38 / 106
御曹司のやんごとなき恋愛事情.38
しおりを挟む
優子は俊介と違って、つまみ食いなどしない。
だから、この十年というもの、身体の関係があったのは俊介とだけだ。
だが、それも覚悟の上で同居と結婚を決めたのだ。
感情などなくてもセックスをすることくらいできる。
「お風呂、先にどうぞ」
優子は見たいドラマが始まったので、深く考えることなくそう言った。
「あ、ああ・・・」
伊波の顔が幾分こわばっているように見えるのは気のせいだろうか。
彼も一度は結婚と離婚を経験している。
そして、その後もずっとフリーだったわけではないだろう。
だから、こんなことで緊張するとは思えないのだが・・・。
しかし、そんな優子の予想とは裏腹に、伊波はめちゃくちゃ緊張していた。
何しろ待ちに待った優子とのセックスだ。
浴室に入ったものの、これから優子と裸で抱き合うのかと思ったら、もう自分のアレが勃ち上がってしまい伊波は焦った。
元同僚、そして元彼女、そして十年越しの片思いの相手でもある。
この期に及んで、いったいどんな顔をして優子のことを抱けばいいのか分からなくなる。
若いころは何も知らなくて、がむしゃらだった。
だけど、下手に年をとってしまうと、おかしなプライドが邪魔をする。
優子は自分がすっかりセックスにも手馴れた大人の男になっていると期待しているだろうか?
だが、そういうことは他人と比較することができないから、自分がどのくらいのレベルなのかも分からない。
優子ぐらいの女性であれば、付き合ってきた男も一流で、そっちの経験も豊富に違いない。
そういう男たちと比較されるのかと思うと、今勃ち上がったものが、急速に萎えていく。
この日を待ち望んでいたはずなのに、優子のことを好きすぎるせいで、自分にもの凄いプレッシャーをかけてしまうのだ。
何でこんなことで悩まなきゃいけないんだ・・・。
俺は童貞か・・・。
しかし男性の方がセックスの美味い下手を気にするのは当然で、下手だと言われたりしたら、しばらくの間、役に立たなくなる場合もあるくらいだ。
そのくらいデリケートな問題なのだ。
しかし、いつまでも入っているわけにもいかず、伊波は普段より入念に身体を洗い、風呂を出た。
「ずいぶん長風呂なのね」
「そうかな?優子はもっと早いのか」
「うん、私は烏の行水」
「へえ、昔からそうだっけ?」
「ううん、多分今の仕事に就いてからかな。だって、とにかく忙しいんだもん」
つい最近過労で倒れたばかりだから、説得力がある。
「まだ、入らないの?」
「うん、このドラマ終わってから入る」
優子は至って普段と変わらない様子で生活を送っている。
これからのことを想像して、落ち着かないのは自分だけのようだ。
パジャマに着替え、読みかけの本を手にしても、一向に頭に入って来ない。
同じ行を何度も読み返してしまい、全くページが進まない。
だから、この十年というもの、身体の関係があったのは俊介とだけだ。
だが、それも覚悟の上で同居と結婚を決めたのだ。
感情などなくてもセックスをすることくらいできる。
「お風呂、先にどうぞ」
優子は見たいドラマが始まったので、深く考えることなくそう言った。
「あ、ああ・・・」
伊波の顔が幾分こわばっているように見えるのは気のせいだろうか。
彼も一度は結婚と離婚を経験している。
そして、その後もずっとフリーだったわけではないだろう。
だから、こんなことで緊張するとは思えないのだが・・・。
しかし、そんな優子の予想とは裏腹に、伊波はめちゃくちゃ緊張していた。
何しろ待ちに待った優子とのセックスだ。
浴室に入ったものの、これから優子と裸で抱き合うのかと思ったら、もう自分のアレが勃ち上がってしまい伊波は焦った。
元同僚、そして元彼女、そして十年越しの片思いの相手でもある。
この期に及んで、いったいどんな顔をして優子のことを抱けばいいのか分からなくなる。
若いころは何も知らなくて、がむしゃらだった。
だけど、下手に年をとってしまうと、おかしなプライドが邪魔をする。
優子は自分がすっかりセックスにも手馴れた大人の男になっていると期待しているだろうか?
だが、そういうことは他人と比較することができないから、自分がどのくらいのレベルなのかも分からない。
優子ぐらいの女性であれば、付き合ってきた男も一流で、そっちの経験も豊富に違いない。
そういう男たちと比較されるのかと思うと、今勃ち上がったものが、急速に萎えていく。
この日を待ち望んでいたはずなのに、優子のことを好きすぎるせいで、自分にもの凄いプレッシャーをかけてしまうのだ。
何でこんなことで悩まなきゃいけないんだ・・・。
俺は童貞か・・・。
しかし男性の方がセックスの美味い下手を気にするのは当然で、下手だと言われたりしたら、しばらくの間、役に立たなくなる場合もあるくらいだ。
そのくらいデリケートな問題なのだ。
しかし、いつまでも入っているわけにもいかず、伊波は普段より入念に身体を洗い、風呂を出た。
「ずいぶん長風呂なのね」
「そうかな?優子はもっと早いのか」
「うん、私は烏の行水」
「へえ、昔からそうだっけ?」
「ううん、多分今の仕事に就いてからかな。だって、とにかく忙しいんだもん」
つい最近過労で倒れたばかりだから、説得力がある。
「まだ、入らないの?」
「うん、このドラマ終わってから入る」
優子は至って普段と変わらない様子で生活を送っている。
これからのことを想像して、落ち着かないのは自分だけのようだ。
パジャマに着替え、読みかけの本を手にしても、一向に頭に入って来ない。
同じ行を何度も読み返してしまい、全くページが進まない。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる