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御曹司のやんごとなき恋愛事情.98

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 そっと俊介の方に手を伸ばしてみた。

 しかし、寸でのところで触れるのをやめた。
 
 もし俊介にその気がなくて、自分だけが欲しがっているように思われたら、死んでしまいたくなる。

 だが、実際に優子は俊介を求めている時点で盛っているのだ。

 そんな恥しい自分を認めるのが嫌なだけで。



 ニューヨークに発つ前に富山で会った時も、俊介は、何もしないで帰って行った。

 もしかして、今の俊介は肉体的な欲求より精神的なサポートを必要としてるのかもしれない。

 そうだとしたら、自分はとんだ勘違いをしていた。
 
 栗本の曖昧な言い方も良くないとは思うが、俊介が自分を求めていること=セックスと決めつけていたのは自分なのだ。

 優子は急に恥ずかしくなり、布団を掛け直すと、ギュッと目を閉じた。



「優子、優子・・・」

「坊ちゃん・・・、おはようございます」

「おはよう」

 俊介は体を起こすと優子におはようのキスをした。

 寝ぐせの髪に、パジャマの胸が少しはだけた俊介は、嫌になるほど色っぽい。

 ああ、もうこのままめちゃくちゃに抱いて欲しい・・・。

 起き抜けのぼんやりした頭で、何てことを考えているのだと、自分が嫌になるほど、優子は俊介を求めていた。



「何だか早いね・・・、今日はもう帰らないといけないのか・・・」

「そ、そうですね・・・」

 そんなことをわざわざ口にしないで欲しい。

 しかも、今日は月曜で、優子は普通に出勤する予定なのだ。



「お見送りに行けなくてすみません。今日から仕事なので・・・」

「気にしなくていいよ」

 坊ちゃんは気にならないんですね・・・。

 自分など必要なくなるくらいに俊介が成長することを望んでいたはずなのに、いざそうなってみれば、それを悲しんでいる自分がいた。



 自分は坊ちゃんに甘えていたのだ。

 優子、優子・・・、といつも自分を求めてくれるのが当たり前になっていた。

 そして、それがいつまでも続くものだと勝手に決めつけていた。



「坊ちゃん!」

 優子はベッドから体を起こすと俊介の背中に抱きついた。

「どうしたの?震えてる・・・」

「・・・坊ちゃん、帰ってしまう前に・・・、一度でいいですから・・・」

 思い切って切り出したものの、いざとなると肝心な言葉が出て来ない。

 それでも、もう本当に限界だ・・・。

 先のことなど考えられない・・・。

「だ、抱いてください・・・」

 優子は自分からこんなことを言うのは本当に初めてで、俊介の言う通り声も震えっぱなしだ。
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