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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【3−7】
しおりを挟む「デザートは青司さんからの差し入れだよ。『奏人が食べてるところを眺めるのもいいけど、一緒に食べたら?』ってさ」
「えっ? 眺めっ……るとか、そんなっ! わ、私、別にっ」
きゃーっ! どうして、じっくり眺めようと思ってたことがバレてるのぉ?
「あれ? その反応は」
「野崎先輩、そこまででお願いします。そこからは、俺だけの特権なので」
「ほぅ……なるほどね。お前もなかなかだな。ま、薄々気づいてたけど。それよりも、その子に用がある人がいてさ。少しだけ、いいか?」
奏人に向かってニヤリと笑った野崎先輩が身体をずらして、その後ろからピョコンと顔が覗いた。
「やっほー! 涼香ちゃーん! いらっしゃいませっ」
「えぇっ! あずさお姉さんっ? あの、その服装は?」
「涼香。あずささんと知り合い?」
「えっ、うん」
奏人、『あずささん』って言った。
「えと、『花守さん』でご一緒してるお姉さんなの」
「あぁ、園芸ボランティアの?」
「うん」
私のおばあちゃんが参加してる園芸ボランティアのグループ『花守さん』。私もたまに一緒に行くんだけど、あずさお姉さんも『花守さん』のメンバーで、そこで知り合った。納得顔の奏人に、私からも質問したい。あずさお姉さんは……。
「わぁ、ほんとに奏人くんの彼女が涼香ちゃんなんだ。さっき見てびっくりしたけど、確認して、もっとびっくりしちゃったわぁ」
「俺もですよ。先に涼香に話しかけたから驚きました」
「あのっ、あのっ! ごめんなさい、割り込んで。でも、聞きたくて! あずさお姉さんは、ここのスタッフさんなの?」
「うん、そうよー。見ての通り、あずさはホールスタッフでーす!」
やっぱり! と言うか、それ以外考えられないよね。だって、あずさお姉さん。中野さんと同じ女性用の丸いラインの制服姿なんだもの。
「さて、あずささん。そろそろ退散しましょう。今は、奏人の貴重な癒やしの時間ですからね」
そう言って、あずさお姉さんの肩をポンと叩いた野崎先輩が、私のほうを見た。
わぁ、優しい笑顔だぁ。
「あ、涼香ちゃん。私ね、今日は十五時からの勤務なの。まだまだ、ゆっくりしてってねー」
「行きますよ、あずささん」
ブンブン手を振るあずさお姉さんと、お姉さんを先導してカウンターに戻る野崎先輩。二人を見ながら、心の中でちょっとだけニヤケる。
ふふっ。もしかしなくても、初めて私のお知り合いが奏人と繋がったわ。小西あずささん。私がプライベートでお知り合いのお姉さんが、奏人の同僚さんだなんて。こういうの、嬉しい!
あら? ちょっと待って? なら、煌先輩も……。
「涼香? 見つめすぎだよ?」
「え?」
ん? このセリフ、今日、二回目な気がする。それに、心なしかヒンヤリした声音のような……。
「さっき、ぽーっとした顔で野崎先輩のこと、見てたろ?」
え? 見てないよ?
「もしかして、見惚れてた?」
「えぇっ?」
「あの人の全身を目線で追ってたけど? 俺、前に言ったよね? 『よそ見は駄目だよ』って。もう、忘れた?」
「か、かなっ」
ひそめた声が、耳元に落ちる。身体を寄せてきた奏人に肩を抱かれて。
耳朶に触れながらの問いかけに、ふるりと身体が震えた。
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