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ホストと女医は診察室で.37
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真面目だけど、お酒を飲むと少しおっちょこちょいな面もある。
そんな風に慶子のことを想ってみても今の自分ではどうすることもできないのに…。
慶子には和希がお似合いだ。
だけど、心の奥では小さな火種がくすぶったまま消えていないことも分かっていた。
ただ、今はそれにも目をつぶってただ見過ごすことしか出来ないことも分かっている。
来月末には一号店をオープンさせる予定だ。
慶子のことを考えている暇などないのに、考えないようにすればするほど、彼女の顔がチラついてしかたなかった。
慶子と和希はお互いの都合を合わせて、月に一回のペースで会うことにしていた。
慶子はあまり乗り気ではないのだが、和希が積極的に誘ってくるためそういうところに落ち着いたという感じだ。
慶子はあれからも休みの日には自分磨きと称してエステに通っていた。
更にエステで紹介されたネイルにもハマり、業務に支障のない程度のものを施してもらっている。
休みの日にこういう予定を入れるようにしたのは、やはり聖夜のことがあってからだ。
暇な時間ができるとやっぱり聖夜のことを考えてしまう。
もう会うこともないと分かっていても、そればかりはどうしようもなかった。
だから、そんなことを考える時間がないように、そしてどうせなら自分の仕事にプラスになるようにと、エステやネイルに通っているのだ。
慶子にしてみればそんな理由なのだが、会うたびに綺麗になっていく慶子のことを和希は複雑な思いで見つめていた。
見合の相手としてはお互いなしと公言してしまった。
そして友達としてなら付き合えるということでスタートしたのが今の二人の関係だ。
それなのに、自分ばかりが女性としての慶子にどんどん惹かれてしまっている…。
友達だから会ってくれている彼女に惹かれているなどと言えるはずもなく、和希は美しくなっていく慶子のことを褒めることすらできなかった。
兄である孝輔とのその後の関係も気になるが、本人を前にしては直接尋ねることが出来ないでいた。
慶子が孝輔に惹かれていることを知ってしまったら、自分が平常心でいられる気がしなかったから…。
数年前に家を出ていってしまった兄だが、慶子と出会ってからはその動向を以前よりも正確に把握しておきたい衝動に駆られた。
それは弟と兄という関係から来ている部分もあれば、男として慶子にどう思われるかということとも関係している。
幸いホストクラブやホストたちはSNSで多くの情報を流している。
SNSで自分の日常を切り売りしてくれているおかげで、最近の動向が手に取る様に分かる。
ここでもやはり兄はすごいと思わされる羽目になるのだが、孝輔が近々自分の店を出すということを知った。
慶子は知っているだろうか…。
もし知っているのであれば慶子はやはり兄に近い存在である可能性が高くなる。
「久しぶり。どう最近は忙しいですか?」
今日は一ヶ月に一度の食事会の日だ。
益々美しくなった慶子に、和希は心臓の高鳴りを抑えることができない。
うっかりすると声が上ずってしまいそうだ。
「ええ、おかげさまで。またスタッフを増やしたの」
「へえ、すごいですね。慶子さんはやり手なんだな」
「そんなわけないじゃない。でもね、何だか自分がエステやネイルに行き始めて、余計に患者さんの気持ちが分かる様になった気がするの」
慶子はお気に入りのネイルサロンで手入れしてもらった爪を眺めながら言った。
そんな風に慶子のことを想ってみても今の自分ではどうすることもできないのに…。
慶子には和希がお似合いだ。
だけど、心の奥では小さな火種がくすぶったまま消えていないことも分かっていた。
ただ、今はそれにも目をつぶってただ見過ごすことしか出来ないことも分かっている。
来月末には一号店をオープンさせる予定だ。
慶子のことを考えている暇などないのに、考えないようにすればするほど、彼女の顔がチラついてしかたなかった。
慶子と和希はお互いの都合を合わせて、月に一回のペースで会うことにしていた。
慶子はあまり乗り気ではないのだが、和希が積極的に誘ってくるためそういうところに落ち着いたという感じだ。
慶子はあれからも休みの日には自分磨きと称してエステに通っていた。
更にエステで紹介されたネイルにもハマり、業務に支障のない程度のものを施してもらっている。
休みの日にこういう予定を入れるようにしたのは、やはり聖夜のことがあってからだ。
暇な時間ができるとやっぱり聖夜のことを考えてしまう。
もう会うこともないと分かっていても、そればかりはどうしようもなかった。
だから、そんなことを考える時間がないように、そしてどうせなら自分の仕事にプラスになるようにと、エステやネイルに通っているのだ。
慶子にしてみればそんな理由なのだが、会うたびに綺麗になっていく慶子のことを和希は複雑な思いで見つめていた。
見合の相手としてはお互いなしと公言してしまった。
そして友達としてなら付き合えるということでスタートしたのが今の二人の関係だ。
それなのに、自分ばかりが女性としての慶子にどんどん惹かれてしまっている…。
友達だから会ってくれている彼女に惹かれているなどと言えるはずもなく、和希は美しくなっていく慶子のことを褒めることすらできなかった。
兄である孝輔とのその後の関係も気になるが、本人を前にしては直接尋ねることが出来ないでいた。
慶子が孝輔に惹かれていることを知ってしまったら、自分が平常心でいられる気がしなかったから…。
数年前に家を出ていってしまった兄だが、慶子と出会ってからはその動向を以前よりも正確に把握しておきたい衝動に駆られた。
それは弟と兄という関係から来ている部分もあれば、男として慶子にどう思われるかということとも関係している。
幸いホストクラブやホストたちはSNSで多くの情報を流している。
SNSで自分の日常を切り売りしてくれているおかげで、最近の動向が手に取る様に分かる。
ここでもやはり兄はすごいと思わされる羽目になるのだが、孝輔が近々自分の店を出すということを知った。
慶子は知っているだろうか…。
もし知っているのであれば慶子はやはり兄に近い存在である可能性が高くなる。
「久しぶり。どう最近は忙しいですか?」
今日は一ヶ月に一度の食事会の日だ。
益々美しくなった慶子に、和希は心臓の高鳴りを抑えることができない。
うっかりすると声が上ずってしまいそうだ。
「ええ、おかげさまで。またスタッフを増やしたの」
「へえ、すごいですね。慶子さんはやり手なんだな」
「そんなわけないじゃない。でもね、何だか自分がエステやネイルに行き始めて、余計に患者さんの気持ちが分かる様になった気がするの」
慶子はお気に入りのネイルサロンで手入れしてもらった爪を眺めながら言った。
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