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御曹司のやんごとなき恋愛事情.31
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木曜は、まだ昨日の騒ぎが完全に収まってはいないものの、ほぼ通常業務に差しさわりない程度まで落ち着いた。
後は、粘り強く誠意を見せて信頼を回復していくしかないだろう。
そんな訳で、午前中は社内で会議、そして午後からは今急成長している企業の経営者の講演会とその後の交流会に参加した。
交流会で名刺交換をすると、やはりフェイクニュースのことが話題になった。
しかし、大企業ではそういった風評被害というものは、過去に少なからず経験がある。
そのため、むしろフェイクニュース対策について意見を交換するというような前向きな話になって、俊介も優子も胸を撫で下ろした。
「しかし、こう毎日違う人間に会ってると、誰が誰だか分からなくなるな~」
帰りのタクシーで俊介が本音をポロリと漏らす。
「もう少し、お相手に興味を持ってお会いになってください。そうすれば嫌でも印象に残ります」
「そうか」
「わたくしが教育係をしている時に、散々申し上げたはずですが」
「そんな昔のことは忘れたな~」
「では、私が教えたことは全て無駄だったんですね」
「おいおい、そんなに怒るなよ。冗談だよ」
二人はその後食事を済ますと、もういい加減疲れたという優子を説き伏せて、俊介のマンションに向かった。
そして今日は金曜日だ。
ようやく社長代理も最終日を迎えた。
行成の体調も順調に回復し、来週からは仕事に復帰できるとのことだった。
午前中は大手取引先との商談、午後は全支社の部長クラス以上で行うネット会議、そのあとは取引先銀行の定期的な訪問がある。
しかし、そんなことより、俊介の頭の中は優子と一緒にいられなくなることの方が問題だった。
それこそ、今までは一週間のうち土日だけが、優子と一緒にいられる時間だった。
それが、一気に一日中になり、しかも毎晩愛し合うこともできた。
そんな甘い汁を吸ってしまったせいで、元の生活に戻ることが考えらえない程苦痛で仕方がないのだ。
しかも、優子が勝手に秘書を辞め、栗本に変えてしまったせいで、優子には全く会えなくなってしまった。
一緒にいればいるほど、優子は仕事が出来るということが分かったし、人間的にも自分なんかより余程優れているということがよく分かった。
普通の男だったら、そんな優子の才能に嫉妬しそうなものだが、優子との出会いが世話係であったせいか、優子が優れているのを目の当たりにすればするほど、俊介はますます優子に心頭してしまうのだった。
これは本当に俊介を悩ませる問題だった。
優子は一度言い出したらきかないところがある。
秘書のことといい、伊波のことといい、俊介にしてみたら不満だらけなのだが、どうにもできないのが現実だ。
「あ~、俺は優子のことがこんなに好きで、優子だって、夜はあんなに可愛く俺に抱かれるくせに・・・、一体何が気に入らないんだ・・・」
だけど、手に入らないもの程欲しくなるのが人情だ。
俊介はまだ優子のことを諦めたわけではない。
きっと何か方法があるはずだ。
後は、粘り強く誠意を見せて信頼を回復していくしかないだろう。
そんな訳で、午前中は社内で会議、そして午後からは今急成長している企業の経営者の講演会とその後の交流会に参加した。
交流会で名刺交換をすると、やはりフェイクニュースのことが話題になった。
しかし、大企業ではそういった風評被害というものは、過去に少なからず経験がある。
そのため、むしろフェイクニュース対策について意見を交換するというような前向きな話になって、俊介も優子も胸を撫で下ろした。
「しかし、こう毎日違う人間に会ってると、誰が誰だか分からなくなるな~」
帰りのタクシーで俊介が本音をポロリと漏らす。
「もう少し、お相手に興味を持ってお会いになってください。そうすれば嫌でも印象に残ります」
「そうか」
「わたくしが教育係をしている時に、散々申し上げたはずですが」
「そんな昔のことは忘れたな~」
「では、私が教えたことは全て無駄だったんですね」
「おいおい、そんなに怒るなよ。冗談だよ」
二人はその後食事を済ますと、もういい加減疲れたという優子を説き伏せて、俊介のマンションに向かった。
そして今日は金曜日だ。
ようやく社長代理も最終日を迎えた。
行成の体調も順調に回復し、来週からは仕事に復帰できるとのことだった。
午前中は大手取引先との商談、午後は全支社の部長クラス以上で行うネット会議、そのあとは取引先銀行の定期的な訪問がある。
しかし、そんなことより、俊介の頭の中は優子と一緒にいられなくなることの方が問題だった。
それこそ、今までは一週間のうち土日だけが、優子と一緒にいられる時間だった。
それが、一気に一日中になり、しかも毎晩愛し合うこともできた。
そんな甘い汁を吸ってしまったせいで、元の生活に戻ることが考えらえない程苦痛で仕方がないのだ。
しかも、優子が勝手に秘書を辞め、栗本に変えてしまったせいで、優子には全く会えなくなってしまった。
一緒にいればいるほど、優子は仕事が出来るということが分かったし、人間的にも自分なんかより余程優れているということがよく分かった。
普通の男だったら、そんな優子の才能に嫉妬しそうなものだが、優子との出会いが世話係であったせいか、優子が優れているのを目の当たりにすればするほど、俊介はますます優子に心頭してしまうのだった。
これは本当に俊介を悩ませる問題だった。
優子は一度言い出したらきかないところがある。
秘書のことといい、伊波のことといい、俊介にしてみたら不満だらけなのだが、どうにもできないのが現実だ。
「あ~、俺は優子のことがこんなに好きで、優子だって、夜はあんなに可愛く俺に抱かれるくせに・・・、一体何が気に入らないんだ・・・」
だけど、手に入らないもの程欲しくなるのが人情だ。
俊介はまだ優子のことを諦めたわけではない。
きっと何か方法があるはずだ。
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