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繋ぐ絆、燃え立つ恋歌 #5
しおりを挟む無理? そう言ったか? 今。
「わ、私、奈良から出たことないしっ」
けどさ。俺の上着を握りしめてるその手、震えてるじゃねぇか。爪の色が変わるほどに、そんなに強く握りしめてるじゃねぇか。
「家には、お年寄りだけやしっ」
俯いて髪で顔隠してるけど、拒絶の言葉を吐き出す度に唇を噛みしめてんの、はっきりと見えてんだぞ?
「お母さんが居ないから、お父さんのことだって心配で……」
もう、いい。もう、喋るな。泣き声で、拒むな。
俺、『口塞ぐ』って言ったよな?
「だから、どこにも行かれ……っ、んっ」
強引に上向かせ、可愛い拒絶を零し続ける唇に、自分のそれを深く重ね合わせた。
もう、何も言わせない。
「……んっ」
動くな。
「っぁ……んんっ」
逃げるな。
何度も首を振って俺から逃れようとする強情な相手を閉じ込めるべく、上から覆い被さるように口づけを続けた。
逃がさない。拒ませない。人目なんか、気にしてられない。
「んっ……れ、おっ」
何度目かの抵抗の後、ようやく諦めたのか、初琉の身体の力が抜けた。
「お前は黙っとけって言ったろ? もう忘れたのか?」
強引にして、悪かった。
謝罪と慈しみを込めて、出来るだけ優しく聞こえるように微笑みながら囁き、頭を撫でてやる。
「でもね、私……」
「全部、知ってる」
「え?」
「病気のことも。胸の手術痕のことも。教授が全部話してくださった」
ここで初琉が『でも』と返してくるのは、想定内だ。だから、昨夜の榊教授との話の内容について、早口でねじ込んだ。初琉の言葉を封じるため。
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