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3 恋ぞつもりて… #7
しおりを挟む「なぁ、教えてくれよ。ナル」
膝を抱え込んだ姿勢のまま、少しだけ顔が上げられ、低い声がそこから漏れる。
思い詰めたような目線に一瞬怯んだが、俺の答えはたったひとつだ。
「お前が聞きたいことが何なのか、俺には全然わからない。わけのわからんことばかり並べ立ててないで、早く……」
「あははっ! だよなー。そう言うと思ってたよ」
「え?」
答えの見えない話題はこれで終わり。早く帰ろうぜ、と。そう締めくくるつもりで紡いでいた言葉は、天城の乾いた笑いで遮られてしまった。それどころか――。
「ナルは、ずるい」
初めて見る、厳しい表情と鋭い眼光が俺を射竦めてくる。
お前、なんでそんな表情してる? 『ずるい』って、何だ?
「天城?」
「そう、それ。俺を名字で呼ぶ、それだよ」
「え?」
俺の呼びかけに、くっと眉がひそめられた。
「なぁ、ナル。今までずっと曖昧にしてたけど。俺を名前で呼んでくれなくなったのは、なぜだ?」
「……っ、なんで今更そんなこと……それは、あの時に説明したろ?」
「そうだよ、今更だ。『中等科に上がるから』なんて理由に、踏み込むのが怖かったんだから。けど、今日は聞きたい」
強く射抜くような瞳が、俺に答えを促す。
「あの時の“約束”を破られて! 俺が『ナル』って呼ぶのも、嫌そうにされてっ」
「……っ、おいっ!」
「その度に、俺がどんな気持ちになってたか。わかる?」
「……離せ」
声を荒げながら天城の手が伸び、手首がぐっと掴まれた。
「嫌だ、離さない」
「天城っ」
「嫌だ。もう、はっきりさせたいんだ。だから頼むよ、ナル」
手首を掴む手に、更に力が込められた。
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