58 / 106
御曹司のやんごとなき恋愛事情.58
しおりを挟む
俊介が何と言おうと、もう席は変更できない。
来たときとは逆に、帰りは優子の思い通りに進んでいく。
優子・・・。
俺は、一分一秒でもお前と一緒にいたいだけなんだ。
それをお前はどうして拒む?
こんなこと仕事に何の影響があるって言うんだ。
不満が次から次へと湧いてきたが、さすがにゆうべほとんど眠れなかったため、睡魔が襲ってきた。
俊介は眉間にしわを寄せたまま、いつの間にか眠りに落ちていた。
日本に戻り、俊介は一週間ほど本社で打ち合わせをし、その後は世界各地の支社を回る予定だ。
その一週間も視察の準備に追われてあっという間に過ぎて行った。
ちなみに視察は俊介には好都合なことに優子も同行する。
そして視察の打ち合わせにも優子は同席していた。
しかし、本社で見せるその顔は、秘書として支部の事務所にいたときのそれとは全く別人のようだ。
とてもつけ入る隙など無い程にビジネスマンの顔、いやもやはビジネスの鬼と呼んでもいいかもしれない。
それはやはり女性という立場上、男性と同じ土俵で戦うためには仕方ないことなのかもしれない。
だが、俊介から見れば、それは痛々しいほどに自分にストレスを与えているとしか思えなかった。
優子の方がそんな調子のため、結局一週間の間、顔を突き合わせてはいたものの、本当にビジネスの話しかしていない。
何だこれ・・・。
本社で一緒に働くことになったら、ちょっとした物陰でキスとか、エレベーターの中や使ってない会議室でイチャイチャとか、そういうことが出来ると勝手に想像していた。
全然違うじゃないか!!
なんだこの鉄壁の様な守りは。
目と鼻の先に優子がいるというのに・・・。
しかもほとんど一日中。
それなのにキスひとつ出来ないなんて。
拷問だ・・・。
「副社長、今の説明、分かりにくいところがありましたでしょうか」
俊介が難しい顔をしているため、大画面のモニターに映し出した事業所の情報を説明していた社員が恐る恐る尋ねてくる。
「いや、だいじょうぶだ。進めてくれ」
「は、はい・・・」
世界中に三十五カ所ある事業所を全て回るわけではなく、その中でも今最も力を入れている十カ所ほどに絞ることになる。
それでもすべてを回るには数カ月を要するだろう。
副社長として世界を見て歩くことも、興味がないわけではない。
元々人と話すことは好きだし、その国ごとに、これから事業をどんな風に展開していけばいいのかというのは、ビジネスの醍醐味だ。
それはそれで普通に楽しみなことだ。
しかし俊介にとっては、その間また優子と一緒にいられるのが何より楽しみだった。
「それで、当初は副社長と秘書の栗本さん、そして佐竹営業部長と営業部の須藤さんの四名が一緒に各事業所を訪問する予定でしたが、やはりそれでは時間がかかりすぎると社長から指摘されましたので、今回は、副社長と栗本さんのお二人と佐竹営業部長と須藤さんの二チームに分かれてそれぞれ五か国ずつ訪問してもらうことに変更になりました」
「なんだって~!!聞いてないぞ~」
俊介は感情に任せて怒りを吐き出した。
「し、しかし・・・社長命令ですので・・・」
「親父は何をそんなに急いでるんだよ」
説明のために駆り出された一社員がそんな理由を知る訳もなく、俊介の怒りに怯えるばかりだ。
来たときとは逆に、帰りは優子の思い通りに進んでいく。
優子・・・。
俺は、一分一秒でもお前と一緒にいたいだけなんだ。
それをお前はどうして拒む?
こんなこと仕事に何の影響があるって言うんだ。
不満が次から次へと湧いてきたが、さすがにゆうべほとんど眠れなかったため、睡魔が襲ってきた。
俊介は眉間にしわを寄せたまま、いつの間にか眠りに落ちていた。
日本に戻り、俊介は一週間ほど本社で打ち合わせをし、その後は世界各地の支社を回る予定だ。
その一週間も視察の準備に追われてあっという間に過ぎて行った。
ちなみに視察は俊介には好都合なことに優子も同行する。
そして視察の打ち合わせにも優子は同席していた。
しかし、本社で見せるその顔は、秘書として支部の事務所にいたときのそれとは全く別人のようだ。
とてもつけ入る隙など無い程にビジネスマンの顔、いやもやはビジネスの鬼と呼んでもいいかもしれない。
それはやはり女性という立場上、男性と同じ土俵で戦うためには仕方ないことなのかもしれない。
だが、俊介から見れば、それは痛々しいほどに自分にストレスを与えているとしか思えなかった。
優子の方がそんな調子のため、結局一週間の間、顔を突き合わせてはいたものの、本当にビジネスの話しかしていない。
何だこれ・・・。
本社で一緒に働くことになったら、ちょっとした物陰でキスとか、エレベーターの中や使ってない会議室でイチャイチャとか、そういうことが出来ると勝手に想像していた。
全然違うじゃないか!!
