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初恋がこじれにこじれて困ってます.03
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「おーい、沙耶!」
直の声だ。部活が終わり、着替えを済ませてくるみと二人校門を出ようとしたところだった。まだ部活の最中だったらしくユニフォームのままだ。直は駆けてくると、息を整えた。沙耶は久しぶりに間近で見る直にドキンと胸が高鳴る。
直は、毎日の激しい練習のおかげで前より随分引き締まって見え、背も少しだけ伸びた様に感じられた。
(直が、なんだかカッコよくなってる~。)
沙耶は心の中で地団太をふんだ。やっぱり自分の知らないところで、直はどんどんカッコよくなっている。
(マズイ、これはマズいよ~。いや、本当はうれしいんだけどね。複雑だよ~。)
「どうしたの直、そんなにあわてて。」
沙耶は内心の動揺を見せないよう答えた。
「今度の日曜日地区予選があるんだけど、よかったら応援に来てくれないかなっと思って。」
「行く行く!」
「あ、もしよかったら、お友達も一緒にどう?女子が応援に来てくれると、みんなの士気もメチャクチャ上がると思うんだよね。」
直は持ち前の社交性でグイグイせまってくる。
「え、くるみはバスケなんて興味ないよね?」
沙耶はまさかくるみをライバル視する時が来るなんて考えたこともなかったけれど、いま確実にくるみの存在をここから消したいと思っている。
「そんなことないよ。私も行きたいな。」
(え、マジ?くるみ、スポーツ全般そんなに興味無いよね。テニスの練習だって、私より適当だし。やっぱ直狙い?友達と同じ男の子を取り合うのって最悪のパターンだよね。)
「よっしゃー。じゃあ、今度の日曜、市民体育館で10時からだから。よろしく!」
直はそう言い残すと、また体育館へと戻っていった。
「くるみ、無理しなくていいんだよ。」
「ううん、無理してないよ。実は、私の従兄がプロバスケット選手なんだ。だから、バスケの試合は結構見に行ったことあるよ。」
(そ、そんな話初めて聞いたよ。まあ、そんな話題普段しないから当たり前だけど。)
「へ、へえ、そうなんだ。」
「だからね私、これでもバスケには詳しいんだよ。ただ、やったことはないんだけどね。」
沙耶は、軽やかに笑うくるみを素直な気持ちで受け入れることがでなかった。
家に着いて部屋に入ると、沙耶は現実を再確認した。直は予想していたとおりカッコよくなってる。そして、人懐っこくて人気者の素質がある。瞬ちゃんの言った通り、直の彼女に幼馴染みの自分がなるのはかなりハードルが高く感じられた。
所詮幼馴染みなんて恋愛対象じゃないのが普通だ。沙耶の方が特殊なのだ。これといってパッとしたところのない自分と、活発で明るい性格で容姿もイケてる直との格差がひしひしと感じられる。そんな負のループに巻き込まれていると、チャイムが鳴った。
「はーい。」
「俺ー。」
瞬ちゃんだ。
「はーい、今開けるねー。」
いつもどおり瞬ちゃんを部屋に案内した。
「どうした、何かあった?」
瞬ちゃんはものすごく勘が鋭いのだろうか?沙耶に悩み事があると、すぐにバレてしまう。
「う、うん。ちょっとね。」
「何でも話せよー。じゃないと勉強にも集中できないだろう。」
そう言われるとそのとおりなのだが、何しろ直は瞬ちゃんの実の弟なのだ。やっぱり余り詳しい話はしたくないのがホンネだ。だからと言って、どうしたらいいのかが分からないというのも本音で…。
「う~ん。今日ね久しぶりに直に会ったんだ。そしたら…。」
「そしたら?」
「その、何かその、か、カッコよくなってて…、おまけにバスケもうまくいってるみたいで、自信にあふれてるっていうか…。もう、私からしたら輝いて見えて…。それに比べて自分って何にもないなーって。」
「それで落ち込んでるの?」
沙耶はコクンとうなずく。
「そんなことだったら、まったく気にすることない。俺のレッスンが沙耶を確実にいい女にするはずだからな。沙耶は何も心配することないぞ。直のやつ沙耶の変貌ぶりに腰を抜かすだろうな。」
瞬ちゃんのいうイイ女っていったいどんなものなのだろう…。直が腰を抜かすって。そんなことあるのかな?
