79 / 85
キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【9−2】
しおりを挟む「涼香。実は俺も、涼香に受け取ってもらいたい物、あるんだ」
キーホルダーをラッピング袋に戻した奏人が、浴衣の帯につけてる信玄袋から何かを取り出した。
「え?」
その手には、小さな包み。
「開けてみて?」
そっと手を持ち上げられ、乗せられた軽い箱の感触に、戸惑いながらも鼓動が早まっていく。
これ、私に?
え? 今日は奏人の誕生日なのに?
なんで? どうしてぇっ?
手に乗せられた包みは、どう見てもプレゼント用とわかる物だから、私の脳内は疑問でいっぱい。
どうしようって思うけど、『開けてみて』って奏人が言ってるんだから、開けなくちゃよね?
緊張しながら、そっと包みを開き、中から箱を取り出す。つるりとした手触りの丸い小さな箱。そのふたをゆっくりと開けた。
「わぁ!」
すぐに奏人の顔を見た。
「どうかな? 気に入ってくれた?」
「うん……うんっ、すごく綺麗!」
ほんとに、綺麗。
奏人からのプレゼントは、星のモチーフのネックレスだった。
リングの中で、ふたつの星が繋がってるデザイン。片方の星には、小さな赤い石が埋め込まれてる。これ、たぶんガーネットだ。
私の、誕生石。
「ねぇ、このデザインって……」
「あぁ、俺もびっくりしたよ。こんな偶然あるんだな」
あ、やっぱりそうなんだ。
苦笑気味にふわりと笑った奏人の様子で、ネックレスを見た時の『もしかして』という私の疑問は確信に変わった。
このネックレス、私が贈ったキーホルダーと同じ意図を持ってるんだね。
「ほんと、すごい偶然。じゃあ、お揃いになるのね。織姫と彦星で」
私たちがお互いへのプレゼントに選んだネックレスとキーホルダー。お互いに内緒にしてたはずなのに、同じ『七夕の夜』をテーマにしてるだなんて、偶然にもほどがあるわぁ。でも――。
「俺たち、気が合うね」
「ふふっ、ほんとね。でも、カレカノだから仕方ないんじゃない?」
たまにしか見られない、奏人のいたずらめいた笑み。それに、同じ笑顔を返せるこの瞬間が、私はとても好きなの。
「貸して? つけてあげる」
「あ、うん」
私の手から受け取ったネックレスを手に、奏人の腕が横から回ってきた。
隣同士で座ってるから、身体を覆うように腕を回されて、その腕の中に包み込まれる体勢になってる。
お互いに黙ってるせいか、奏人の浴衣の袂が私の肩に乗って、私の浴衣と生地同士が擦れ合う音までが、かすかに耳に届いてくる。
それが、ふたりの密着具合を私に知らせて、途端に息がしにくくなった。
あれ? どうしよう。ネックレスつけてくれてるだけなのに、こんなにドキドキしちゃってる。しかも、たぶん顔も赤くなってるわ。
えーと……まだ、かな? もう、この体勢がなんか苦しいんだけど。手先が器用な奏人にしては、時間かかってるわよね?
あ、夜だから見えにくいのかしら?
でも、せっかく奏人がつけてくれてるのに、催促なんてできないもん。もうちょっと待っ……。
「涼香? さっきから、身体がぷるぷる震えてるけど、どうかした?」
「えっ? だっ、大丈夫! 大丈夫だからっ」
だから早くつけて、この体勢から解放して?
「あぁ、そんな風に俯いたら、可愛いここが丸見えになるよ?」
「え? な……あっ、やぁっ」
何っ? なんで、うなじにキスっ?
「ずっと我慢してたのに、触れたくなるだろう?」
「あ……かなっ」
顔の横にある奏人の袂にすがりついて、そこでようやく私は気づいた。その袂の先から出てる奏人の手が、私の肩を掴んでることに。
「奏人? もしかしてネックレス、とっくにつけ終わってたの?」
「あ、気づいた? 涼香がいつ気づくかなって待ってたんだけど、どんどん可愛くなっていくから我慢できなくなったよ」
全然悪びれてない綺麗な笑みとともに、仕上げのように、もう一度うなじにキスが落ちた。
うん。今、気づきました。私の学習能力の無さに。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
BL学園のナナメ上!
くりーむそーだ
青春
とある友人が書いたBL小説に来てしまった初夏と、巻き込まれた桜。
知ってる情報と何だか少し違う世界に2人が戸惑いながらヒッソリと暮らして行くっ!……という訳でもなく、やりたいことをやりたいようにやる2人。
原作?むしろアンチ王道主人公が居る時点で生理的に無理!を貫く2人。
BL学園のはずなのに共学になってたり、原作では悪役だったキャラがほわほわ系美人になってたり、アンチがビッチになってたりするから好きにしていいよね!という、発想が元々規格外なのにトリップしてから能力も規格外になった(腐)女子2人のお話。
見切り発車。作者の好きな要素を盛り込みました。
ネット用語?やBL発言をする主人公です
※いじめや暴力、性的発言があります。
BL/GL?/イジメ/トリップ/最強?最凶?/男装/ 変装/憑依?/退行/男口調
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
期末テストで一番になれなかったら死ぬ
村井なお
青春
努力の意味を見失った少女。ひたむきに生きる病弱な少年。
二人はその言葉に一生懸命だった。
鶴崎舞夕は高校二年生である。
昔の彼女は成績優秀だった。
鹿島怜央は高校二年生である。
彼は成績優秀である。
夏も近いある日、舞夕は鹿島と出会う。
そして彼女は彼に惹かれていく。
彼の口にした一言が、どうしても忘れられなくて。
僕は冷徹な先輩に告白された
隻瞳
青春
全学年から大の男嫌いで有名な『冷徹姫』として恐れられていながらも、心の中では『恋』を求めている高校2年生の石見里奈(いわみりな)は一つ下の学年に転校してきた山本賢人(やまもとけんと)の顔が可愛いかった事から一目惚れし、やがて告白に至った。賢人は家族以外で自分を優しく見守られていた事が嬉しく思って二つ返事で承諾して二人は交際を始める。
やがてそれを知った周りの友人たちに振り回されながらも、徐々に男女関係を築いていく。
元オタでチビだけど成績優秀でクラスから男なのに可愛いと評判の主人公と、学園一恐いけど実際は乙女なヒロインのちょっと変わった青春ラブコメディ。
※刺激の強い表現が含まれるエピソードには*を付けています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる