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ホストと女医は診察室で.64

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 聖夜に色っぽい眼差しを向けられて、慶子はそれだけで腰が砕けそうになる。



「あ、あの、ええっと…」



 慶子はこの期に及んでもまだセックスを恥ずかしく思ってしまう。

 いい加減に慣れても良さそうなものなのに…。

 いい歳をした自分がいつまでも恥ずかしがってる方が逆に恥ずかしいのに…。

 しかし、そんな慶子の反応が聖夜の心をくすぐってしまうのだから、夫婦というのはよくできたものだと言えるのかもしれない。



「もう、話はいいから…」

 慶子はいよいよそのキングサイズのベッドがある寝室に連れて行かれた。



「慶子…好きだよ…愛してる」

 聖夜に耳元で囁かれれば、慶子の内側から熱いものがどうしようもないくらいに込み上げてくる。



「わ、私も…あ、愛して…ます」

 つっかえて、うまく言えないと分かっていても言わずにはいられない。



「嬉しい…」

 聖夜にそんな風に言ってもえるなんて、絶対自分の方が嬉しいのに…。



 そんなことで優劣をつけても意味がないけれど、慶子にとって聖夜が自分のことを愛していると言ってくれることは奇跡のようだった。

 聖夜にしてみれば、慶子に対して同じようなことを感じているのだからお互い様なのだけれど。



 聖夜が慶子の服に手をかけると、慶子はいつも以上に恥ずかしそうにその手を拒んだ。

「どうしたの?怖い?」



 いつまでたっても慣れない自分に飽きもせず、そんな優しい言葉をかけてくれる聖夜に、慶子は涙が出そうになる。

 しかし、慶子が拒んだ理由は怖いからではなかった。

 慶子は少し顔を赤らめて、ふるふると横に首を振った。



「いいの?」

 慶子は今度は縦に首を振る。

 それでも、いざ聖夜が服を脱がそうとすると、その手を慶子の手が掴んでしまう。



「どうしたいの?」

 聖夜はクスクスと笑いながら慶子に尋ねた。



「初夜はおあずけ?」

 聖夜にそう言われ、慶子はギョッとした顔になる。



「あははは!」

 聖夜はついには腹を抱えて笑った。



「わ、笑わないでください…」

 慶子は再び顔を真っ赤にした。



「ごめんごめん、で、本当はどうしたいの?」

 私が言うの…?

 聖夜は黙ったまま慶子の顔を眺めている。



「しょ、初夜…よろしくお願いします」

「あははははは!」

 聖夜は慶子をからかうつもりなどないのだが、慶子の反応が予想を超えてくるため思わず笑ってしまうのだった。



「孝輔さん!!」

 真剣に答えたのに…笑うなんて…ひどい。

 聖夜とは裏腹に慶子は少し泣きそうになった。



「じゃあ、服を脱がせるの止めないでね」

 聖夜はまだ少しクスクスと笑っている。



「わ、分かりました」

 そう言う慶子の表情は真剣そのものだ。
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