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ホストと女医は診察室で.04

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 さっきとはうって変わって、気迫がみなぎった慶子の物言いに、聖夜は一瞬驚いたものの、そのくらいでは気持ちを変えることは無い様だ。

「じゃあ、レントゲンとってもいいからさ、今度こそ本当にうちのホストクラブ来てくれない?これ交換条件」

 聖夜はそう言うと、いたずらっぽく笑った。



 医師として、そんな条件を飲んでいいのだろうか。

 新米の慶子にはわからなった。

 さらに、慶子は生粋のお嬢様育ちで、こういう輩と出会ったことも無い。

 どうあしらうのが正しいのか…?

 しかし、迷っている時間はない。

 順番を入れ替えた患者さんが待っているのだ。

 あせった慶子はつい言ってしまった。



「わかりました。あなたのホストクラブに行きますから、レントゲンを撮ってください」

「ヒャッホー!上得意様ゲットー!」

「ちょ、ちょっと、聖夜さん、いい加減にしてくださいよ」

「うっせえな、もとはと言えば、お前が医者に行こうなんて言うから悪いんだ。客の一人も取れないで帰れるかよ」

「うー…。なにかが間違ってると思うんすけど」
 


 今日は水曜日だ。

 翌日は休診日である。

 慶子は診察に影響があってはいけないだろうと、今日の診療が終わったら聖夜との約束どおり、彼の働くホストクラブ「ラビリンス」に行くと決めていた。
 
 今でも納得した訳ではないが、約束を破るのは性に合わないのだ。



 診療時間が終わり、住居部分である二階でワンピースに着替えると、タクシーを呼んだ。

 聖夜の勤める店は普段だったら絶対に立ち入らないような界隈にある。

 タクシーを店の前に横づけすると、慶子は大急ぎで店の入っているビルへと駆け込んだ。



「あ、あの、聖夜さんはいらっしゃいますか?」

 入り口に立っている男性に声をかけた。

「失礼ですが、お客様のお名前を教えていただけますか?」

 男性は丁寧に対応してくれた。

「町田慶子です」

「少々お待ちください」

 そう言うと男性は店の中に入っていった。



「先生~、ほんとに来てくれたんだ。嬉しいな~。さ、どうぞ」

 病院に来るときは、当たり前だがどこか具合が悪い状態だ。

 今日の聖夜は当然のことだが、髪形や服装はもちろんのこと、表情はいわゆるホストのそれになっていた。

 ナンバーワンだけのことはあって、こうして見てみるとやはりカッコイイんだな、などと慶子は妙に感心してしまった。

 席に案内され、聖夜と隣同士で座った。



「先生は普段はお酒飲むの?」

「い、いえ。翌日に響くといけませんから、平日はほとんど飲みません」

「じゃあ、休みの日は?」

「ま、まあ、たしなむ程度に…」

 そうは言ったものの、実は慶子は酒にはめっぽう強く、気持ちよく酔っぱらうという体験をしたことがない。

「明日は仕事休みなんだろ?」

「え、何で知ってるの」

「先生のこともっと知りたかったから」
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