5 / 67
ホストと女医は診察室で.05
しおりを挟む
聖夜はフッと笑顔で答えた。
こんなの営業スマイルだ。
頭では分かっていても、そんな風に自分に関心を持ってもらうことに慣れていない慶子はそれだけでフワフワと落ち着かない気分になっていることに戸惑う。
「じゃあ今夜は飲んでも大丈夫だね」
「え、ええ、まあ…」
「何にする?」
聖夜はメニューを取り出した。
お酒をおいしいと思ったことがない慶子には、どれを飲んでも一緒のことで、選ぶ時はいつも相手に合わせていた。
「俺、スパークリングワインが好きなんだけど、一緒に飲まない?」
なかなか選ぶことが出来ない慶子に、聖夜はスマートに対応してくれる。
何だか、別人みたい…。
病院に来るときのガラの悪い聖夜しか知らなかった慶子は、目の前にいるのが同一人物であることを中々受け入れることができないでいた。
「それでいいわ…」
運ばれてきたワインで乾杯して、慶子は一気に飲み干した。
「お、ピッチ早いね。無理しなくていいよ」
こんな優しいことも言えるんだ…。
慶子は男社会である医療の世界に入って以来、男性は常に競争相手であった。
当然女性だからといって優しくされることなど考えられない。
「ねえ、先生。どんなタイプが好き?」
聖夜は店のホストの写真がズラリと並んだお品書きの様なものを見せた。
ホストクラブというところは、普通は入店するとまずこの中から好みの男の子を選ぶらしい。
ただ、慶子は聖夜に招かれていたので、最初から聖夜がついているのだ。
しかし、聖夜は店のナンバーワンのため、次々と指名が入る。
そこで、代わりのホストが入るという仕組みらしい。
「え~っと」
選べと言われても、こんな風にズラリと並べられた中から男性を選んだ経験などない。
ここでも慶子はもたもたと迷ってしまう。
病院でテキパキと仕事をこなしている自分が本来の姿だと思っていたのに、違う環境に置かれるとこんなにも優柔不断になってしまうなんて…。
慶子は自分が情けなくなる。
「先生、ここは女の子のための店なんだから、もっと気楽にしてよ。ほら、この子なんかどう?」
女の子だなんて…、こんなおばさんつかまえて、ホストってホントにうまいこと言うんだから。
そう思いながらも、慶子はやっぱり嬉しいと思ってしまった。
慶子は現在三十二歳だ。
もう決して若いとは言われないけれど、完全なおばさんでもない年齢だ。
どちらにしても、慶子は自分に女性としての魅力があるなどとは今まで一度も思ったことが無い。
聖夜が勧めてくれたホストは、イケイケな感じではなく、癒し系の優しそうなタイプだった。
「じゃあ、その、里見くんでお願いします」
「分かった。また戻ってくるから、ちょっと待っててね」
聖夜はウィンクすると他の客の所へ行ってしまった。
代わりに入ってくれた里見くんは写真の印象のとおりで、顔はもちろん、声も優しくてすっかり癒されてしまった。
こんなの営業スマイルだ。
頭では分かっていても、そんな風に自分に関心を持ってもらうことに慣れていない慶子はそれだけでフワフワと落ち着かない気分になっていることに戸惑う。
「じゃあ今夜は飲んでも大丈夫だね」
「え、ええ、まあ…」
「何にする?」
聖夜はメニューを取り出した。
お酒をおいしいと思ったことがない慶子には、どれを飲んでも一緒のことで、選ぶ時はいつも相手に合わせていた。
「俺、スパークリングワインが好きなんだけど、一緒に飲まない?」
なかなか選ぶことが出来ない慶子に、聖夜はスマートに対応してくれる。
何だか、別人みたい…。
病院に来るときのガラの悪い聖夜しか知らなかった慶子は、目の前にいるのが同一人物であることを中々受け入れることができないでいた。
「それでいいわ…」
運ばれてきたワインで乾杯して、慶子は一気に飲み干した。
「お、ピッチ早いね。無理しなくていいよ」
こんな優しいことも言えるんだ…。
慶子は男社会である医療の世界に入って以来、男性は常に競争相手であった。
当然女性だからといって優しくされることなど考えられない。
「ねえ、先生。どんなタイプが好き?」
聖夜は店のホストの写真がズラリと並んだお品書きの様なものを見せた。
ホストクラブというところは、普通は入店するとまずこの中から好みの男の子を選ぶらしい。
ただ、慶子は聖夜に招かれていたので、最初から聖夜がついているのだ。
しかし、聖夜は店のナンバーワンのため、次々と指名が入る。
そこで、代わりのホストが入るという仕組みらしい。
「え~っと」
選べと言われても、こんな風にズラリと並べられた中から男性を選んだ経験などない。
ここでも慶子はもたもたと迷ってしまう。
病院でテキパキと仕事をこなしている自分が本来の姿だと思っていたのに、違う環境に置かれるとこんなにも優柔不断になってしまうなんて…。
慶子は自分が情けなくなる。
「先生、ここは女の子のための店なんだから、もっと気楽にしてよ。ほら、この子なんかどう?」
女の子だなんて…、こんなおばさんつかまえて、ホストってホントにうまいこと言うんだから。
そう思いながらも、慶子はやっぱり嬉しいと思ってしまった。
慶子は現在三十二歳だ。
もう決して若いとは言われないけれど、完全なおばさんでもない年齢だ。
どちらにしても、慶子は自分に女性としての魅力があるなどとは今まで一度も思ったことが無い。
聖夜が勧めてくれたホストは、イケイケな感じではなく、癒し系の優しそうなタイプだった。
「じゃあ、その、里見くんでお願いします」
「分かった。また戻ってくるから、ちょっと待っててね」
聖夜はウィンクすると他の客の所へ行ってしまった。
代わりに入ってくれた里見くんは写真の印象のとおりで、顔はもちろん、声も優しくてすっかり癒されてしまった。
0
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる