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見えぬものと、見えるもの 【15】

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「そのような子供騙しの懐剣で、私に立ち向かうか。では、先にお前から血祭りに上げてやろう。大切な者を奪われる悲哀を、敬愛する主人に味わわせてやるといい」


――キンッ!

 毒を孕んだ声が途切れた直後、金属音が響き渡った。

 容赦のない一撃がロキに向かって振りおろされたその時。私も地を蹴り、剣撃の風を巻き起こした相手に向かって剣を繰り出す。

 が、ロキに向かっていて無防備なはずの身体を横から狙った一撃は、瞬時にレイドが飛びすさったため、その身の一部を掠めただけに終わった。

 しかし間髪入れず、そのまま勢いをつけて身体を回転させながら、もう一撃。空中から全体重をかけ、斜めに斬撃を振りおろした。

「はあぁっ!」

「くっ!」

 だが、レイドが漏らした呻き声を聞き取ったものの、十文字に交錯した刃が奏でる金属音で、渾身のこれも無駄に終わったのだと知る。

 幅広の長剣を振るうレイドに比べ、短剣のこちらは、明らかにが悪い。

「シュギル様、大丈夫ですかっ?」

 続いて斬りつけてきた剣をかろうじてかわし、横に飛んで再び間合いをとった。

「……っ、はっ……はぁ、っ」

 息が、荒い。

 短剣を握る手指も、びりびりと痺れている。

 寝込んでいた十日の間に、これほどに筋力が落ちていたのか。

 右肩から血が流れ続けているのも感じている。カルスの剣からルリーシェをかばったときの傷だ。

 掠り傷だと放置したために、渾身の剣撃の足枷になってしまったか。

「シュギル様」

 力の入らぬ身体に鞭を打ち、地に膝をつかぬよう堪えていた私の腕が、不意に掴まれた。

「私が神官の動きを止めます。その隙に、最後の攻撃を」

 二の腕をぐっと掴み、呼吸の荒い私の背を一度撫でたきり、ロキの手は離れていく。『最後の攻撃』を、私に託して。

「では、参ります」

「待て、ロキ! それは駄目だ!」

 自分がレイドの動きを止めると、ロキは言った。

 それは即ち、自らの身体を盾にするということ。

「ロキ! 駄目だっ!」


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