怪奇探偵社の報告書

だすびだ

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消えた天気予報

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深夜、探偵事務所の静寂を破るかのように電話が鳴った。受話器を取ると、聞き慣れない女性の声が震えながら話し始めた。

「夜分にすみません…実は、天気予報が消えてしまうんです…」

一瞬、何を言っているのか理解できなかった。しかし、依頼者の話を聞くにつれて、事態の異様さが見えてきた。

「最近、毎晩天気予報が一度放送されても、その後いつの間にか全てのデータが消えてしまうんです。録画しても、その部分だけが消えていて…まるで天気そのものが消え去ったかのようなんです」

依頼者は気象予報士をしている女性、斎藤さんだった。彼女は天気予報を確認するために日々のデータを収集していたが、深夜の時間帯に限って、予報のデータが記録から消失していることに気づいたという。

「実は、今夜も確認してもらいたいんです。私の代わりに天気予報を見張っていてください…」

依頼を受け、僕とM、Tは事務所で待機することにした。斎藤さんが話していた時間は深夜1時過ぎ、通常のニュースや天気予報が放送される時間帯からずれていた。

Tが退屈そうに缶ビールを開け、僕は軽くため息をつく。Mは一言も喋らず、パソコンで過去の天気予報のデータを確認していた。

「おかしいな…確かに放送されたはずの天気予報が、公式のアーカイブから消えてる」とMが呟いた。

その時、時計が1時を指し、テレビの画面に天気予報が映し出された。普通の放送に見えたが、念のため録画をセットしておくことにした。しかし、再生してみると、さっき見たはずの映像が綺麗に消えていた。

「これは一体どういうことだ?」と僕は思わず声を上げたが、Tは頭を掻きながらぼそりと言った。

「もしかして、放送されていないことにされてるんじゃないか?」

さらに調査を進めるため、僕たちは斎藤さんの家を訪ねた。彼女の自宅には大量の天気予報の記録が保存されていたが、例の時間帯のデータだけが抜け落ちている。

「どうしても、この現象の原因が分からなくて…」と斎藤さんは不安げに呟く。

Mは資料をじっくりと確認し、ある仮説を立てた。

「この時間帯の天気予報が消えているのは、単なる技術的な問題じゃないかもしれない。何か、意図的に消されている可能性がある」

その時、斎藤さんがふと呟いた。「実は、この現象が起き始めたのは、ある気象衛星の打ち上げが失敗してからなんです…」

その衛星は天気予報の精度を上げるために打ち上げられたものだったが、打ち上げ直後に連絡が途絶え、行方不明になっていたという。

斎藤さんの情報をもとに、僕たちは衛星に関する更なる情報を集めることにした。そして奇妙な事実が浮かび上がった。失敗した衛星は、実は特殊な機能を持っていたという噂があった。それは「予測ではなく、実際の天候を操作する」能力を秘めていたというものだ。

「もし、その衛星が今でも稼働しているとしたら?」とMが推測する。

その夜、再び天気予報の時間が訪れた。依頼者の斎藤さんも一緒に見守る中、テレビ画面には再び天気予報が映し出された。だが、その直後、僕のスマートフォンに非通知の着信があった。

「この電話に出るな」と、Tが制止したが、僕は無視して受話器を取った。

「…あんたたちは知りすぎた」

短い言葉の後、電話は切れ、テレビ画面も同時にブラックアウトした。

依頼者の斎藤さんはその後、突然失踪してしまった。僕たちは再び彼女の家を訪ねたが、部屋は荒らされており、彼女の行方を知る手掛かりは一切見つからなかった。

Mは冷静に事務所に戻り、残された記録を分析し続けた。そして彼は気づいた。消えた天気予報の時間帯と、失敗した衛星の軌道が一致していることに。

「おそらく、衛星は未だに稼働していて、何らかの理由で特定の時間帯の天気予報を操作しているんだ。それを知ってしまった斎藤さんは…」

その後、僕たちは斎藤さんの行方を追い続けたが、手がかりは何も得られなかった。ただ、彼女が消える直前に送ってきたメッセージには、こう書かれていた。

「天気予報の真実を知る者は消される…あなたたちも気をつけて」


数週間後、事務所に一通の手紙が届いた。それは斎藤さんの筆跡で、差出人不明の封筒に入っていた。

「まだ衛星は動いている…誰も信じてはならない。天気予報の背後に隠された真実を探らないで」

手紙を読んだ僕は、再び深夜の天気予報に目を凝らした。しかし、あの日と同じように、天気予報のデータは忽然と消え去ったままだった。

「これ以上追及するのはやめよう」とMは言ったが、僕の胸には消えない疑問が残った。

果たして、天気予報が消える理由とは何だったのか?そして、斎藤さんはどこへ消えたのか?その答えを知る日は、まだ遠い未来のことなのかもしれない。
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