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ホストと女医は診察室で.52
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聖夜はそのまま事務所に戻ると、片付けなければならない山の様な書類と格闘していた。
慶子のことは焦らずじっくりと時間をかけて自分のテリトリーへと入れてしまおう。
少しずつ少しずつ囲い込んで、気づいた時には逃げられない場所にいるように仕向けるのだ。
しかし気がつくと自分の方が彼女のことを考えて手元がお留守になっていた。
自分らしくない…。
聖夜はナンバーワンだった自分がこんな風にコントロールが効かなくなってしまうことには正直戸惑っていた。
俺も普通の男だったか…。
慶子さんか…面白い女性だ…。
それにしても…綺麗になった…。
和希が好きになるのも不思議じゃないな。
物思いに耽っていると机の上の携帯が鳴った。
画面には母美也子の文字が…。
うへぇ、面倒くさいな…。
だけど、出なければ出るまでしつこくかけてくるのが母のやり方だ。
「もしもし、何?今仕事中なんだけど」
「ああ、ごめんなさいね。だけど、ちょっと気になることがあって。あなたが何か知ってたら教えてもらいたくて」
「それで?」
「和希が見合いをしたことは知ってるわよね?」
和希は何でも親に話す奴だ。
この間自分が電話をした時のことも話したのだろう。
だが、その見合がどうしたというのだろう?
今日会った感じではまだ結婚がどうのという段階になっているとは考えづらい。
慶子は今仕事のことで一杯一杯という印象で、浮かれた様子は微塵もなかったから。
「ああ、したって話だけは聞いたけど、それがどうしたんだよ」
「それがね、和希の話ではついこの間までは順調にお付き合いしてるってことだったの。だけど、最近になって急にお相手のお母さまから連絡があって、この話は無かったことにしてくださいって。和希に何かあったのって聞いても何もないの一点張りだし…、あなたになら何か話してないかと思って…」
見合が破談…、それも急に?
赤の他人の話なら、くだらないの一言で済ますようなことだ。
しかし、和希はまだしもその相手は慶子だ。
気にならないと言ったら嘘になる。
「いや、何も聞いてないな。だけど、向こうから断られたんならそれで終わりだろ?」
「そうなんだけど、和希の様子がこのところおかしいのよ。仕事中も上の空で、ミスばかりしてるらしいの…。私が一番気になるのは…、何て言うのかしら、少し自暴自棄になってるように感じるのよ。いったいどうしたのかしらね。ここ最近であったことなんて、お見合いくらいしか思いつかなくてね…」
「ふうん…」
和希もいい大人だと、放っておくこともできた。
だけど、聖夜が気になるのは慶子のことだ。
慶子の口からは聞けないことも、和希からなら聞けるかもしれない。
「今度俺から聞いといてやるよ。まあ、あいつが俺に話してくれればだけど…」
「ありがとう…、駄目でもいいわ。孝輔がこうして家のことを気にかけてくれるなら」
美也子は愛情深い母親だ。
両親の意に背いて自分の好きな道に進んだ孝輔を黙って送り出してくれた。
そのあとも孝輔の体を心配して、季節のフルーツや野菜を送ってきてくれる。
正直自分で料理などしない孝輔は送られてきたものは店に持っていって配ることくらいしかできなかったけれど。
慶子のことは焦らずじっくりと時間をかけて自分のテリトリーへと入れてしまおう。
少しずつ少しずつ囲い込んで、気づいた時には逃げられない場所にいるように仕向けるのだ。
しかし気がつくと自分の方が彼女のことを考えて手元がお留守になっていた。
自分らしくない…。
聖夜はナンバーワンだった自分がこんな風にコントロールが効かなくなってしまうことには正直戸惑っていた。
俺も普通の男だったか…。
慶子さんか…面白い女性だ…。
それにしても…綺麗になった…。
和希が好きになるのも不思議じゃないな。
物思いに耽っていると机の上の携帯が鳴った。
画面には母美也子の文字が…。
うへぇ、面倒くさいな…。
だけど、出なければ出るまでしつこくかけてくるのが母のやり方だ。
「もしもし、何?今仕事中なんだけど」
「ああ、ごめんなさいね。だけど、ちょっと気になることがあって。あなたが何か知ってたら教えてもらいたくて」
「それで?」
「和希が見合いをしたことは知ってるわよね?」
和希は何でも親に話す奴だ。
この間自分が電話をした時のことも話したのだろう。
だが、その見合がどうしたというのだろう?
今日会った感じではまだ結婚がどうのという段階になっているとは考えづらい。
慶子は今仕事のことで一杯一杯という印象で、浮かれた様子は微塵もなかったから。
「ああ、したって話だけは聞いたけど、それがどうしたんだよ」
「それがね、和希の話ではついこの間までは順調にお付き合いしてるってことだったの。だけど、最近になって急にお相手のお母さまから連絡があって、この話は無かったことにしてくださいって。和希に何かあったのって聞いても何もないの一点張りだし…、あなたになら何か話してないかと思って…」
見合が破談…、それも急に?
赤の他人の話なら、くだらないの一言で済ますようなことだ。
しかし、和希はまだしもその相手は慶子だ。
気にならないと言ったら嘘になる。
「いや、何も聞いてないな。だけど、向こうから断られたんならそれで終わりだろ?」
「そうなんだけど、和希の様子がこのところおかしいのよ。仕事中も上の空で、ミスばかりしてるらしいの…。私が一番気になるのは…、何て言うのかしら、少し自暴自棄になってるように感じるのよ。いったいどうしたのかしらね。ここ最近であったことなんて、お見合いくらいしか思いつかなくてね…」
「ふうん…」
和希もいい大人だと、放っておくこともできた。
だけど、聖夜が気になるのは慶子のことだ。
慶子の口からは聞けないことも、和希からなら聞けるかもしれない。
「今度俺から聞いといてやるよ。まあ、あいつが俺に話してくれればだけど…」
「ありがとう…、駄目でもいいわ。孝輔がこうして家のことを気にかけてくれるなら」
美也子は愛情深い母親だ。
両親の意に背いて自分の好きな道に進んだ孝輔を黙って送り出してくれた。
そのあとも孝輔の体を心配して、季節のフルーツや野菜を送ってきてくれる。
正直自分で料理などしない孝輔は送られてきたものは店に持っていって配ることくらいしかできなかったけれど。
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