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第五章
望む未来(さき)にあるもの【3】
しおりを挟む「桜子、お姉さん?」
ぽつりと、名を呼ぶ。
もう、目の前にはいない人の名を。そして、思い出す。お姉さんが立ち去り際に告げていった言葉を。
『蘭子もね、きっとわかってはいるのよ。今のままの自分じゃ駄目だってこと。ただ、まだそこまで達観できてないだけ。お子様だからね。あの子が自分で気づいて、ちゃんと『姉』になれる時まで待ってやってほしい』
蘭子お姉さんと私、双方へのフォローの言葉。そこに、桜子お姉さんの胸の内が見えた気がした。
正直、私がお父さんに愛されてるかどうか、それを確かめることよりも、桜子お姉さんに認めてもらえてる可能性があるのだと感じられたことのほうが、私は嬉しい。
……のかもしれない。
「ふふっ。何なの、私。桜子お姉さんといるとなんとなく居心地がいいとは思ってたけど、まさかね」
それ以上に、私はあの人に憧れの気持ちを抱いていたのかな。だから、嬉しい、のかな。
こんな風に、ぽかぽかと温かな熱が胸の中を浸食していくのを実感してたりするのかな。
確証は持てないけれど、そんな気がする。
「でも、疑問も問題も、まだ残ってる。というか、山積みね」
正直、混乱は継続中だ。
家の中で顔を合わせても、それだけ。まともに視線が合わない、会話することがないに等しいお父さんが、私に愛情を注いでくれているという実感がどこにもない。
「桜子お姉さんのあの表情を見てなかったら、騙されてると思えるくらい」
ただ、自分がしなくちゃいけないことの道筋だけは見えた。今は、それで充分。
それに、私には、まだまだやらなくちゃいけないことがたくさんある。そう、とてもたくさん……。
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