そんな疑問を持ちながらも、自分ではどうすることもできない沙耶は、瞬ちゃんの言葉を信じるしかなかった。
「さあ、それじゃあ勉強はちゃちゃっと済ませて、レッスンがんばろうな。」
「う、うん。」
そんなんでいいのかという後ろめたさはあるものの、どちらかと言えば勉強よりも直のことの方が優先順位で言えば上なのだ。瞬ちゃんの言うことは、じつは沙耶の気持ちからそんなに離れたものではないのだった。そうして、勉強が終わるとまたベッドへと誘われる。
「沙耶。」
瞬ちゃんの甘いささやきを耳元で聞きながら、沙耶の体はベッドに横たえられた。瞬ちゃんが沙耶の耳朶を優しく愛撫しはじめる。
(そ、そんなところ舐めるの!)
何も知らない沙耶にとって、瞬ちゃんの行為はいちいち驚きの連続だ。しかし、そんなことを考えていられたのも最初だけだった。しだいに息使いが荒くなり、瞬ちゃんの舌が耳の中に侵入してくる。
「あっ!」
沙耶はくすぐったさに体を縮こまらせる。瞬ちゃんの舌は散々耳の中を愛撫し、耳の後ろから首筋へと移動していった。その間中、瞬ちゃんの大きな手は沙耶の腕やわき腹を優しく撫でていた。沙耶は瞬ちゃんに触れられている部分がどこもかしこも熱くなって、しまいには何だか火照ってくるような感覚に陥っていた。そして、自分の体の芯がうずくようなそんな感覚を味わうのだった。しかし、今の沙耶にはそれが何なのか分からなった。瞬ちゃんは沙耶からゆっくりと体を離した。
「沙耶、随分色っぽくなってきたよ。」
この間と同じように熱を帯びた瞳で見つめられる。
「そ、そうかな…。私、よく分かんないや…。」
沙耶は直を振り向かせるためのレッスンだとは頭で理解してはいるものの、こうして瞬ちゃんの愛撫を受けるということにはやはり迷いがある。こんなことをしていたなんてもし直に知られたら、彼女になるどころか友達でさえもいられなくなるかも知れないのだ。それでも沙耶はやるしかなかった。多くのライバルから直のハートを奪う方法はどう転んだって自分にはわからないのだから。
直の声だ。部活が終わり、着替えを済ませてくるみと二人校門を出ようとしたところだった。まだ部活の最中だったらしくユニフォームのままだ。直は駆けてくると、息を整えた。沙耶は久しぶりに間近で見る直にドキンと胸が高鳴る。
直は、毎日の激しい練習のおかげで前より随分引き締まって見え、背も少しだけ伸びた様に感じられた。
(直が、なんだかカッコよくなってる~。)
沙耶は心の中で地団太をふんだ。やっぱり自分の知らないところで、直はどんどんカッコよくなっている。
(マズイ、これはマズいよ~。いや、本当はうれしいんだけどね。複雑だよ~。)
「どうしたの直、そんなにあわてて。」
沙耶は内心の動揺を見せないよう答えた。
「今度の日曜日地区予選があるんだけど、よかったら応援に来てくれないかなっと思って。」
「行く行く!」
「あ、もしよかったら、お友達も一緒にどう?女子が応援に来てくれると、みんなの士気もメチャクチャ上がると思うんだよね。」
直は持ち前の社交性でグイグイせまってくる。
「え、くるみはバスケなんて興味ないよね?」
沙耶はまさかくるみをライバル視する時が来るなんて考えたこともなかったけれど、いま確実にくるみの存在をここから消したいと思っている。
「そんなことないよ。私も行きたいな。」
(え、マジ?くるみ、スポーツ全般そんなに興味無いよね。テニスの練習だって、私より適当だし。やっぱ直狙い?友達と同じ男の子を取り合うのって最悪のパターンだよね。)
「よっしゃー。じゃあ、今度の日曜、市民体育館で10時からだから。よろしく!」
直はそう言い残すと、また体育館へと戻っていった。
「くるみ、無理しなくていいんだよ。」
「ううん、無理してないよ。実は、私の従兄がプロバスケット選手なんだ。だから、バスケの試合は結構見に行ったことあるよ。」
(そ、そんな話初めて聞いたよ。まあ、そんな話題普段しないから当たり前だけど。)
「へ、へえ、そうなんだ。」
「だからね私、これでもバスケには詳しいんだよ。ただ、やったことはないんだけどね。」
