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ホストと女医は診察室で.55

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 聖夜はそんな言葉を聞いても決して驚いた表情を見せることはなかった。

 これも全てホスト時代に鍛えた接客術のおかげだ。

 しかし、心の中はかなりパニックに陥っていた。



「そ、その…、慶子さんの身体は大丈夫なの?」

 聖夜はやはりそのことが気がかりだった。



「これでも医者ですもの…。そういうことがあってもちゃんと自分で処置しましたから大丈夫です」

「そうですか…。俺が謝っても仕方がないけど、和希の代わりに謝らせてください。本当に申し訳ありませんでした」

 聖夜は整えた髪が乱れるのも構わず、必死で頭を下げた。



「や、やめてください…、聖夜さんに責任はありませんから、本当に、頭をあげてください」

 慶子は聖夜の身体を必死で揺さぶった。



 何か月振りに触れたのだろう…。

 お互いニアミスのように近づくことはあっても、直接その肌に触れはしなかった。

 しかしこうして肌と肌のぬくもりを感じてしまうと、自分の中に閉じ込めていたものがとても止めることが出来ないほどの勢いで湧き上がってくるのが分かる。



 聖夜はゆっくりと身体を起こすと慶子の手を取り、その瞳をじっと見つめた。

 慶子の瞳の中にも自分と同じ種類のものがあることを聖夜は一瞬で見て取った。



 互いに見つめ合ったまましばらく動けなかった。

 しかし身体の奥からどうしようもなく突き上げてくる欲望に二人とも抗えないのは分かっていた。

 見つめ合えば見つめ合うほど、それは確信に変わっていく。



 駄目…、絶対…、駄目なのに…。

 そう思っても、もう自分は抵抗できないと分かっていた。

 聖夜は慶子の身体を診察用のベッドに押し倒した。



「や、やめてください…」

 口だけが勝手にそんなことを言っている。

 もう止まらないのに…。

 止めたくないのに…。



 聖夜はささやかな抵抗をする慶子の口をふさいだ。

「んんっ、んっ…」

 止めないと…。

 止めなくちゃだめなのに…。

 慶子は弱々しい理性の訴えに何とかしがみつこうとした。



 しかし、聖夜の舌が歯列を割って侵入してきた瞬間、涙が溢れて、ためらうことなくそれを受け入れていた。

 あ、ああ…、聖夜さん…。

 慶子の心は掻き乱された。

 こんなにも聖夜を求めていた…。

 キスを与えらえただけで、震えた…。



 それは聖夜も同じだった。

 事業が軌道に乗ったら、などとのん気に構えているつもりだった。

 だが、和希が慶子を傷つけたことが分かった瞬間、頭に血が上った。



 自分なら少しくらい時間が経過しても、慶子をものにする自信があった。

 そしてそれまでは放っておいても平気だと高を括っていた。

 だが、慶子が誰かに奪われそうになった途端、自分がそんなに余裕のある男ではないことを思い知った。

 本当はすぐにでも自分のものにしたかったのだ。

 ただ、自分の小さなプライドが女の尻を追いかけることを許さなかっただけだ。



「んっ、んっ…、んんっ…」

 いきおいキスは激しくなる。
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