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王子は葛藤する
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女性の姿になって片想い中の愛しい人に会いに行ったら何故か向こうから接吻してくれた。
しかも、これまでになく自分に対して興味津々だった。
これはアレス王子にとって嬉しくも戸惑う事態だ。
いや本当は戸惑うことではないかもしれない。
以前母であるマリア王妃が語っていた。
自分がディアナと長く友情を育めたのはこの美貌があったからこそだと。
それを聞いた自分は正直意味が分からなかった。
父は何時ものように穏やかな笑みで妻の発言を享受していたし、兄も右に習えの表情を浮かべていた。
兄の方に身内だからこそ気づける程度の戸惑いがあったのは覚えている。
当然母もそれに気づき、言葉が足りなかったわねと優しげに微笑んだ。
そして強く語った。
少女時代の自分の可憐さを。
険悪だった頃のディアナもこの顔だけは褒めていたということを他の家族が紅茶を三杯ゆっくり飲み干せるだけの時間語り続けた。
その演説で取得できた知識は学生時代の母の外見が可愛さの擬人化みたいな扱いであったことと、ディアナが可愛らしいものが好きだということだった。
可愛いものが好きなディアナが寧ろ可愛いと強く思った事を今でも覚えている。
そして現在である。
自分は魔法道具を用いて今少女の姿に変身している。
初めて鏡に映した時、地味な外見だと感じた。
不細工とまでは言わないが母やディアナと比べて随分と大人しい容姿だと。
元々アレスは兄のルークと比べて華やかな美貌の持ち主ではない。つまり女性になった場合も相応ということだろう。
そう納得はしたが、理由の分からない侘しさを感じたのは確かだ。
だが、今はどうだ。
恋焦がれたディアナが部屋に入った途端、頬にキスをしてくれた。
あのディアナがである。
更に目をきらきらと美しく輝かせて自分に着飾らないかと提案してくる。
予想外の食いつき具合である。
正直、非常に嬉しかった。
地味な自分の容姿に対し好意的に接してくれるのも嬉しいし、単純に積極的に触れてくれるのが嬉しい。
ただ、それでいいのかという危惧はある。
女性の姿で好かれるのでなく、男性として求められたいと願うべきではと。
しかし。
「……今すぐという訳ではないのだけれど、駄目かしら」
愛しい人の懇願に首を横に振れる訳がなかった。
しかも、これまでになく自分に対して興味津々だった。
これはアレス王子にとって嬉しくも戸惑う事態だ。
いや本当は戸惑うことではないかもしれない。
以前母であるマリア王妃が語っていた。
自分がディアナと長く友情を育めたのはこの美貌があったからこそだと。
それを聞いた自分は正直意味が分からなかった。
父は何時ものように穏やかな笑みで妻の発言を享受していたし、兄も右に習えの表情を浮かべていた。
兄の方に身内だからこそ気づける程度の戸惑いがあったのは覚えている。
当然母もそれに気づき、言葉が足りなかったわねと優しげに微笑んだ。
そして強く語った。
少女時代の自分の可憐さを。
険悪だった頃のディアナもこの顔だけは褒めていたということを他の家族が紅茶を三杯ゆっくり飲み干せるだけの時間語り続けた。
その演説で取得できた知識は学生時代の母の外見が可愛さの擬人化みたいな扱いであったことと、ディアナが可愛らしいものが好きだということだった。
可愛いものが好きなディアナが寧ろ可愛いと強く思った事を今でも覚えている。
そして現在である。
自分は魔法道具を用いて今少女の姿に変身している。
初めて鏡に映した時、地味な外見だと感じた。
不細工とまでは言わないが母やディアナと比べて随分と大人しい容姿だと。
元々アレスは兄のルークと比べて華やかな美貌の持ち主ではない。つまり女性になった場合も相応ということだろう。
そう納得はしたが、理由の分からない侘しさを感じたのは確かだ。
だが、今はどうだ。
恋焦がれたディアナが部屋に入った途端、頬にキスをしてくれた。
あのディアナがである。
更に目をきらきらと美しく輝かせて自分に着飾らないかと提案してくる。
予想外の食いつき具合である。
正直、非常に嬉しかった。
地味な自分の容姿に対し好意的に接してくれるのも嬉しいし、単純に積極的に触れてくれるのが嬉しい。
ただ、それでいいのかという危惧はある。
女性の姿で好かれるのでなく、男性として求められたいと願うべきではと。
しかし。
「……今すぐという訳ではないのだけれど、駄目かしら」
愛しい人の懇願に首を横に振れる訳がなかった。
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