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妖怪の学校に転校って!?

妖怪の学校に転校って!?(2)

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「そういえば、神城って女の子もマラソンするって心の中で言ってたよ」
 ピクシーがわたしに神城さんのことをわざわざ教えてくれた。一緒にいたから友達だとでも思っているのだろうか。
 それにしても、へぇ、神城さんが……。嫌いな女の子だけど、美しくなるために努力しているのはすごいと思う。わたしはアイドルとか見ている分には好きだけれど、自分が本気でなれると思っているほど自惚れてはいない。低学年の頃はアイドルアニメやゲームにハマって目指したこともあったけれどね。
「わたしも走るよ、お兄ちゃん」
 わたしが神城さんみたいに学校のアイドルにはなれると思わない。でも、少しくらい綺麗にはなれると思う。だから、ちょっぴり頑張ってみるのもいいかもしれないと思った。
「それなら僕も行こうかな、おい、ピクシー、君はどうするんだ?」
 剣士くんの言葉を無視して面倒くさそうに寝そべっているピクシー。
「わたしはポテト食べて漫画読んでまーす」
「使えないな……」
「な、なにを!?」
 剣士くんはポケットからスマホのようなものを取り出した。
「これは妖怪を呼び出す妖怪スマホだ。妖力を使って妖怪を呼び出すことができる。いおりと契約を結べ、ピクシー」
「うーん、まぁ、いいわ。わたしの力が必要な時は呼び出しなさい」
 ピクシーがスマホのような四角い石板に指をタッチすると不思議な文字が浮かび上がった。
「契約完了だ。普通の人間にはつかえないが、妖怪の子孫のいおりならつかいこなせるだろう」
「それなら、あちきも契約しんしょう」
 おお、雪姫ちゃんまで! これは心強い!
「じゃあ、ジャージに着替えていこう! お兄ちゃん!」
「おお、やる気あるな! 負けないぞ!」
 ジャージのポケットに妖怪スマホを入れて、わたしとお兄ちゃんは川沿いの土手に向かって走り出した。
 雪姫のおかげで痩せたから、走る意気込みはあるんだけれど、川沿いの土手について500メートルほど進んだ辺りで脇腹が痛くなってきた。
 正直しんどい。
 お兄ちゃんと剣士くんは楽々という感じだ。剣士くんは妖怪だしね。それにしても、お兄ちゃんは意外と体力あるな。ずっと引きこもっていたのに。
「わっちは疲れたでありんす……はぁはぁ……」
 それにしても雪姫ちゃんが体力がないのは意外だった。痩せすぎているからなのかな?
 まあ、色白なお姫様みたいな女の子だし、運動は苦手なのかも。
「雪姫さん、横腹が痛いの? 無理しないでね……少し休憩する?」
 そう言って、お兄ちゃんが雪姫ちゃんへポシェットに入ったスポーツドリンクを差し出してくれた。妹には見せない優しさだ。
「あ、ありがとうでありんす」
 ごくごくと雪姫ちゃんがドリンクを飲む横で、お兄ちゃんは横腹が痛くなるのは横隔膜が肝臓という臓器に引っ張られるからなんだよ、なんて空気の読めないことを言っている。兄は頭が良いと思うけれど、女心をまるでわかっていない。
 そうかと思うと、そんな話を聞きながら頬を赤ている雪姫ちゃん。
 休憩していると、反対側から神城さんが走ってくるのが見えた。ぽっちゃり体型になったのでとても目立つ。
「あ、羽瀬川さん……」
「こ、こんにちは。神城さん……」
 気まずい。わたしをいじめていて、現在はみんなからいじめられている神城さんだ。何を話したらいいのかわからない。
「わたし、絶対に痩せるからね」
 おお、すごい決意だ。単に生まれつき美人だから性格が悪いと思っていた。だけれど、美に関してはとてもこだわりがあって、同じ女の子として尊敬できるかもしれないとほんのちょっぴり思った。
「それは無理でありんす」
 残酷なことを言ったのは雪姫ちゃんだ。
「あなたが太っているのは脂肪だけじゃない。悪い妖力が膨らんでいるからでありんす。普通のダイエットでは効果はないでありんす」
 そうか、雪姫ちゃんが太らせたんだもんね。
「ねぇ、雪姫ちゃん。神城さんのことを元に戻してあげてよ」
 耳元でそっとつぶやいた。ダイエットしても効果がないなんて神城さんが可哀想だと思った。それにデブと呼ばれる辛さはものすごくわかっているつもりだ。わたしなら絶対にそんなことは言わない。
「あちきはいおりちゃんがよければ戻しんす」
 雪姫ちゃんは飲んでいたスポーツドリンクをお兄ちゃんに手渡すと、神城さんのお腹に手を向けて、不思議な力をつかった。すると、みるみる神城さんがスリムになっていく。
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