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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【4−11】

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「涼香。向こうのビーチでは、この格好になっちゃ駄目だよ。絶対に」
「え?」
 夕陽が綺麗だから、もう少し眺めようって言った奏人が、私をその腕で包み込みながら伝えてきた言葉。
 円形のビーチマットの中央で奏人の足の間に座り、背後から囲ってくる逞しい腕の中でドキドキしながらもおとなしく身を預けていた私は、その言葉に首を傾げた。
 えーと、『向こう』っていうのはクロアチアのことよね? それで『この格好』は、今の私の格好ってことだから、バンドゥビキニってことでぇ……。
 つまり、旅行先のビーチでは、レースキャミとミニスカスタイルのままで過ごしてほしいって言ってる、のかな?
 えー、でもそれは無理かもー。何せ、『ビーチの正装はビキニ』っていつも言ってるおばあちゃんと一緒の旅行だもん。

 毎年、私よりも際どいビキニを着用しちゃうおばあちゃんと一緒なのに。
 というか、このバンドゥスタイルのビキニを勧めてくれたのもおばあちゃんなんだから、そんなわけには……。
「これ、たった四、五日じゃ消えないくらい濃いめにつけたから、キャミソール着たほうがいいと思うんだ」
「えっ?」
 私の手に重なっていた奏人の手が背中に移動し、『これ』と、最後につけられた印《しるし》にその指が触れた。
「もちろん、涼香が見せびらかしたいつもりなら俺は全然構わないけど。場所が場所だからなぁ。どうだろうね。ふふっ」
 ま、まさか。同じ場所に執拗に痕がつけられたのって……。
「あ、ついでに告白しとくと、胸元につけたのはキャミソールを着用しててもギリギリ見える位置なんだ。でも、そこのは『綺麗についたなら、いいよ』って涼香も許してくれたし問題ないよね」
 しまった!
 ああぁ、私ったら。ノリノリで許可してる場合じゃなかった。
 奏人、全部わかった上でやってたんだ。
 もおぉ! 奏人ってば。奏人ってば。奏人ってばぁ!

「うん、大丈夫。問題ないよ。離島のビーチではキャミ着るし、なんならスカーフも巻いとくから気にしないで」
 でも、私自身が受け入れたことだ。
 それに、奏人と離れて寂しいのは私のほう。こう言ってても、奏人の印《しるし》は一週間の旅行中にはきっと消えてしまう。
 それなら、奏人の言う通り見せびらかしてもいいんだけど。おばあちゃんには、首筋の印、とっくに見られてバレちゃってるし。
 あぁ。でもでも、こんなこと言われたら、またすぐに離れ離れになるってこと、実感しちゃう。
 今日はこんなに楽しかったのに。
 違う。楽しかったから余計に、だ。
 奏人。私、寂しい。たった一週間だけど、寂しいよ。
「ねぇ、涼香。今度は、俺が『寂しい』って口にしてもいい?」
 背後から包み込んでくれてる腕の持ち主が、こめかみに口づけながら尋ねてくれた言葉。反射的に振り仰げば、とても雄弁な瞳とかち合った。


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