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その声で名前を呼んで、何度でも

おはようのキスと「愛してる」

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 当たり前だよね。昨夜、めちゃ濃厚な夜を過ごした後なんだよ?
 何度も何度も熱を交換して、お互いを貪り尽くした翌朝なんだから、ちょっとの触れ合いでも簡単に身体に火がつくに決まってる。
「リュカ。ごめん。さっきの僕の発言、謝るよ。ほんとはバッチリその気になってたのに、見栄はって『くすぐったい』って言ったんだ。リュカがただの挨拶って言ったから、正直に言いづらくて……ごめんね」
「あ、俺こそ、『ふざけんな』とか言ってごめん。俺が全面的に悪い」
「いや、悪いのは僕だ」
「や、俺が悪い」
「いたっ」
「いてっ」
 相手より多く謝ろうとするあまり、互いのおでこがぶつかった。弾みで起きた事故だから、かなり痛い。
「ふふっ。謝り合いはこれで終わりにしようよ」
「ふっ。そうだな」
 寝室に密やかな笑いが零れた。交代で相手の額を撫でて、いたわり合って、また笑う。
 この時間が愛おしい。
 ずっと休みなしで働いてたから、こんな些細な触れ合いでも胸が痛くなるくらい幸せ。
 あー、だから、かな? だから、僕はあんな夢を見たのかな。
 昨夜の、何かを探して走り回っている夢は、もしかしたらリュカと二人きりの時間がもっと欲しいって願望が見せたのかもしれない。
 アイドルデュオとして常に一緒に過ごしていても、仕事仲間と恋人では、共有する時間の価値が雲泥の差なのだから。

「詩音。仲直りのキス、していい?」
「うん。僕もしたい」
 いっぱい、したい。
「早く、こうしたかった。アイドルじゃない、俺だけの詩音を抱きしめて、『好き』って言って、いっぱいキスしたかった」
「リュカ……」
 リュカも、僕と同じことを思ってくれてたんだ。
 わあぁ。これ、めちゃめちゃ嬉しいよ。
「リュカ。じゃあ、昨夜の続き、する? 仲直りのキスより、僕、そっちがいい」
「おおっ。それ、すっげぇ名案じゃね? じゃあ早速、姫のリクエストにお応えしましょう」
「ん、っ」
 返事をする間もなく、唇が塞がれた。僕なんかを姫扱いする、物好きな王子に。
「詩音が満足してくれるまで、『おはようのキス』の連打だ」
 僕の恋人アイドルは、かなりなせっかちくん。それだけが玉にきずだけど、最高に情熱的で愛しいパートナーなんだ。





【了】
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