片想いの王子様

第二章

彼の髪色【２】

　チカちゃんからこの情報を得た時、胸の内側にチリッとした鋭い痛みを感じた。もう一つ、武田くん本人から聞いたことに通じる情報だったからだ。


『花宮ちゃん。俺さ、血液内科医を目指してるんだ。血液の難病で苦しんでる人の力になりたい。昔から、将来の職業は、これ一択なんだ』


　お父さんが歯科医の武田くんが、歯学部じゃなく医学部に進学した理由を尋ねた時の彼の回答。これには、並々ならぬ決意が込められていたんだ。
　歌鈴ちゃんが幼少時から患っていたのは血液の難病で、彼女の命を奪ったのも、その病だったのだから。
　もう、たった一つの答えだけが、私の前に突きつけられてる。考えたくないけど、普通に推測できてしまう。

　武田くんは、歌鈴ちゃんが好き。
　初恋、だったのかな。きっとそうなんだろう。
　中一の冬に亡くなったということは、ちょうど六年経過してる。でも、彼はまだ彼女を忘れられていない。
　彼女と同じ病気の人たちの力になりたいと、将来の職業を選ぶほどに。歌鈴ちゃんの存在は武田くんの中で、いまだ鮮やかだ。

「あーあ、武田くんって本当に素敵な男の子ですねぇ」
　私の王子様は、死んでしまった女の子をずっと想い続けてる、とても誠実で真摯な人なんです。