22 / 131
第一章
第22話 魔力封印
しおりを挟む
「えっ、なにこれ?! 頭の中に何かが……」
光の中心からクロノの戸惑った声が聞こえる。
おそらく彼女は突然『魔力封印』のスキルが閃いたことに驚いているのだろう。
自身が体験しているからわかる。スライム斬りと英雄の盾、この二つの高位スキルを取得した時の話だ。
契約が完了した途端、スキルについての詳細やどのような方法で使用すればいいのかが瞬時に頭に浮かんできた。
俺の場合、インプットされた方法で剣を振ってみたが残念ながら条件が足りてない為スキルは発動されなかった。
スライム斬りはスライムを剣で百回以上攻撃、英雄の盾は戦士職で金級冒険者以上になることで利用可能になる。
そして、今回クロノに付与した魔力封印スキルの発動条件は。
魔力量銀級相当。補助魔術技能銀級相当。魔力弱体スキル取得済み。魔法剣士特性有り。
スキルによる魔力弱体化五百回成功済み。
『大丈夫、彼女なら可能ですよ』
ふわりと、柔らかな女性の声が耳に触れる。クロノでもミアンでもない。
彼女の気配はそれきりだったが、不安が打ち消された俺の胸には勝利による喜びと興奮が満ちていた。
「アルヴァさん、これ……いつも魔物たちに念じているのと同じにやればいいんですよね?!」
「ああ、弱体対象はミアンだ。相手を殺す技じゃない。だが魔王を封印するつもりで祈れ!!」
「はい、頑張って倒します!!」
「ふっざけんじゃないわよぉおおお!!」
スキルを理解したクロノの声と、発動を後押しする俺の激励。
それにより怒りを増したミアンの咆哮。術者の手から離れ襲い掛かってくる極炎鳥。
そして。
「聖魔女イデアの御業を借り唱える、魔の泉の入り口よ閉じよ……魔力封印!!」
中性的な凛々しい声が呪文を言い終えた瞬間、部屋の空気がぐんと薄くなる。呼吸の最中にぎゅっと喉を絞められた感じだった。
しかしそれは一秒にも満たないもので俺は苦しさよりも違和感を覚え周囲を見渡した。
火の鳥による熱さはもうない。というか魔力で生み出された灼熱の孔雀自体が消えている。羽さえも落ちていない。
そしてそれを生み出したミアンは首を折られた白鳥のように顔を真っ青にして蹲っていた。
「な、なにこれぇ、気持ち悪い、寒い、さむいよぉ……」
先程まで怒りに燃えていた魔女は氷の張った湖に突き落とされた後のようにガタガタと震えている。
部屋から異様な熱は去ったが、空気が冷えている訳ではない。それなのに彼女は今にも凍死しそうだった。
何が出来るか考えて、とりあえず上着を脱いでかけてやる。
「意味無いわよ……ばかいぬ」
俺の行為に対しミアンがか細く呟いたが、服を払い落とす様子はなかった。
「私の体、泥人形になったみたい。肉の重さだけ。魔力が全部なくなっちゃった、クロノなんかに、奪われちゃった……」
あれだけ見下していた相手なのに。そう大粒の涙を浮かべながら魔女は嘆く。高慢さを失っていない分哀れさが際立った。
萎れきったミアンにクロノが慌てたように口を開く。
「ボクは奪ってないですよ、魔力封印なので!それに……」
「よくやったから黙ってろクロノ」
時間が経てば魔力の封印状態も解除される。そう黒髪の少女が説明する前に手で口を塞ぐ。
今はまだミアンに希望を持たせる時ではない。
やっとこれからこの金髪の魔女と理性的な話し合いが出来そうなのだから。
光の中心からクロノの戸惑った声が聞こえる。
おそらく彼女は突然『魔力封印』のスキルが閃いたことに驚いているのだろう。
自身が体験しているからわかる。スライム斬りと英雄の盾、この二つの高位スキルを取得した時の話だ。
契約が完了した途端、スキルについての詳細やどのような方法で使用すればいいのかが瞬時に頭に浮かんできた。
俺の場合、インプットされた方法で剣を振ってみたが残念ながら条件が足りてない為スキルは発動されなかった。
スライム斬りはスライムを剣で百回以上攻撃、英雄の盾は戦士職で金級冒険者以上になることで利用可能になる。
そして、今回クロノに付与した魔力封印スキルの発動条件は。
魔力量銀級相当。補助魔術技能銀級相当。魔力弱体スキル取得済み。魔法剣士特性有り。
スキルによる魔力弱体化五百回成功済み。
『大丈夫、彼女なら可能ですよ』
ふわりと、柔らかな女性の声が耳に触れる。クロノでもミアンでもない。
彼女の気配はそれきりだったが、不安が打ち消された俺の胸には勝利による喜びと興奮が満ちていた。
「アルヴァさん、これ……いつも魔物たちに念じているのと同じにやればいいんですよね?!」
「ああ、弱体対象はミアンだ。相手を殺す技じゃない。だが魔王を封印するつもりで祈れ!!」
「はい、頑張って倒します!!」
「ふっざけんじゃないわよぉおおお!!」
スキルを理解したクロノの声と、発動を後押しする俺の激励。
それにより怒りを増したミアンの咆哮。術者の手から離れ襲い掛かってくる極炎鳥。
そして。
「聖魔女イデアの御業を借り唱える、魔の泉の入り口よ閉じよ……魔力封印!!」
中性的な凛々しい声が呪文を言い終えた瞬間、部屋の空気がぐんと薄くなる。呼吸の最中にぎゅっと喉を絞められた感じだった。
しかしそれは一秒にも満たないもので俺は苦しさよりも違和感を覚え周囲を見渡した。
火の鳥による熱さはもうない。というか魔力で生み出された灼熱の孔雀自体が消えている。羽さえも落ちていない。
そしてそれを生み出したミアンは首を折られた白鳥のように顔を真っ青にして蹲っていた。
「な、なにこれぇ、気持ち悪い、寒い、さむいよぉ……」
先程まで怒りに燃えていた魔女は氷の張った湖に突き落とされた後のようにガタガタと震えている。
部屋から異様な熱は去ったが、空気が冷えている訳ではない。それなのに彼女は今にも凍死しそうだった。
何が出来るか考えて、とりあえず上着を脱いでかけてやる。
「意味無いわよ……ばかいぬ」
俺の行為に対しミアンがか細く呟いたが、服を払い落とす様子はなかった。
「私の体、泥人形になったみたい。肉の重さだけ。魔力が全部なくなっちゃった、クロノなんかに、奪われちゃった……」
あれだけ見下していた相手なのに。そう大粒の涙を浮かべながら魔女は嘆く。高慢さを失っていない分哀れさが際立った。
萎れきったミアンにクロノが慌てたように口を開く。
「ボクは奪ってないですよ、魔力封印なので!それに……」
「よくやったから黙ってろクロノ」
時間が経てば魔力の封印状態も解除される。そう黒髪の少女が説明する前に手で口を塞ぐ。
今はまだミアンに希望を持たせる時ではない。
やっとこれからこの金髪の魔女と理性的な話し合いが出来そうなのだから。
13
お気に入りに追加
1,368
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。
越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる