降る雪の…

３ 恋ぞつもりて… #16

　――二日後。


　学園祭の振替休日が明け、まだ痛む身体を引きずって登校してみれば、校内のどこにも優成の姿を見つけることはできなかった。


「――突然ですが。天城優成くんは、家庭の事情で転校することになりました。急に決まったことだったので、皆さんとのお別れも間に合わず、非常に残念ですが――」


　HRの時間に担任から告げられた言葉だけが、俺に与えられた優成の情報だった。


　あの日、激しすぎる情交に翻弄され、俺は失神していたらしい。


　意識が戻り、重い瞼をこじ開けてみると、シャワー室には俺ひとりが取り残されていた。


　身体は綺麗に拭われ、セーターと学ランを着せられた上に掛けられていたのは、優成が身につけていたパーカー。


　どんな言葉をかけて返そうかと、二日間、散々頭を悩ませていたそのパーカーは、唯一俺に残された、優成を想う縁よすがの品物に変わってしまった。


　激しく動揺する心を抑え込み、思い切って送ったLINEもメールも、電話でさえも不通で。


　俺との絆を優成自身が切り離したことを、突きつけられた。


　当たり前だ。


　あんな風に、情熱的に気持ちをぶつけてくれて。


　俺だけだと、言葉と身体で、知らしめてくれたのに。


　俺の独り善がりな弱さで、ひどく傷つけたんだから。





　優成と初めて出逢ってから、何年になるんだろう。


　13年？　いや、14年になるか。幼稚舎のプレ保育で隣になったのが最初だったな。



『わぁ！　ぼくのとなりにすわってくれるの？　うれしいなぁ！』



　名簿順に横に並ぶから、天城の隣は秋田で当たり前なのに。


　俺を見て浮かべた笑顔の眩しさに、おひさまのような子だ、と思った。



『おともだちになってくれる？　ぼく、ゆうせい。ゆうちゃんだよ？』


『ぼくは、あきたなりちか』


『ちかちゃん？　かわいいなまえー。なかよくしてね』


『なりちかだ！　ばかっ』



　俺を女と勘違いしたアイツを、殴って泣かせて以来のつき合いになる。