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ホストと女医は診察室で.12

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「さて、今日はどうするかな~」

 今はまだ4月の中旬で、外はまだ暗い。

「とりあえず一度寝よう…。あとは起きてから考えよう…」

 慶子はパジャマに着替えるとベッドに潜り込んだ。



 慶子を見送ったあと、聖夜はホテルをチェックアウトした。

 それにしても、今時まだあんな箱入り娘って本当にいるんだな。

 普通、教師や医師、弁護士、警察官など仕事柄きちんとしていることを期待される職業に就いている場合、実生活が歪んでいることが多い。 

 慶子の場合はそういうこともなく、すくすくと真っすぐな良い子のまま育った稀なケースなのだろう。



「俺の言った事も疑わずに、全部信じてたもんな…」

 聖夜のかわりに付いた里見とのんびり話しながら飲んでいたワインはかなり強い酒だった。

 慶子は自分は酔った事がないと思っていたのは、実はチューハイやビールなどアルコール度数が低い酒しか飲んだことがなかったからだったのだ。

 喉ごしの良いスパークリングワインをチューハイと同じペースで飲んでしまったため、完全に酔っぱらってしまったのだ。



 ただ、慶子は聖夜が言ったようなことは一言も言っていなかった。

 ホテルに連れて来たのは聖夜が勝手に行った事だ。

 それはふとした好奇心からだった。

 真面目一辺倒の先生が夜になったらどんな姿を見せるのか。

 聖夜は無性に慶子のことが知りたくなったのだ。



 同伴やアフターなどしなくとも、聖夜はナンバーワンとして店に君臨している。

 だから、自分でも自分の行動が意外だった。

 出来心から彼女の初めてを奪うことになってしまったけれど、自分が初めての相手なら女性はきっと幸せに違いない。

 そんな自惚れたことを考えながら、聖夜もひと眠りするためベッドに体を沈めた。



 かなり飲んでいたこと、そして初めてのセックスで疲れていたのだろう。

 慶子が目覚めたのはもう夕方近くだった。

「やだ、何にもしないで一日終わっちゃった。美容院に行こうと思ってたのに~」

 明日からはまた時間に追われる日常が始まるのだ。



「喉が渇いた…」

 慶子はキッチンに行って水を飲むと、リビングのソファに腰をおろしてテレビをつけた。

 ふとスマホに目をやるとメッセージが届いていた。

『先生、体大丈夫?早く会いたいな。次来るときは連絡してね。俺、シフト入れますから』

「そっか、私お金払ってないんだった」



 お金を払いに行くという名目があるけれど、本当は聖夜に会えることを楽しみにしている自分がいる。

 やだ、聖夜さんはホストとして優しくしてくれてるだけなのに、私ったらバカだな…。

 慶子は自嘲気味に笑うと、服に着替えて買い物に出かけた。

 お腹が空いて何か食べようと思ったけれど、冷蔵庫の中は空っぽだったから。
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