2 / 28
アイリスフィアの章
聖女レノア
しおりを挟む
聖女レノアの発言で場がシンと静まり返る。
ジルク様が、私を、薬で洗脳した?
私は嫉妬することも忘れて年下の聖女を見上げた。
こちらの視線に気づいたのか彼女は優しく微笑み返す。まるで女神のようだと思った。
「話をする前に、ジルク王子は私たちから一刻も早く離れてください」
私とアイリ様から出来るだけ遠くに移動するようお願いします。
念を押す様にレノアは告げる。
大聖堂内では王族といえども女神の使いである聖女に逆らってはいけない。
しかしジルク王子はそれを拒んだ。
「何故だレノア!今こそ二人で手を取り合い女神に永遠の愛を誓おう!」
「未来永劫お断りいたしますジルク王子。誰か、彼を聖堂の隅に運んで」
そう最高位の聖女の威厳でレノアが信徒たちに命じる。
屈強な男たちによってジルク王子は指示通りに運搬されていった。
彼が喚き声を上げながら私たちから遠ざかる。
その距離が広がる程に私の頭は冷えて行った。
つまりそれは己の先程までの行動を冷静に把握できるということだ。
「わ、私はなんてことを……お許しください聖女様!」
罰を与えるなら家ではなく私個人に。そう頭を床にこすり付け懇願する。
ガタガタと己の罪深さに体が震えた。
公爵家の人間として教育を受けてきた身だ。
王家と肩を並べる教会の権威も、その教会が掲げる聖女の威光も子供の頃から知っていた。
そうだ、知っていた筈なのに。
「顔をお上げくださいアイリ様。私は貴女を罰する気はありません」
私の肩に優しく手を添えてレノアは言う。
「貴女は罪人ではなく、罪人に尊厳を弄ばれた被害者です」
「私の尊厳……?」
「ええ、アイリスフィア公爵令嬢。貴女は禁忌の薬によって心を操られていたのです。ある人物を深く狂愛するようにと」
そうですね、ジルク王子。
レノアの言葉に聖堂内の全ての視線が一人の高貴な青年へと向けられた。
ジルク様が、私を、薬で洗脳した?
私は嫉妬することも忘れて年下の聖女を見上げた。
こちらの視線に気づいたのか彼女は優しく微笑み返す。まるで女神のようだと思った。
「話をする前に、ジルク王子は私たちから一刻も早く離れてください」
私とアイリ様から出来るだけ遠くに移動するようお願いします。
念を押す様にレノアは告げる。
大聖堂内では王族といえども女神の使いである聖女に逆らってはいけない。
しかしジルク王子はそれを拒んだ。
「何故だレノア!今こそ二人で手を取り合い女神に永遠の愛を誓おう!」
「未来永劫お断りいたしますジルク王子。誰か、彼を聖堂の隅に運んで」
そう最高位の聖女の威厳でレノアが信徒たちに命じる。
屈強な男たちによってジルク王子は指示通りに運搬されていった。
彼が喚き声を上げながら私たちから遠ざかる。
その距離が広がる程に私の頭は冷えて行った。
つまりそれは己の先程までの行動を冷静に把握できるということだ。
「わ、私はなんてことを……お許しください聖女様!」
罰を与えるなら家ではなく私個人に。そう頭を床にこすり付け懇願する。
ガタガタと己の罪深さに体が震えた。
公爵家の人間として教育を受けてきた身だ。
王家と肩を並べる教会の権威も、その教会が掲げる聖女の威光も子供の頃から知っていた。
そうだ、知っていた筈なのに。
「顔をお上げくださいアイリ様。私は貴女を罰する気はありません」
私の肩に優しく手を添えてレノアは言う。
「貴女は罪人ではなく、罪人に尊厳を弄ばれた被害者です」
「私の尊厳……?」
「ええ、アイリスフィア公爵令嬢。貴女は禁忌の薬によって心を操られていたのです。ある人物を深く狂愛するようにと」
そうですね、ジルク王子。
レノアの言葉に聖堂内の全ての視線が一人の高貴な青年へと向けられた。
3
お気に入りに追加
3,015
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?
かのん
恋愛
ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!
婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。
婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。
婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!
4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。
作者 かのん
【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?
かのん
恋愛
わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!
私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。
妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?
ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。
全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。
そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。
しかしその婚約は、すぐに破談となる。
ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。
メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。
ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。
その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる