6 / 88
6話 裏切りのネクロマンサー
しおりを挟む
俺の母、ロベリアは元公爵令嬢だった。
その兄のノーマンは現在家名を継ぎグランシー公爵家の当主となっている。
俺にとって伯父に当たる彼は多少強引で感情的な部分はあるが悪い人ではなかった。
その息子のディスト・グランシーとも親戚を超えて友人のような関係だった。
「……ディスト?」
俺の説明に鏡の向こうでリヒトが口の端を引き攣らせる。
「そいつってもしかして髪が青っぽい銀色で目は紫色で顔が人形みたいに綺麗でいつもへらへら笑っていて滅茶苦茶気色悪い奴じゃなかった?」
早口で一息に告げられ、最初何を言われたのかわからなかった。
いつもどこか斜に構えた態度でいるリヒトらしくない。
いや、まだそう言い切れる程の付き合いでもないか。俺は怪訝に思いながらも答えた。
「外見の特徴とよく笑うところは合っているな」
「うわまじかよ、絶対歪みのネクロマンサーじゃん……!」
俺の返事を聞くと頭を抱えて蹲りそうな声をリヒトは上げた。
「ネクロマン……何?」
「そいつがあんたの死体盗んでいったせいでカインがどれだけ怒り狂ったか……!うわ、最低。思い出したくない」
「え、カイン……いや俺の死体を、え?」
白豚皇帝として殺された後の話だとは思うが、ディストが俺の死体を盗むとは一体どういうことだ。
しかもそれでカインが怒り狂ったらしい。意味不明過ぎる。
俺が戸惑っていることに気づいたのか、リヒトは深々と溜息を吐いてから話し始めた。
「ディストは最初反皇帝派の振りをして俺たちに近づいたんだよ。潤沢な資金で革命軍を支援していた」
「え……」
「金だけでなく情報も相当貰ったよ、革命成功の立役者の一人と言ってもいい」
それは結構ショックだ。晩年までそれなりに仲良くしていたつもりだったのに。
俺が酒浸りになってからはろくな話はしてこなかったが、険悪な関係になった覚えは全くなかった。
そうか、俺はディストに売られたのか。俺は彼を友人だと思っていたが向うはそう思っていなかったのだろう。
「でも、奴はあんたの死体目当てに俺たちを利用していただけだった」
「そうか……死体ぃ?」
「いやさっき言ったでしょ、ディストがあんたの死体盗んでいったって。凄い迷惑だった」
「確かに聞いたけれども!なんであいつが俺の死体を?」
そんなもの盗んでディストはどうしたんだ。恐怖と興味が入り交ざった気持ちで俺はリヒトに質問した。
そして俺にそのような質問をされたリヒトは、何故か非常に途方に暮れたような顔をした。
五分程無言のまま時間が過ぎて、ようやく鏡の中の賢者が口を開く。
「外見だけとはいえ子供には言えないし言いたくない。思い出したくもないし忘れたい」
でも可能ならあいつ今のうちに殺しておいた方がいいよ。それがお前たち兄弟の為だよ。
やたら力強く言われて今度は俺の方が戸惑う。
「いや、それは無理だろう」
ディストは公爵家の嫡男だ。そして現段階では、いや成長後も俺が知る限りは品行方正な人間だった。処刑する理由が全くない。
しかし困ったな。先にカインとディストを仲良くさせて息子である彼に伯父を取りなして貰おうと考えていたのだが。
そのことを話すとリヒトは首を横に振った。
「止めとけ。お前を二人で奪い合って殺し合うだけだぞ」
「いや、この世界ならそうはならないだろう……多分」
そもそも俺の死体を取り合うのがおかしい。
一定期間見せしめで晒した後は普通に土に埋めて置いて欲しい。いやそれを盗んだのがディストなのか。
カインは俺の亡骸を奪い返して再度埋葬してくれる気だったのかもしれない。
しかし白豚皇帝だった俺は死んだ後でも結構大変な目に遭っていたようだ。
次ディストに会う時、俺は彼に対し今までと同じ笑顔を浮かべられるのか不安になってきた。
その兄のノーマンは現在家名を継ぎグランシー公爵家の当主となっている。
俺にとって伯父に当たる彼は多少強引で感情的な部分はあるが悪い人ではなかった。
その息子のディスト・グランシーとも親戚を超えて友人のような関係だった。
「……ディスト?」
俺の説明に鏡の向こうでリヒトが口の端を引き攣らせる。
