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キミの熱に、焦がされる。

#4

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 う、わぁ……うわぁ! うわあっ!

 土岐が! 『お前に求められたい』とか、『欲しがってみせろ』とか言っちゃってるけど、これ現実? 何、この破壊力!

 口調はいつもの土岐なのに。表情がさ、めっちゃ切なげなんだよ。堪らなく色っぽいんだよ。あの土岐が!

 無表情がテンプレで、素っ気なくて無愛想。ぶっきらぼうな朴念仁って他の連中に言われてる(俺は言ったことないよ)、あの土岐が!

 今まで俺が『好き好き』って言ってまとわりつく度に、『暑い、うるさい、鬱陶しい』で一刀両断だった、あの土岐が!

 えっと……もしかしなくても、俺のことをすごく好き?

 そしたらさ、すっげぇ恥ずかしいけど! キスしたい、とか。してほしい、とか。俺から言ったほうがいいんかなあぁっ……駄目だ、無理! 呼吸困難んんん……!

「武田?」


――びくんっ

「……あ……」

 耳っ……耳に唇っ、押し当てられてる!

 や、違う。くいっと顔を傾けさせられた先に、土岐の唇が待ち受けていた、が正しいんです!

 土岐より俺のほうが5センチ背が高いから、コッチが正解っ。

「言ってくれないのか?」

 てゆうか、どっちが正解でもいいよ。それより、このとんでもなく色っぽい声を何とかしてくれよぅ。

 聞き心地は堪らなく良いけど、吐息が熱すぎて、つらい。

 もう、言うしかねぇ。でないと鼓膜が溶けちゃうっ。

「い、言う! 言うよ。頑張って言うけどさ。でも、ひとつだけお願いがあんだよ」

「何だ?」

 うおっ。だから、耳に唇押しつけながら聞き返すの、反則だって。

 ちょっと線が細くて甘めのお前の声。昔から大好きなんだからさ。マジで、耳が溶けそう。

 けど、これだけはお願いしとかなきゃだ。

「あ、あのさ。俺、まだ初心者で、色々と慣れてねぇから……だから、まずは軽ーいヤツで、お願いしたくっ」

「わかった」

 お、即答だ。さすが土岐、物わかりがいいぜ。

「サンキュ、土岐っ」

 よし、これで安心っ。

「礼には及ばない――――手加減できない場合があるだけだ」

「ん? 今、最後のほう、なんて言ったん?」

「気にするな。単なる独り言だ。――さて、『軽く』でいいんだろ? じゃあ、言え。俺の目を見て、ねだってみせろ」

 俺の耳から唇を離した土岐が、何か呟きながら正面から艶めいた視線を向けてきた。

 最後のほう聞き取れなかったけど、独り言なら、いっか。それより、『キスのおねだりミッション』のほうが重大だよ。よし、イくぜ!

 ごくりと喉を鳴らし、思い切って口を開いた。

「あっ、あの! キスっ、してほしぃん……んっ! んん、んんんっ!」

 最後まで言い終える前に、唇が塞がれた。しかも、しかも!

「……ふぁ……ぁ、ん」

 舌! 舌、入ってきてます!

 今! めっちゃ、舌絡められてるんですけどぉっ!

 え? 『軽く』のはず、じゃなかった? これのどこが軽め?

 即答してた、お前の物わかりの良さ。それ、どこに行っちまったのぉっ?

「ん……と、き……ぁっ……」

 苦しっ……。

「まだだ」

「……は、ぁっ」

「もっと差し出せよ。俺に」

「ふぁっ……ぁ……」

 噛みつくように唇を塞がれてから、もうどれくらい経っただろう。

 突然のディープキスに戸惑い、思わず舌を引っ込めて逃げようとした俺だったけど。

 『逃げるな。お前のこれが欲しいんだよ。頼むから嫌がったりするな』って耳朶を食みながら囁かれて、呆気なく陥落した。

 仕方ないよな。だって土岐の声、すっげぇ切なげなのに、エロさが堪んないし。

 俺のこと、かき抱くみたいにぎゅって強く抱きしめてくれてるし。

 手の動きが、ほんとに愛おしいものに触れるみたいに情熱的だし。

 おまけに、耳を食んだ後にそこをペロッて! ペロンッて、わりとねっとり舐め上げられてさっ!

 その全部に、きゅんってヤラレた。腹の奥まで熱くなって、トロンってなって、動けなくなっちまったんだもん。

 そんな俺が引っ込めたはずの舌はすぐに絡め直されて、それからずっとキスされてるんだ。長い、長ーいキス。

「……ふっ、ぅ……」

 苦しい。まるで水に溺れたみたいに、酸素が足りない。

「は、ぁっ……あ」

 けど、嬉しい。だって、あの日見たあの夢。あの濃厚な触れ合いの夢の中でさえ、キスは出来なかった。

 なのに、今はこんなにいっぱい土岐とキスしてるんだから。これこそ、夢みたいだ。

「ぁ……と、き……好きっ」

「ふっ。可愛いな、お前。ほんと可愛い」

 夢のついでに告白もしてみたら、頬にチュッてしながらの『可愛い』が返ってきて、さらに夢心地だ。

 ふわふわと夢心地の身体が土岐の腕に囲われ、その身体で窓にぐっと押しつけられる。

 胸も腹も、その下もぴったりと合わさり、唇が最後に触れ合った。

「なぁ、もっとキスしたい。だから、ありったけ寄越せよ」

「んっ、ふっ……」

 キスが、一気に深まった。ねじ込むように割り入れられた舌が口内をまさぐり、侵してくる。

「ふぁ……あ、んっ」

 互いの吐息と唾液が混じり合う。飲み下せなかったものが喘ぐ口からが溢れると、ざらりとした感触が舐め取っていって、また口内で溶け合うんだ。

 窓に押しつけられた身体のあちこちに土岐の手が触れ、狂おしげに這い回る。そうして、コイツに求められてるのだと俺に知らしめてから、動けないようにそこに縫い止められた。

「お前の全部は、俺のもの、だろ?」

「んぁっ……ふぁ……ぁ、土岐ぃ」

 髪が愛おしげに撫でられ、蕩けるように笑う土岐によって口づけが繰り返される。何度も、何度も。

 なっ? 逃げるなんて、無理だろ?

「俺の慎吾――――お前を、もっと味わいたい」

 逃げられるわけないじゃん。この情熱から。


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