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物怪の恐怖
物怪の恐怖
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わたしが神社の祠の前で降りると何人かの人が武器を持って待機していた。
「あらあら、HIBIKIじゃない。今は人気アイドルとか人気YouTuberとか言われているけど、絶対に負けないからね。今日はヤマタノオロチを倒して超バズる動画を上げちゃうんだから」
大人のお姉さんだ。わたしは知らないけど、この人もYouTuberかなにかだろうか。
「へへ、俺も負けないよ。今は人気のない底辺ゲーム実況者だけどここで一攫千金してやるんだ!」
全然人気がない人たちも明日の人気者を目指して命を賭けている。まぁ、それを言ったらわたしとみうちゃんも人気ないか。現実世界ではただの中学生にすぎない。
「ずいぶんと人が増えちゃったね」
タケルくんがドラゴンから降りて周囲を見渡す。
「本当なら、昨日のうちに倒す予定だったんだけどな」
「そうだったんだ。ごめんなさい」
わたしが謝ると、いいんだよ。みんなの無事が一番だからね、とタケルくんは笑った。
「ミコトからの連絡はないか……」
「ミコトってだれ?」
「ミコトさんって言ったら、HIBIKIの中でも一番のミステリアスなイケメンじゃないですか。長髪ロングの銀色の髪が尊いですぅ」
わたしの質問にみうちゃんがツッコミをいれる。
わたしはタケルくん意外は興味ないからな。名前もすぐに忘れちゃうや。子どもの頃は女の子向けヒーローの名前も好きなキャラ意外は忘れちゃうタイプだったし。
「まさか、やられたとかないよな?」
ヒカルくんが焦っている。
「やられるとどうなるの?」
「お前なぁ、そんな当たり前のことを質問するか? やられたら……死ぬんだよ。元の世界にも戻れない。よく消えた芸能人とかいるだろ? ああいうのはみんな、人気を出すために無謀な挑戦をしてやられていったんだ」
「そうだ、そもそもさ、HIBIKIって人気あるし、命を賭ける必要ないんじゃない? 天下のトップアイドルじゃない。10代の中なら文句なしでナンバーワンだよ」
「そう見えるかもしれないね。でも、ぼくたちにはぼくたちの理由があるんだ」
タケルくんは何かを考え込むような仕草をして見せた。こんな表情もかっこいい。わたしだって、タケルくんたちのために何か力になってあげたいな。
その時だ、林の奥の方からこの世のものとは思えない女性が泣いているような大きな叫び声が響いた。
「なにあれ? 人の声?」
わたしは背筋が寒くなった。
「いや、たぶん、ヤマタノオロチの叫び声だ。声のした方に向かうぞ。武器を構えろ」
祠に集まった何人もの有名人志望が命懸けで林の中へ入っていく。
「わてが撮影するどすえ。安心して戦うどす」
「ありがとう、マイコ!」
昨日見た猿の頭に虎の体をもった化け物が道を塞いだ。
「昨日までのわたしじゃないんだから! みんな、力を貸して!」
わたしの剣が光ったと思ったら、隣を走っていた大人の女性に物怪は真っ二つにされてしまった。
「新人さんの獲物はいただいたわよ!」
「むぅ、せっかくかっこいいところを見せようと思ったのに……」
「ひみこさん、あ、あたしはだめです。怖いよっ!」
「どりゃ!」
小太りのゲーム実況配信者が剣を振ってみうちゃんを救った。
「ありがとう。元の世界に帰ったら、チャンネル登録してあげるわ」
わたしがお礼を言うと、造作もないことでござる、と武士のようにかっこつけてみせた。
「ありがとうございました」
みうちゃんもお礼を言っている。大人でも命懸けなんだから、子どもがこんなことをしているってバレたら絶対に止められるだろう。少なくとも、お父さんは絶対に許してくれないだろうな。
「あらあら、HIBIKIじゃない。今は人気アイドルとか人気YouTuberとか言われているけど、絶対に負けないからね。今日はヤマタノオロチを倒して超バズる動画を上げちゃうんだから」
大人のお姉さんだ。わたしは知らないけど、この人もYouTuberかなにかだろうか。
「へへ、俺も負けないよ。今は人気のない底辺ゲーム実況者だけどここで一攫千金してやるんだ!」
全然人気がない人たちも明日の人気者を目指して命を賭けている。まぁ、それを言ったらわたしとみうちゃんも人気ないか。現実世界ではただの中学生にすぎない。
「ずいぶんと人が増えちゃったね」
タケルくんがドラゴンから降りて周囲を見渡す。
「本当なら、昨日のうちに倒す予定だったんだけどな」
「そうだったんだ。ごめんなさい」
わたしが謝ると、いいんだよ。みんなの無事が一番だからね、とタケルくんは笑った。
「ミコトからの連絡はないか……」
「ミコトってだれ?」
「ミコトさんって言ったら、HIBIKIの中でも一番のミステリアスなイケメンじゃないですか。長髪ロングの銀色の髪が尊いですぅ」
わたしの質問にみうちゃんがツッコミをいれる。
わたしはタケルくん意外は興味ないからな。名前もすぐに忘れちゃうや。子どもの頃は女の子向けヒーローの名前も好きなキャラ意外は忘れちゃうタイプだったし。
「まさか、やられたとかないよな?」
ヒカルくんが焦っている。
「やられるとどうなるの?」
「お前なぁ、そんな当たり前のことを質問するか? やられたら……死ぬんだよ。元の世界にも戻れない。よく消えた芸能人とかいるだろ? ああいうのはみんな、人気を出すために無謀な挑戦をしてやられていったんだ」
「そうだ、そもそもさ、HIBIKIって人気あるし、命を賭ける必要ないんじゃない? 天下のトップアイドルじゃない。10代の中なら文句なしでナンバーワンだよ」
「そう見えるかもしれないね。でも、ぼくたちにはぼくたちの理由があるんだ」
タケルくんは何かを考え込むような仕草をして見せた。こんな表情もかっこいい。わたしだって、タケルくんたちのために何か力になってあげたいな。
その時だ、林の奥の方からこの世のものとは思えない女性が泣いているような大きな叫び声が響いた。
「なにあれ? 人の声?」
わたしは背筋が寒くなった。
「いや、たぶん、ヤマタノオロチの叫び声だ。声のした方に向かうぞ。武器を構えろ」
祠に集まった何人もの有名人志望が命懸けで林の中へ入っていく。
「わてが撮影するどすえ。安心して戦うどす」
「ありがとう、マイコ!」
昨日見た猿の頭に虎の体をもった化け物が道を塞いだ。
「昨日までのわたしじゃないんだから! みんな、力を貸して!」
わたしの剣が光ったと思ったら、隣を走っていた大人の女性に物怪は真っ二つにされてしまった。
「新人さんの獲物はいただいたわよ!」
「むぅ、せっかくかっこいいところを見せようと思ったのに……」
「ひみこさん、あ、あたしはだめです。怖いよっ!」
「どりゃ!」
小太りのゲーム実況配信者が剣を振ってみうちゃんを救った。
「ありがとう。元の世界に帰ったら、チャンネル登録してあげるわ」
わたしがお礼を言うと、造作もないことでござる、と武士のようにかっこつけてみせた。
「ありがとうございました」
みうちゃんもお礼を言っている。大人でも命懸けなんだから、子どもがこんなことをしているってバレたら絶対に止められるだろう。少なくとも、お父さんは絶対に許してくれないだろうな。
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