沙耶は、軽やかに笑うくるみを素直な気持ちで受け入れることがでなかった。
家に着いて部屋に入ると、沙耶は現実を再確認した。直は予想していたとおりカッコよくなってる。そして、人懐っこくて人気者の素質がある。瞬ちゃんの言った通り、直の彼女に幼馴染みの自分がなるのはかなりハードルが高く感じられた。
所詮幼馴染みなんて恋愛対象じゃないのが普通だ。沙耶の方が特殊なのだ。これといってパッとしたところのない自分と、活発で明るい性格で容姿もイケてる直との格差がひしひしと感じられる。そんな負のループに巻き込まれていると、チャイムが鳴った。
「はーい。」
「俺ー。」
瞬ちゃんだ。
「はーい、今開けるねー。」
いつもどおり瞬ちゃんを部屋に案内した。
「どうした、何かあった?」
瞬ちゃんはものすごく勘が鋭いのだろうか?沙耶に悩み事があると、すぐにバレてしまう。
「う、うん。ちょっとね。」
「何でも話せよー。じゃないと勉強にも集中できないだろう。」
そう言われるとそのとおりなのだが、何しろ直は瞬ちゃんの実の弟なのだ。やっぱり余り詳しい話はしたくないのがホンネだ。だからと言って、どうしたらいいのかが分からないというのも本音で…。
「う~ん。今日ね久しぶりに直に会ったんだ。そしたら…。」
「そしたら?」
「その、何かその、か、カッコよくなってて…、おまけにバスケもうまくいってるみたいで、自信にあふれてるっていうか…。もう、私からしたら輝いて見えて…。それに比べて自分って何にもないなーって。」
「それで落ち込んでるの?」
沙耶はコクンとうなずく。
「そんなことだったら、まったく気にすることない。俺のレッスンが沙耶を確実にいい女にするはずだからな。沙耶は何も心配することないぞ。直のやつ沙耶の変貌ぶりに腰を抜かすだろうな。」
瞬ちゃんのいうイイ女っていったいどんなものなのだろう…。直が腰を抜かすって。そんなことあるのかな?
そんな疑問を持ちながらも、自分ではどうすることもできない沙耶は、瞬ちゃんの言葉を信じるしかなかった。
「さあ、それじゃあ勉強はちゃちゃっと済ませて、レッスンがんばろうな。」
「う、うん。」
そんなんでいいのかという後ろめたさはあるものの、どちらかと言えば勉強よりも直のことの方が優先順位で言えば上なのだ。瞬ちゃんの言うことは、じつは沙耶の気持ちからそんなに離れたものではないのだった。そうして、勉強が終わるとまたベッドへと誘われる。
「沙耶。」
瞬ちゃんの甘いささやきを耳元で聞きながら、沙耶の体はベッドに横たえられた。瞬ちゃんが沙耶の耳朶を優しく愛撫しはじめる。
(そ、そんなところ舐めるの!)
何も知らない沙耶にとって、瞬ちゃんの行為はいちいち驚きの連続だ。しかし、そんなことを考えていられたのも最初だけだった。しだいに息使いが荒くなり、瞬ちゃんの舌が耳の中に侵入してくる。
「あっ!」
沙耶はくすぐったさに体を縮こまらせる。瞬ちゃんの舌は散々耳の中を愛撫し、耳の後ろから首筋へと移動していった。その間中、瞬ちゃんの大きな手は沙耶の腕やわき腹を優しく撫でていた。沙耶は瞬ちゃんに触れられている部分がどこもかしこも熱くなって、しまいには何だか火照ってくるような感覚に陥っていた。そして、自分の体の芯がうずくようなそんな感覚を味わうのだった。しかし、今の沙耶にはそれが何なのか分からなった。瞬ちゃんは沙耶からゆっくりと体を離した。
「沙耶、随分色っぽくなってきたよ。」
この間と同じように熱を帯びた瞳で見つめられる。
「そ、そうかな…。私、よく分かんないや…。」
沙耶は直を振り向かせるためのレッスンだとは頭で理解してはいるものの、こうして瞬ちゃんの愛撫を受けるということにはやはり迷いがある。こんなことをしていたなんてもし直に知られたら、彼女になるどころか友達でさえもいられなくなるかも知れないのだ。それでも沙耶はやるしかなかった。多くのライバルから直のハートを奪う方法はどう転んだって自分にはわからないのだから。
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