88 / 96
それでも俺が好きだと言ってみろ.88
しおりを挟む和香はここまで言い終えたことで、やっと大きな仕事をやり終えたと思えた。
「お前、さっきの俺の話聞いたよな?他にセフレもいないし、植松もそういう関係じゃない。で、伊沢さんにも恋愛感情は抱いてない。それで、俺はお前だけを抱いてる。その意味が分からないか?」
「・・・分かりません。何でも言うことを聞く便利でバカな女だからじゃないですか」
「お前・・・、とんでもなく自己評価低いな・・・。それに思考がねじ曲がってるぞ」
「放っておいてください」
「いや、放っておけない」
「えっ・・・」
桜庭は和香に近づくと、その身体を強く抱きしめた。
「だから、放っておかないって言ってるんだ。何とか言え」
「な、何言ってるんですか・・・。桜庭さんなら女性なんて選び放題で、私なんて・・・ただの欲望のはけ口で・・・」
「だから、違うって言ってるだろう!」
桜庭は和香の唇に強く唇を押し当てた。
「っ!!」
「頼むからちゃんと人の話聞いてくれよ・・・。俺はこういうのが苦手なんだ・・・、だから二度と言わないぞ・・・。お前が好きだ・・・」
「うっ・・・」
嘘と言いそうになって、寸でのところでこらえた。
桜庭が勇気を出して言ってくれたであろう、その言葉を否定してしまったら、それこそ本当に彼は自分のことを見捨てるかもしれない。
「俺は言ったぞ・・・。で、お前は?お前はどうなんだ、ちゃんと言え!」
「わ、私、私なんか・・・、桜庭さんに相応しくない・・・」
「バカ、そんなこと聞いてるんじゃない。俺のことどう思ってるかを聞いてるんだ」
抱きしめられたままで、桜庭の体温がどんどん和香に伝わってくる。
桜庭の体は熱くて熱くて、ただ抱きしめられているだけでも失神しそうなのに、もう思考回路が壊れそうだ。
「好きですよ!もう、おかしくなるくらい好きです!こんなこと・・・、言うつもりじゃなかったのに。どうしてくれるんですか!こんな気持ちにさせて、苦しいんです・・・、もう、離してください、気が変になりそうです!」
「だめだ、離さない!俺のことが好きか?だったらどうして離さないといけないんだ?俺に抱かれたいだろ?体中を愛撫して、滅茶苦茶に感じて、俺のものをぶち込んで欲しいだろう?」
抱きしめられたまま床に押し倒される。
「いつもみたいに、俺が欲しいって言えよ」
「・・・それは」
お互いの気持ちを告白した今、それはもうプレイではなく、ただ本心を剥き出しにした言葉だ。
「言えよ!欲しいって、早く!」
「・・・ほ、欲しいです・・・。いっぱい、いっぱい、いっぱい欲しい。欲しいです!!」
言わされたのではない。
これが今の自分の本心だ・・・。
だから、めちゃくちゃ恥ずかしい。
和香の顔は真っ赤で、とても桜庭のことは見られなくて、顔を背けた。
「バカ野郎、ちゃんとこっち向け」
顎をつかまれ正面を向かされた。
「くれてやるよ!お前がほしいものを!もういらないっていうくらい、何度でもな!」
そう言うと桜庭は激しいキスで和香の唇を塞いだ。
「・・・んんっ、・・・ふっ」
苦しい・・・、でも死ぬほど嬉しい。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
愛せないと言われたから、私も愛することをやめました
天宮有
恋愛
「他の人を好きになったから、君のことは愛せない」
そんなことを言われて、私サフィラは婚約者のヴァン王子に愛人を紹介される。
その後はヴァンは、私が様々な悪事を働いているとパーティ会場で言い出す。
捏造した罪によって、ヴァンは私との婚約を破棄しようと目論んでいた。
愛してくれないのなら愛しません。
火野村志紀
恋愛
子爵令嬢オデットは、レーヌ伯爵家の当主カミーユと結婚した。
二人の初対面は最悪でオデットは容姿端麗のカミーユに酷く罵倒された。
案の定結婚生活は冷え切ったものだった。二人の会話は殆どなく、カミーユはオデットに冷たい態度を取るばかり。
そんなある日、ついに事件が起こる。
オデットと仲の良いメイドがカミーユの逆鱗に触れ、屋敷に追い出されそうになったのだ。
どうにか許してもらったオデットだが、ついに我慢の限界を迎え、カミーユとの離婚を決意。
一方、妻の計画など知らずにカミーユは……。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
冤罪による婚約破棄を迫られた令嬢ですが、私の前世は老練の弁護士です
知見夜空
恋愛
生徒たちの前で婚約者に冤罪による婚約破棄をされた瞬間、伯爵令嬢のソフィ―・テーミスは前世を思い出した。
それは冤罪専門の老弁護士だったこと。
婚約者のバニティ君は気弱な彼女を一方的に糾弾して黙らせるつもりだったらしいが、私が目覚めたからにはそうはさせない。
見た目は令嬢。頭脳はおじ様になった主人公の弁論が冴え渡る!
最後にヒロインのひたむきな愛情も報われる逆転に次ぐ逆転の新感覚・学内裁判ラブコメディ(このお話は小説家になろうにも投稿しています)。
本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす
初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』
こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。
私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。
私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。
『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」
十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。
そして続けて、
『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』
挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。
※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です
※史実には則っておりませんのでご了承下さい
※相変わらずのゆるふわ設定です
※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません
私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。
夢草 蝶
恋愛
子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。
しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。
心がすり減っていくエレインは、ある日思った。
──もう、いいのではないでしょうか。
とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる