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ケダモノのように愛して.04

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 桔平の身体に煙草の匂いが残っている。



「お前、俺とセックスしたいのか」



 桔平は咲那の方を見ないで言った。

 しかもその内容はあまりに唐突で…。



 え、嘘でしょ…、桔平が私と…、何で?

 咲那の体は一瞬で熱くなり、変な汗が噴き出してくる。



「そうかも…」

 とっさにそんな言葉が口から飛び出していた。



 咲那は本当に自分で自分の気持ちが分からなかった。

 ただ、桔平にそう言われて初めてそうなんだろうと思った。



 自分も他の女性と同じように抱かれたい。

 そんな淫らな欲情が咲那の中にずっと渦巻いていた。

 だけど叶えられない思いに気付いたら、もっと苦しくなるだけで、きっと自分の中の奥深くに閉じ込めていた。

 だけど、そんな扉を桔平の一言が開けてしまった。

 そしてたった今、イライラの原因はそれだと分かったのだった。



「バレたら兄貴に殺されるな」

 そう言っている桔平の表情はいつもと変わらないように見える。

 いろんなところで道を踏み外している桔平にとっては大したことではないのかもしれないと咲那は心のどこかで思っていた。

 だからこそ来たのかもしれない。



「バレないよ。お父さん全然家に帰ってこないんだから」

 そんなことがセックスをしていい理由になんてなるはずはないけれど、咲那はこの流れを止めたくなかった。



「こっち来い」
 
 桔平は寝室に咲那を連れて行った。



 さっきまで夕方会った佳乃という女性とセックスをしていたのだろう。

 シーツはぐしゃぐしゃで、女性の長い髪がところどころに落ちていた。

 そんな場所で自分を抱こうとする桔平の無神経さに腹が立ってもおかしくないのに、今はそれよりも自分がこれから桔平に抱かれるというこで頭がいっぱいだった。

 桔平の匂いで満たされたその場所はそれだけで性的な魅力で溢れていた。



「まさかお前が俺とセックスしたいと思ってるなんてな。お前も大人になったんだな」



 いやいや…、大人になったからって普通は自分のおじさんとセックスはしませんよ。



 桔平の思考はもうその辺りからしてズレている。

 だけどそういう風に単純に興味本位だと思ってもらった方が都合がいい。

 自分が桔平のことが好きで、ずっと桔平の体を求めていたなんて知られたら死にたくなる。



「そうだよ、いつまでも子ども扱いしないで」

 咲那は普通にしゃべったら声が震えてしまいそうで、わざとぶっきらぼうに振る舞った。



「初めてか?」

「う、うん…」

「じゃ、優しくしないとな」



 優しくとか言わないで欲しい…。

 きっと自分の理性なんてすぐにグズグズになってしまうだろう。

 桔平とセックスをしたい気持ちと、それがバレたくない気持ちが咲那の中で拮抗する。



 桔平は慣れた手つきで咲那の服を脱がしていった。
 
 いつもモデルをしているのだから、裸を見られるのなんて慣れているはずだった。

 でもこういう場所で、桔平本人に服を脱がされるとそれがひどく恥ずかしい事に感じられる。
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