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初恋がこじれにこじれて困ってます.20
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新入生が入って初めての登山ということもあって、今回は丹沢山地という初心者向けの山だ。
登り口である大倉から塔ノ岳へ向かい尊仏小屋で一泊し、丹沢山に登頂後、三山山荘に宿泊する予定だ。
「今回は予定通り3泊4日の登山です。まあ、慣れてる奴らにとっては簡単なコースだけど、できるだけ登山初心者に合わせて行動すること。で、新入生の世話係は一ノ瀬に任せるから。あとは、現地までは自由にやってくれ。」
そう言って腰をおろすと部長の笹本さんは子分である野田さんと楽しそうに話し始めた。
「はぁ、何で俺がそんなことしなきゃいけないんだよ。2年にやらせればいいだろう。」
「何言ってんだ、お前は最近何かとサボりが多すぎる。得意な山登りを任せるって言ってるだけだろう。何が不満なんだよ。誰もお前に勧誘しろとか言ってないだろう。俺は人を見て指示をだしてるだけだ。」
笹本部長の言い分に、瞬ちゃんは何も言い返せない。
「分かりましたよ。やればいいんでしょ、やれば。だけど、俺がやるんだから、俺のやり方でやらせてもらいますからね。」
「ばか、お前まさか、スパルタでやってやるとか考えてないよな。そんなことして誰か一人でも辞めたいって言ったら、罰ゲームじゃすまないからな。」
「ダラダラお遊びでピクニックなんかして何が楽しいんですか。山をなめてかかったら、楽しいものも楽しくなくなるんだよ。」
「まあまあ、二人ともそう熱くならないで。笹本さん、一ノ瀬さんはみんなのためを思って言ってるだけってわかってるんでしょ。」
「それは、そうだけど。こいつ、変なスイッチ入ると止まらねえからな。」
「そんな見境なく厳しくしませんよ。素人じゃあるまいし。ただ、俺は山登りをちゃんと楽しんでほしいだけなんです。」
部長を少し睨んだあと、瞬ちゃんはボソボソとつぶやくように言った。
「まあな、それは分かるけどな。」
とりあえず、ここで二人の言い合いは終わった。
初っ端からいきなり雲行きが怪しくなってしまった部長と副部長の間に入って、野田さんはちょっとお疲れのようだ。
部員にしてみれば、いつものことで、ああまたやってるよ位にしか思わなかったこのふたりのやり取りも、新入部員たちは本当のケンカが始まったのかとヒヤヒヤして見ていた。
「よかったー、取っ組み合いのけんかになるのかと思っちゃった。」
となりに座った真田日奈子が沙耶に話しかけてくる。
「ホントだね。やっぱりアウトドアのサークルだから血の気が多い人が多いのかな。」
「そうかもね。」
「ごめんね、心配しちゃうよね。だけど、あれいっつもやる風物詩みたいなもんだから、気にしないでね。」
野田さんがやってきて、しっかりフォローしてくれる。
「そうなんですか。あやうく騙されちゃうところでした。」
「まあ、ちょくちょくこんなことあるけど、基本二人は仲いいから、心配しないでね。」
ニコッと笑って、野田さんは席へ戻っていく。
「野田さんって、いい人だね。」
「そうだね。」
「でも、やっぱ一番カッコいいのは一ノ瀬さんだよねー。ちょっと怖そうだけど、身長高いし、めっちゃイケメンだし。」
「そ、そう?」
やっぱりっていうか、当然だよね。誰の目から見ても、瞬ちゃんはカッコイイよね。
「えー、反応うすっ。沙耶って結構理想が高いタイプ?」
「そ、そんなことないけど…。」
「もう、同期の女子二人しかいないんだから、もうちっと腹を割ってはなそうよ~。」
「ご、ごめん。ノリ悪くて。」
「いいけど、そのうち聞かせてね。沙耶の恋バナ。」
「わ、私、女子高だったから、そういうの全然なかったんだよね~。ハハッ、まだ彼氏できたことないんだ。」
「うそっ!そうなの~?沙耶みたいな可愛い子がほったらかされてるなんて、資源の無駄遣いだわ。」
「いや、現実、現実…、ハハッ。厳しいよね~。」
他愛もない話をしているうちに大倉に到着した。
