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決意の示し方 【6】
しおりを挟む何? 血、と言ったか?
「レイド。それこそ、どういう意味だ? まさかとは思うが、巫女となった後にも生贄となる義務があるということを言っているのか? それはっ……」
「――王太子殿下」
気色ばみ、一歩詰め寄った私を真っ直ぐに見返したレイドから、それまでとは一変した、雄弁な声がかかった。
一切の感情を捨て去った口調と反応しか見せていなかったレイドが、初めて見せた、意志を持った声色。それは、ただ『王太子』と呼ばれただけであるのに、私の次の言葉を押しとどめるほどの力を持っていた
「殿下は――――殿下こそが、誰よりもよく御存知のはずでございましょう? 我が国の建国の伝承を」
「建国、の……?」
「はい。我らが崇めたもう神聖なる存在。万物を作りし創造神が、この地に御降臨なされたのは何故ですか?」
あ……。
「“かの女神”に、建国の英雄王が誓った詞は、あなた様の中にも息づいているのではありませんか?」
「……あぁ、そうか」
「もう、おわかりでしょうか。なればこそ、巫覡だけでは足りぬのです」
レイドの言葉を受けて、思いを巡らせた。長きに渡り言い伝えられている、古の伝承が、脳裏に浮かんでくる。
我ら王家の祖、ギルトゥカス英雄王の伝承。古き混沌の時代、英雄王は自らの命とその武力、子々孫々に至るまでの累代の崇拝と引き換えに大地の女神へ加護を願い、それを以てこの地を平定した。
その大地の女神は、建国後に我が国の創造神という別の名を冠することになり、王でさえ不可侵の神殿で崇められ続け、現在に至る。
ならば、導き出される答えは、ひとつ。
だから、レイドは『血が足りない』と言ったのだ。生贄の儀式に相当するほどの加護を願うには、“もうひとり必要”だから。
創造神が累代の加護を約束した、ギルトゥカス王の血を引く者。
――つまり、私が覡となり、巫女となったルリーシェと『ふたりで神に仕える身になれば良い』ということだ。
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