変だったろうな」と呟くものだから、私も同じように苦笑した。
うんうん。クラス委員さんって、いろいろと気苦労が多いお仕事よねぇ。
そういえば、奏人のクラスである一組のクラス委員は、一色くんだ。口数は少ないけど、有言実行タイプの一色くんだから、委員長は適任よね。
それで、確か副委員長は相原さんっていう女の子。私は、お顔と名前しか知らないけど、同じ副委員長の美也ちゃんの話では、責任感の強い、いい子だって聞いてるわ。
「あ、ねぇ奏人?」
穏やかに笑ってくれてる奏人に、私からも質問することにした。
「奏人のクラスのホームルームも、学園祭のお話だったんでしょ? どうだった? 実行委員さん、決まったの?」
「うん、決まったよ」
笑顔で下から見上げる私を目を細めて見返してくれた奏人の反応が、とても嬉しくて。その即答に、さらに笑顔で問いかけを重ねた。
「やっぱり? どなたが、実行委員をされることになったの? 私の知ってる方かしら?」
「俺だよ。俺と都築が、実行委員になったんだ」
「え……?」
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