なんだこの鉄壁の様な守りは。
目と鼻の先に優子がいるというのに・・・。
しかもほとんど一日中。
それなのにキスひとつ出来ないなんて。
拷問だ・・・。
「副社長、今の説明、分かりにくいところがありましたでしょうか」
俊介が難しい顔をしているため、大画面のモニターに映し出した事業所の情報を説明していた社員が恐る恐る尋ねてくる。
「いや、だいじょうぶだ。進めてくれ」
「は、はい・・・」
世界中に三十五カ所ある事業所を全て回るわけではなく、その中でも今最も力を入れている十カ所ほどに絞ることになる。
それでもすべてを回るには数カ月を要するだろう。
副社長として世界を見て歩くことも、興味がないわけではない。
元々人と話すことは好きだし、その国ごとに、これから事業をどんな風に展開していけばいいのかというのは、ビジネスの醍醐味だ。
それはそれで普通に楽しみなことだ。
しかし俊介にとっては、その間また優子と一緒にいられるのが何より楽しみだった。
「それで、当初は副社長と秘書の栗本さん、そして佐竹営業部長と営業部の須藤さんの四名が一緒に各事業所を訪問する予定でしたが、やはりそれでは時間がかかりすぎると社長から指摘されましたので、今回は、副社長と栗本さんのお二人と佐竹営業部長と須藤さんの二チームに分かれてそれぞれ五か国ずつ訪問してもらうことに変更になりました」
「なんだって~!!聞いてないぞ~」
俊介は感情に任せて怒りを吐き出した。
「し、しかし・・・社長命令ですので・・・」
「親父は何をそんなに急いでるんだよ」
説明のために駆り出された一社員がそんな理由を知る訳もなく、俊介の怒りに怯えるばかりだ。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
世界くんの想うツボ〜年下御曹司との甘い恋の攻防戦〜
遊野煌
恋愛
衛生陶器を扱うTONTON株式会社で見積課課長として勤務している今年35歳の源梅子(みなもとうめこ)は、五年前のトラウマから恋愛に臆病になっていた。そんなある日、梅子は新入社員として見積課に配属されたTONTON株式会社の御曹司、御堂世界(みどうせかい)と出会い、ひょんなことから三ヶ月間の契約交際をすることに。
キラキラネームにキラキラとした見た目で更に会社の御曹司である世界は、自由奔放な性格と振る舞いで完璧主義の梅子のペースを乱していく。
──あ、それツボっすね。
甘くて、ちょっぴり意地悪な年下男子に振り回されて噛みつかれて恋に落ちちゃう物語。
恋に臆病なバリキャリvsキラキラ年下御曹司
恋の軍配はどちらに?
※画像はフリー素材です。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
転生悪役王女は平民希望です!
くしゃみ。
恋愛
――あ。わたし王女じゃない。
そう気付いたのは三歳の時初めて鏡で自分の顔を見た時だった。
少女漫画の世界。
そしてわたしは取り違いで王女になってしまい、いつか本当の王女が城に帰ってきたときに最終的に処刑されてしまうことを知っているので平民に戻ろうと決意した。…したのに何故かいろんな人が止めてくるんですけど?
平民になりたいので邪魔しないでください!
2018.11.10 ホットランキングで1位でした。ありがとうございます。
もう君を絶対に離さない
星野しずく
恋愛
お嬢様育ちで気位の高い笠原瑠璃子は、大学の映画同好会で地味で存在感のない野崎耕太と知り合う。外見とは裏腹に、映画監督を夢見る野崎のカッコよさに惹かれていく瑠璃子だが、そのプライドの高さが邪魔をして素直になれない。しかし、そんな二人の運命を決定づけるアクシデントが起こり・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる