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それでも俺が好きだと言ってみろ.88

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 和香はここまで言い終えたことで、やっと大きな仕事をやり終えたと思えた。



「お前、さっきの俺の話聞いたよな?他にセフレもいないし、植松もそういう関係じゃない。で、伊沢さんにも恋愛感情は抱いてない。それで、俺はお前だけを抱いてる。その意味が分からないか?」

「・・・分かりません。何でも言うことを聞く便利でバカな女だからじゃないですか」



「お前・・・、とんでもなく自己評価低いな・・・。それに思考がねじ曲がってるぞ」

「放っておいてください」

「いや、放っておけない」

「えっ・・・」

 桜庭は和香に近づくと、その身体を強く抱きしめた。



「だから、放っておかないって言ってるんだ。何とか言え」

「な、何言ってるんですか・・・。桜庭さんなら女性なんて選び放題で、私なんて・・・ただの欲望のはけ口で・・・」

「だから、違うって言ってるだろう!」

 桜庭は和香の唇に強く唇を押し当てた。



「っ!!」

「頼むからちゃんと人の話聞いてくれよ・・・。俺はこういうのが苦手なんだ・・・、だから二度と言わないぞ・・・。お前が好きだ・・・」

「うっ・・・」

 嘘と言いそうになって、寸でのところでこらえた。

 桜庭が勇気を出して言ってくれたであろう、その言葉を否定してしまったら、それこそ本当に彼は自分のことを見捨てるかもしれない。



「俺は言ったぞ・・・。で、お前は?お前はどうなんだ、ちゃんと言え!」

「わ、私、私なんか・・・、桜庭さんに相応しくない・・・」

「バカ、そんなこと聞いてるんじゃない。俺のことどう思ってるかを聞いてるんだ」



 抱きしめられたままで、桜庭の体温がどんどん和香に伝わってくる。

 桜庭の体は熱くて熱くて、ただ抱きしめられているだけでも失神しそうなのに、もう思考回路が壊れそうだ。



「好きですよ!もう、おかしくなるくらい好きです!こんなこと・・・、言うつもりじゃなかったのに。どうしてくれるんですか!こんな気持ちにさせて、苦しいんです・・・、もう、離してください、気が変になりそうです!」

「だめだ、離さない!俺のことが好きか?だったらどうして離さないといけないんだ?俺に抱かれたいだろ?体中を愛撫して、滅茶苦茶に感じて、俺のものをぶち込んで欲しいだろう?」

 抱きしめられたまま床に押し倒される。



「いつもみたいに、俺が欲しいって言えよ」

「・・・それは」

 お互いの気持ちを告白した今、それはもうプレイではなく、ただ本心を剥き出しにした言葉だ。



「言えよ!欲しいって、早く!」

「・・・ほ、欲しいです・・・。いっぱい、いっぱい、いっぱい欲しい。欲しいです!!」

 言わされたのではない。

 これが今の自分の本心だ・・・。

 だから、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 和香の顔は真っ赤で、とても桜庭のことは見られなくて、顔を背けた。



「バカ野郎、ちゃんとこっち向け」

 顎をつかまれ正面を向かされた。



「くれてやるよ!お前がほしいものを!もういらないっていうくらい、何度でもな!」

 そう言うと桜庭は激しいキスで和香の唇を塞いだ。



「・・・んんっ、・・・ふっ」

 苦しい・・・、でも死ぬほど嬉しい。
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