「そいつってもしかして髪が青っぽい銀色で目は紫色で顔が人形みたいに綺麗でいつもへらへら笑っていて滅茶苦茶気色悪い奴じゃなかった?」
早口で一息に告げられ、最初何を言われたのかわからなかった。
いつもどこか斜に構えた態度でいるリヒトらしくない。
いや、まだそう言い切れる程の付き合いでもないか。俺は怪訝に思いながらも答えた。
「外見の特徴とよく笑うところは合っているな」
「うわまじかよ、絶対歪みのネクロマンサーじゃん……!」
俺の返事を聞くと頭を抱えて蹲りそうな声をリヒトは上げた。
「ネクロマン……何?」
「そいつがあんたの死体盗んでいったせいでカインがどれだけ怒り狂ったか……!うわ、最低。思い出したくない」
「え、カイン……いや俺の死体を、え?」
白豚皇帝として殺された後の話だとは思うが、ディストが俺の死体を盗むとは一体どういうことだ。
しかもそれでカインが怒り狂ったらしい。意味不明過ぎる。
俺が戸惑っていることに気づいたのか、リヒトは深々と溜息を吐いてから話し始めた。
「ディストは最初反皇帝派の振りをして俺たちに近づいたんだよ。潤沢な資金で革命軍を支援していた」
「え……」
「金だけでなく情報も相当貰ったよ、革命成功の立役者の一人と言ってもいい」
それは結構ショックだ。晩年までそれなりに仲良くしていたつもりだったのに。
俺が酒浸りになってからはろくな話はしてこなかったが、険悪な関係になった覚えは全くなかった。
そうか、俺はディストに売られたのか。俺は彼を友人だと思っていたが向うはそう思っていなかったのだろう。
「でも、奴はあんたの死体目当てに俺たちを利用していただけだった」
「そうか……死体ぃ?」
「いやさっき言ったでしょ、ディストがあんたの死体盗んでいったって。凄い迷惑だった」
「確かに聞いたけれども!なんであいつが俺の死体を?」
そんなもの盗んでディストはどうしたんだ。恐怖と興味が入り交ざった気持ちで俺はリヒトに質問した。
そして俺にそのような質問をされたリヒトは、何故か非常に途方に暮れたような顔をした。
五分程無言のまま時間が過ぎて、ようやく鏡の中の賢者が口を開く。
「外見だけとはいえ子供には言えないし言いたくない。思い出したくもないし忘れたい」
でも可能ならあいつ今のうちに殺しておいた方がいいよ。それがお前たち兄弟の為だよ。
やたら力強く言われて今度は俺の方が戸惑う。
「いや、それは無理だろう」
ディストは公爵家の嫡男だ。そして現段階では、いや成長後も俺が知る限りは品行方正な人間だった。処刑する理由が全くない。
しかし困ったな。先にカインとディストを仲良くさせて息子である彼に伯父を取りなして貰おうと考えていたのだが。
そのことを話すとリヒトは首を横に振った。
「止めとけ。お前を二人で奪い合って殺し合うだけだぞ」
「いや、この世界ならそうはならないだろう……多分」
そもそも俺の死体を取り合うのがおかしい。
一定期間見せしめで晒した後は普通に土に埋めて置いて欲しい。いやそれを盗んだのがディストなのか。
カインは俺の亡骸を奪い返して再度埋葬してくれる気だったのかもしれない。
しかし白豚皇帝だった俺は死んだ後でも結構大変な目に遭っていたようだ。
次ディストに会う時、俺は彼に対し今までと同じ笑顔を浮かべられるのか不安になってきた。
142
お気に入りに追加
3,960
あなたにおすすめの小説
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
【BL】攻めの将来の為に身を引こうとしたら更に執着されてハメられました
めめもっち
BL
名前無し。執着ハイスペ×地味な苦学生。身分格差。友達から始めた二人だったが、あまりにも仲良くしすぎて一線を越えてしまっていた。なすがまま流された受けはこのままでいいのだろうかと悩んでいた中、攻めの結婚を聞かされ、決断をする。
2023年9月16日付
BLランキング最高11位&女性向け小説96位 感謝!
お気に入り、エール再生ありがとうございます!
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる