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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【9−6】

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「ふぁ、ぁ……」
「涼香? まだ、いい?」
 深く重なった唇に、奏人からの問いかけが吐息に混じって降ってくる。
「んっ……かなっ」
 それに返事を返す間もなく、次の熱が送り込まれてくる。
「……ふっ……ぅ」
 もう、どれくらい経った? この、濃厚なときが始まってから。
 ここは外なのに。おまけに、この浮見堂には、他に何人かお祭り客がいるはずなのに。
 でも、まだ終われない。わかってる。二週間ぶんのキス』をせがまれ、それに頷く代わりに奏人の首に手を回したのは、私なのだから。
 こうして唇を、キスの回数を重ねても、奏人が旅立ってしまえば寂しいに決まってる。
 けれど、このひとと確かに想い合っているのだということを確認したい。
 それを記憶に刻んで、手元に残しておきたいのよ。
 だから、この大胆な行為は、まだ終わらない。

「かな、と……好きっ」
「涼香っ」
 私の告白に、絡みついてくる舌の熱が、さらに温度を上げた。
 それが、堪らなく嬉しい。
 この濃密な触れ合いは、まだ終わらせない。
「名残惜しいけど、そろそろ帰らないと」
 触れ合わせていた身体がすっと離れ、そこに開いた隙間と、そろそろ言われるんじゃないかと恐れていた奏人の言葉の両方に、全身が急に冷え込んだ気がした。そんな季節でもないのに。
 だから、もう一度すがりつく。
「あ……お願っ……も、いちど、だけっ」
「ん? 一度でいいの?」
 襟元にすがりついた私の手に、奏人の手が重なる。
「俺は欲張りだからね」
 そうして、望んだものは、あっさりと与えられた。
 薄い唇が綺麗につり上がり、うっそりと笑った形のまま、私のそれに熱を乗せてくれたから。

「あ……は、ぁ……あ……」
「何度でもしたいよ。本当は」
「んっ……あ、かなっ」
「この場所だから余計に。意味、わかる?」
 この場所、と強調した奏人によって、後ろの柱に身体が押しつけられた。
 両肩を掴む奏人の指に力が込められ、小さな小さな呟きが、池の水面を撫でる風とともに耳に届く。
「涼香は俺だけのものだから、だよ」
「奏人っ」
 意味、わかったよ。奏人。『浮見堂でのキス』の意味。
 この場所での記憶は、奏人、あなたとだけの記憶ってこと、でしょう?
 柱に押しつけられ、下から掬い上げるように深く翻弄してくる熱。それに、ただただ応えることで、奏人からの問いに正解を返す。
 絡め合う吐息が教えてくれる、大好きなひとの独占欲。これ、もっとちょうだい。
 もっと、もっと欲しいの。


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