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ホストと女医は診察室で.53
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それでも母親の息子を思う気持ちだけは受け取ってきた。
だが、和希の様に母親に甘える気はない。
自分が一人前になって自分の足で立てるようになることが、聖夜なりの恩返しのつもりだ。
「また連絡する」
そう言って聖夜は電話を切った。
あいつ何やらかしたんだ?
聖夜から見た和希と言えば、堅実で冒険などしない代わりに面白味のない人生を送っているという印象だった。
聖夜は和希にさっそく電話をかけてみた。
しかし和希は電話に出ることなく留守番電話サービスに切り替わってしまった。
『まだ電話する』とメッセージを残し、聖夜は電話を切った。
聖夜もいつまでもこんなことに時間をかけている暇はなかった。
また明日かけてみるか…。
聖夜はその日も深夜まで一人事務所に残って仕事をこなした。
聖夜はあれから何度も和希に電話をしてみたが、和希は一向に電話に出ることはなかった。
もちろん和希からの電話もない。
この間聖夜から電話した時は、あんなに喜んでいた和希が、聖夜からの着信履歴を見てかけてこないのはどう考えても不自然だ。
やはり和希に何かがあったと考えざるを得なくなる。
だが、本人と話せない状態ではどうすることもできない。
しかし、今の聖夜にはとにかく時間がなかった。
和希のことは気になりつつも、連絡がとれないまま時間だけが過ぎていった。
慶子のところを訪れてから一週間が経った。
「社長、町田先生に確認してもらいたい書類があるので僕今日行ってきます」
サロン事業専任のスタッフである門脇が忙しそうに手を動かしながら聖夜に話しかけてきた。
普通だったらそういうものはスタッフに任せている。
しかし、それが慶子に会える正当な口実だと思うと聖夜はじっとしていられなくなる。
本当は自ら動いている時間などないのだが、それを知ってしまった今、もう我慢などできるはずがなかった。
「俺も先生と話したいことあるから、ついでにその書類持ってくわ」
「え、いいんですか、社長今日もスケジュールぱんぱんですよ?」
「いいの、いいの、そのぐらいの時間は作れるから」
昼飯は車の中で済まして、今日下見に行くはずだったところは明日にずらそう。
自分がこんな行動をするなんて自分でも信じられない。
だけど、慶子はこういう用件でもない限り会ってはくれないだろう。
ちょうど今日は土曜日だ。
聖夜は門脇から書類を受け取ると、午後からは休みになるはずの慶子のクリニックに向かって車を飛ばした。
インターフォンを押すと既に二階の住居スペースに移動していた慶子が直接応答した。
「突然来ちゃってすみません。ちょっと確認して欲しい書類があったんで…」
聖夜は書類をインターフォンのモニターの前にひらひらとかざした。
ちゃんと証拠を見せないと、ガードの硬い慶子は信じないと思ったのだ。
「本当に突然ですね…。今度からはちゃんと事前に連絡をください。ちょっと待っててください、今下に行きますから」
だが、和希の様に母親に甘える気はない。
自分が一人前になって自分の足で立てるようになることが、聖夜なりの恩返しのつもりだ。
「また連絡する」
そう言って聖夜は電話を切った。
あいつ何やらかしたんだ?
聖夜から見た和希と言えば、堅実で冒険などしない代わりに面白味のない人生を送っているという印象だった。
聖夜は和希にさっそく電話をかけてみた。
しかし和希は電話に出ることなく留守番電話サービスに切り替わってしまった。
『まだ電話する』とメッセージを残し、聖夜は電話を切った。
聖夜もいつまでもこんなことに時間をかけている暇はなかった。
また明日かけてみるか…。
聖夜はその日も深夜まで一人事務所に残って仕事をこなした。
聖夜はあれから何度も和希に電話をしてみたが、和希は一向に電話に出ることはなかった。
もちろん和希からの電話もない。
この間聖夜から電話した時は、あんなに喜んでいた和希が、聖夜からの着信履歴を見てかけてこないのはどう考えても不自然だ。
やはり和希に何かがあったと考えざるを得なくなる。
だが、本人と話せない状態ではどうすることもできない。
しかし、今の聖夜にはとにかく時間がなかった。
和希のことは気になりつつも、連絡がとれないまま時間だけが過ぎていった。
慶子のところを訪れてから一週間が経った。
「社長、町田先生に確認してもらいたい書類があるので僕今日行ってきます」
サロン事業専任のスタッフである門脇が忙しそうに手を動かしながら聖夜に話しかけてきた。
普通だったらそういうものはスタッフに任せている。
しかし、それが慶子に会える正当な口実だと思うと聖夜はじっとしていられなくなる。
本当は自ら動いている時間などないのだが、それを知ってしまった今、もう我慢などできるはずがなかった。
「俺も先生と話したいことあるから、ついでにその書類持ってくわ」
「え、いいんですか、社長今日もスケジュールぱんぱんですよ?」
「いいの、いいの、そのぐらいの時間は作れるから」
昼飯は車の中で済まして、今日下見に行くはずだったところは明日にずらそう。
自分がこんな行動をするなんて自分でも信じられない。
だけど、慶子はこういう用件でもない限り会ってはくれないだろう。
ちょうど今日は土曜日だ。
聖夜は門脇から書類を受け取ると、午後からは休みになるはずの慶子のクリニックに向かって車を飛ばした。
インターフォンを押すと既に二階の住居スペースに移動していた慶子が直接応答した。
「突然来ちゃってすみません。ちょっと確認して欲しい書類があったんで…」
聖夜は書類をインターフォンのモニターの前にひらひらとかざした。
ちゃんと証拠を見せないと、ガードの硬い慶子は信じないと思ったのだ。
「本当に突然ですね…。今度からはちゃんと事前に連絡をください。ちょっと待っててください、今下に行きますから」
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