怪奇探偵社の報告書

だすびだ

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未確認の夜

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探偵社のドアを叩いたのは、小柄な女性だった。彼女はどこか怯えた様子で、僕とM、Tに向かって訴えかけるように話し始めた。

「山の近くで見たんです…それは…人じゃありませんでした!」

僕たちは一瞬顔を見合わせた。探偵として奇妙な依頼は慣れているものの、UMAの話となるとさすがに現実味に欠ける。

「詳しく話を聞かせてもらえますか?」Mが冷静に声をかけると、女性は少し落ち着きを取り戻した。

「昨晩、友人と山道を車で通っていたんです。そこで、巨大な何かが道路を横切ったんです。まるで…獣のような。でも、それは人の形もしていて…友人も見てました!」

Mは黙ってメモを取りながら、「それはいつのことですか?そして、その場所は?」と尋ねた。

「場所は○○山の近くで…時間は夜の10時頃です」と彼女は答えた。

Tは興味津々といった様子で、「UMA…未確認生物ってやつか?僕も一度見てみたいな」と冗談めかして笑ったが、僕はふと何か違和感を覚えた。確かにUMAの話は突飛だけど、何かが引っかかる。

依頼を受けた僕たちは、目撃された山へ向かうことにした。夜間の目撃情報だったため、現地に着いたのは夕方で、暗くなる前に周辺を確認しておきたかった。

「本当にこんなところで何かが出たのか?」とTは辺りを見回しながら、持ってきたカメラをいじっていた。Mは黙々と地図を広げ、目撃場所を確認している。

「まずは足跡や痕跡を探してみよう」と僕は提案したが、探しても特に怪しいものは見当たらない。道は静かで、風が木々を揺らす音だけが響いている。

「もしかして、ただの熊とかだったんじゃないか?」Tがまた冗談を言ったが、そのとき、遠くから聞き慣れない音が聞こえた。

「聞こえた?」僕は耳を澄ませる。

「風の音じゃないな」とMが冷静に言い、僕たちは音の方向へ進んだ。

調査を進めるうちに、近くの村の住民にも話を聞くことにした。ある老人が、最近になって同じような目撃談が増えているという。

「昔からあの山には何かがいるって言われてきたんだ。普通の動物じゃない何かがな」と彼は呟いた。「それを見た者は、二度と同じ姿では戻ってこない、ともね…」

僕はその言葉に背筋が寒くなるのを感じた。「具体的にどんな姿だったんですか?」

「大きな影のような…人のようで、そうじゃない。森の中に溶け込んでしまうような…」

Tは面白がるように笑った。「ますますUMAっぽい話じゃないか。こういう話は大好きだよ!」

だが、Mは真剣な表情を崩さず、「これ以上の調査を続けても、噂に振り回されるだけかもしれないな」と冷静にまとめた。

翌晩、僕たちは山道で張り込みをすることにした。カメラを設置し、周囲を見張っていると、ふと茂みの中から何かが動く気配を感じた。

「いる!」Tが興奮してカメラを構えた瞬間、黒い影が視界を横切った。

「待て!」僕たちは追いかけたが、影はすぐに消えてしまった。

その後、僕たちが調査を進めた結果、驚くべき事実が判明した。実は、近くの村では密かに猟犬を飼育しており、猟犬が夜間に森を逃げ出してしまうことがたびたびあったのだ。その犬たちは大きく、遠目から見ればUMAのように見えることがあった。

しかし、その犬がまるで人のように動くと目撃者が言うのは、光や影の関係で錯覚が起こっていたのだ。

「やっぱり、ただの動物だったってことか」とTは少し残念そうに笑った。

調査は解決したかのように見えたが、僕たちが帰る途中、ふとMが言った。

「それでも、何かが引っかかる。犬だとしたら、足跡や痕跡がもっとはっきり残るはずだ。それに、あの老人の言っていた『影』は…本当にただの犬だったのか?」

僕は一瞬、答えに困ったが、「まあ、世の中にはまだ解明されていないこともあるんだろう」と軽く流した。

そして僕たちはその場を後にしたが、どこかで、森の奥深くにはまだ未確認の何かが潜んでいるような気がしてならなかった。


---


数日後、僕たちは探偵社で報告書をまとめていた。依頼人に調査結果を伝える準備を進める中、ふとTが言った。

「UMAじゃなかったのは残念だけど、影の正体が犬だったって話もまあまあだろ?」

僕は笑いながら頷いた。「でも、あの山にまだ何かがいるって考えると、やっぱり謎は残るね」

Mも珍しく少し考え込んだ様子で、「次に依頼があったときは、もっと深く掘り下げてみよう」と言った。

その瞬間、何かが僕たちの背後で動く音がした。だが振り返った時、そこには誰もいなかった。
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