「おーい、みんな降りたか。野田ー、点呼。」
「ほーい。」
野田さんが部員の名前を読み上げ、点呼終了。
「大丈夫です。全員います。」
登り口である大倉から塔ノ岳へ向かい尊仏小屋で一泊し、丹沢山に登頂後、三山山荘に宿泊する予定だ。
「今回は予定通り3泊4日の登山です。まあ、慣れてる奴らにとっては簡単なコースだけど、できるだけ登山初心者に合わせて行動すること。で、新入生の世話係は一ノ瀬に任せるから。あとは、現地までは自由にやってくれ。」
そう言って腰をおろすと部長の笹本さんは子分である野田さんと楽しそうに話し始めた。
「はぁ、何で俺がそんなことしなきゃいけないんだよ。2年にやらせればいいだろう。」
「何言ってんだ、お前は最近何かとサボりが多すぎる。得意な山登りを任せるって言ってるだけだろう。何が不満なんだよ。誰もお前に勧誘しろとか言ってないだろう。俺は人を見て指示をだしてるだけだ。」
笹本部長の言い分に、瞬ちゃんは何も言い返せない。
「分かりましたよ。やればいいんでしょ、やれば。だけど、俺がやるんだから、俺のやり方でやらせてもらいますからね。」
「ばか、お前まさか、スパルタでやってやるとか考えてないよな。そんなことして誰か一人でも辞めたいって言ったら、罰ゲームじゃすまないからな。」
「ダラダラお遊びでピクニックなんかして何が楽しいんですか。山をなめてかかったら、楽しいものも楽しくなくなるんだよ。」
「まあまあ、二人ともそう熱くならないで。笹本さん、一ノ瀬さんはみんなのためを思って言ってるだけってわかってるんでしょ。」
「それは、そうだけど。こいつ、変なスイッチ入ると止まらねえからな。」
「そんな見境なく厳しくしませんよ。素人じゃあるまいし。ただ、俺は山登りをちゃんと楽しんでほしいだけなんです。」
部長を少し睨んだあと、瞬ちゃんはボソボソとつぶやくように言った。
「まあな、それは分かるけどな。」
とりあえず、ここで二人の言い合いは終わった。
初っ端からいきなり雲行きが怪しくなってしまった部長と副部長の間に入って、野田さんはちょっとお疲れのようだ。
部員にしてみれば、いつものことで、ああまたやってるよ位にしか思わなかったこのふたりのやり取りも、新入部員たちは本当のケンカが始まったのかとヒヤヒヤして見ていた。
「よかったー、取っ組み合いのけんかになるのかと思っちゃった。」
となりに座った真田日奈子が沙耶に話しかけてくる。
「ホントだね。やっぱりアウトドアのサークルだから血の気が多い人が多いのかな。」
「そうかもね。」
「ごめんね、心配しちゃうよね。だけど、あれいっつもやる風物詩みたいなもんだから、気にしないでね。」
野田さんがやってきて、しっかりフォローしてくれる。
「そうなんですか。あやうく騙されちゃうところでした。」
「まあ、ちょくちょくこんなことあるけど、基本二人は仲いいから、心配しないでね。」
ニコッと笑って、野田さんは席へ戻っていく。
「野田さんって、いい人だね。」
「そうだね。」
「でも、やっぱ一番カッコいいのは一ノ瀬さんだよねー。ちょっと怖そうだけど、身長高いし、めっちゃイケメンだし。」
「そ、そう?」
やっぱりっていうか、当然だよね。誰の目から見ても、瞬ちゃんはカッコイイよね。
「えー、反応うすっ。沙耶って結構理想が高いタイプ?」
「そ、そんなことないけど…。」
「もう、同期の女子二人しかいないんだから、もうちっと腹を割ってはなそうよ~。」
「ご、ごめん。ノリ悪くて。」
「いいけど、そのうち聞かせてね。沙耶の恋バナ。」
「わ、私、女子高だったから、そういうの全然なかったんだよね~。ハハッ、まだ彼氏できたことないんだ。」
「うそっ!そうなの~?沙耶みたいな可愛い子がほったらかされてるなんて、資源の無駄遣いだわ。」
「いや、現実、現実…、ハハッ。厳しいよね~。」
他愛もない話をしているうちに大倉に到着した。
「おーい、みんな降りたか。野田ー、点呼。」
「ほーい。」
野田さんが部員の名前を読み上げ、点呼終了。
「大丈夫です。全員います。」
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