55 / 96
それでも俺が好きだと言ってみろ.55
しおりを挟む
真は泣いて少しスッキリしたのか、無理して笑顔を作った。
「じゃあ、僕は帰るよ・・・。僕の使ってたものは適当に捨てといて・・・。それじゃあ・・・、元気で。仕事・・・、あんまり無理しないようにね」
「・・・ありがとう」
真は最後まで真らしく、いい人のまま去って行った。
真を玄関で見送り、寝室に行くと例の引き出しの中を見た。
どうして桜庭はこんなことをしたのだろう?
なぜコンドームと一緒に袋を捨てなかったのだろう?
うっかり?それともわざと?
考えても分かるはずは無かった。
録画のままになっていたスマホを停止した。
消去しようかと思ったが、桜庭に色々と説明するより、この映像を見せるのが一番手っ取り早い。
和香はそのまま保存しておくことにした。
真に対して申し訳ないという気持ちがないわけじゃない。
だけど、今は、それを隠しているという罪悪感から解放された。
そのことの方が和香にとっては重要だった。
本当にひどい女だ。
桜庭と過ごすようになって、何だか自分は随分変わってしまった様に思う。
それとも、元々自分はそういう人間だったのだろうか。
真が帰った部屋で和香はひとりホッとした気分でソファに座っていた。
月曜の朝、出社すると、先週までのことを思えば随分顔色の良くなった三村さんが機嫌よく挨拶してきた。
「いやあ、一時はどうなることかと思ったけど、もう山は越えたし、今週はずっと定時で帰れそうだよ」
「はい、よかったです」
「まあ、時々こういうこともありながら、皆で協力して何とかやっていこう」
そう言うと、三村さんは鼻歌を歌いながら、引き取りに来てもらう段ボール箱の仕分けを始めた。
いつも通りの一日が始まった。
まだまだ件数は通常より多いが、ヘルプの人たちがいるというのは本当に心強かった。
桜庭のことを除けば、個性的な人もいるけれど、本当にいい職場だ。
しかし、そんな桜庭はこの職場にとっては大切な人材で・・・。
昼休みになり、和香と猪俣はいつものように自席で弁当を広げていた。
「いやあ、久しぶりの二連休!竹内さんはリフレッシュできた?」
土曜はまだしも、昨日は散々な夜をすごしたばかりだ。
とてもリフレッシュとは言い難い。
「まあ、ほどほどに・・・。猪俣君はどうだった?」
「僕はね、土曜はたっぷり眠って、日曜は久しぶりに科学館に行ったんだ。今、絶滅危惧種の企画展やっててね、絶対行きたかったから、行けてよかった~」
「そ、そうなんだ、よかったね」
まるで少年のような猪俣には、本当に癒される。
自分の嫌な部分をこれでもかと思い知らされたばかりなだけに、猪俣の無邪気さが和香の心に染みわたる。
午後からの仕事も順調に進み、三村さんが言っていたとおり何と定時の七時に帰れることになった。
「本当によかったね、竹内さん。これで睡眠はたっぷり取れるし、お弁当もちゃんと作れる」
「そ、そうだね・・・」
何て健全な・・・。
和香の頭の中は今日は桜庭からの誘いがあるのだろうか、という不謹慎極まりないことでいっぱいだというのに。
「じゃあ、僕は帰るよ・・・。僕の使ってたものは適当に捨てといて・・・。それじゃあ・・・、元気で。仕事・・・、あんまり無理しないようにね」
「・・・ありがとう」
真は最後まで真らしく、いい人のまま去って行った。
真を玄関で見送り、寝室に行くと例の引き出しの中を見た。
どうして桜庭はこんなことをしたのだろう?
なぜコンドームと一緒に袋を捨てなかったのだろう?
うっかり?それともわざと?
考えても分かるはずは無かった。
録画のままになっていたスマホを停止した。
消去しようかと思ったが、桜庭に色々と説明するより、この映像を見せるのが一番手っ取り早い。
和香はそのまま保存しておくことにした。
真に対して申し訳ないという気持ちがないわけじゃない。
だけど、今は、それを隠しているという罪悪感から解放された。
そのことの方が和香にとっては重要だった。
本当にひどい女だ。
桜庭と過ごすようになって、何だか自分は随分変わってしまった様に思う。
それとも、元々自分はそういう人間だったのだろうか。
真が帰った部屋で和香はひとりホッとした気分でソファに座っていた。
月曜の朝、出社すると、先週までのことを思えば随分顔色の良くなった三村さんが機嫌よく挨拶してきた。
「いやあ、一時はどうなることかと思ったけど、もう山は越えたし、今週はずっと定時で帰れそうだよ」
「はい、よかったです」
「まあ、時々こういうこともありながら、皆で協力して何とかやっていこう」
そう言うと、三村さんは鼻歌を歌いながら、引き取りに来てもらう段ボール箱の仕分けを始めた。
いつも通りの一日が始まった。
まだまだ件数は通常より多いが、ヘルプの人たちがいるというのは本当に心強かった。
桜庭のことを除けば、個性的な人もいるけれど、本当にいい職場だ。
しかし、そんな桜庭はこの職場にとっては大切な人材で・・・。
昼休みになり、和香と猪俣はいつものように自席で弁当を広げていた。
「いやあ、久しぶりの二連休!竹内さんはリフレッシュできた?」
土曜はまだしも、昨日は散々な夜をすごしたばかりだ。
とてもリフレッシュとは言い難い。
「まあ、ほどほどに・・・。猪俣君はどうだった?」
「僕はね、土曜はたっぷり眠って、日曜は久しぶりに科学館に行ったんだ。今、絶滅危惧種の企画展やっててね、絶対行きたかったから、行けてよかった~」
「そ、そうなんだ、よかったね」
まるで少年のような猪俣には、本当に癒される。
自分の嫌な部分をこれでもかと思い知らされたばかりなだけに、猪俣の無邪気さが和香の心に染みわたる。
午後からの仕事も順調に進み、三村さんが言っていたとおり何と定時の七時に帰れることになった。
「本当によかったね、竹内さん。これで睡眠はたっぷり取れるし、お弁当もちゃんと作れる」
「そ、そうだね・・・」
何て健全な・・・。
和香の頭の中は今日は桜庭からの誘いがあるのだろうか、という不謹慎極まりないことでいっぱいだというのに。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる