黎明の天(そら)に、永遠を誓う

７

愛情と思慕の狭間で 【15】

　……熱い。

　喉が……身体が、焼けるようだ。

　杯を煽り、聖水を飲み干した途端。焼けつくような痛みが、喉から全身へと一気に広がった。

「……っ」

　空になった杯が、手から滑り落ちていく。

　何かを叫んだような気がする。大声で。

「――――！」

　けれど、覚えているのは、そこまで。私の意識は、真暗き深淵に取り込まれるように、深く深く、闇の底に落ちていった――。





「――シュギルよ、目覚めたか」

「……はい、女神様」

　どれほど意識を失っていたのだろう。

　時間の経過はわからぬが、目覚めた瞬間に女神様がお声をかけてくださったということは、私の様子を見守っていてくださったということか。なんと畏れ多いことだろう。

「気分は、どうだ？　身体の異変の自覚はあるか？」

「気分は……最悪です。喉の痛みに加えて、頭が割れそうに痛んでいます」

　気高き存在が、私の身の状態をお尋ねくださっている。それに感謝しながら身を起こし、正直に答える。

　気分は最悪だ、と。

　そして、ずきずきと痛むこめかみに指を当て、まるで木槌きづちで殴られてでもいるかのような頭痛を訴えた。

「ですが、こうして声を出せておりますし、手足の違和感もございません」

　焼けつくような喉の痛みは、まだ続いている。

　が、ひどく掠れてはいるが、声は出る。

　そうして、その場でゆっくりと立ち上がり、四肢の異常がないことも確かめた。

「四肢にも異常はないと？　それでは――」

「はい。どうやら、私は大丈夫なようです」

　語尾に含みを持たせられた女神様に頷き、それを認めた。

「――目が見えない以外は」

　暗闇の中、女神様のお声が聞こえる方向に向かって、微笑んでみせた。

　そう。目覚めた瞬間から、私は気づいていた。秘薬を飲んだ代償が、どこに表れたのか。

「そうか。光を失ったか」

「はい」

　私は、失明していたのだ。